2021年11月に約8年5か月に及んだ「HPVワクチンの接種の積極的な勧奨の一時差し控え」が終了され、2022年11月には2023年4月より9価ワクチンが定期接種に導入される方向性が決定した。安全性評価については、重篤な副反応のリスクがワクチン接種で増加することは認められていない。日本においても2つのスタディによって、HPVワクチン接種と多様な症状の関連は否定された。有効性評価については、国外から浸潤がん予防効果が報告されている。日本では前がん病変予防効果までが報告されており、浸潤がん予防効果については今後の報告が待たれる。
長期に渡る積極的勧奨の差し控えやメディア報道はHPVワクチン接種率に多大な影響を与え、2000年度以降生まれの接種率は激減した。ワクチン停止世代となった2000年度生まれでHPV-16・18型感染率、細胞診異常率が再上昇していることが明らかになっており、接種機会を失った女性に対するキャッチアップ接種勧奨および子宮頸がん検診受診勧奨は非常に重要である。HPVワクチンの安全性・有効性を接種対象者とその保護者に伝え、また、不安や疑問に応えていく必要がある。医療従事者からの適切な情報提供が果たす役割は大きく、行政、教育機関、メディアなどの様々な組織と一体となって実行性のある子宮頸がん対策の実現に向けて取り組んでいかなければならない。
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