AYAがんの医療と支援
Online ISSN : 2435-9246
3 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
巻頭言
原著
  • 小堀 宅郎, 田中 千都, 伊藤 優衣, 浦嶋 庸子, 伊藤 卓也, 高垣 伸匡, 小畑 友紀雄
    2023 年 3 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/04
    ジャーナル フリー

     Programmed death-1(PD-1)及びそのリガンドPD-L1は、細胞傷害性T細胞やがん細胞表面に発現する免疫チェックポイント分子である。これらを標的とする免疫チェックポイント阻害療法は、多岐に渡るがん種への適応拡大が加速している。しかしながら、子宮類内膜がんを含む子宮体がん患者における奏効率は高くないため、PD-1/PD-L1経路を阻害する新たな治療標的の探索が切望されている。細胞内の足場タンパク質ezrin/radixin/moesin(ERM)ファミリーは、がんに関連するいくつかの細胞表面分子と細胞内のアクチン骨格とを連結し、細胞膜での安定発現に寄与している。本研究では、日本人女性由来の子宮類内膜がん細胞株HEC-265細胞を用い、PD-L1の細胞表面局在調節におけるERMの役割を解析した。免疫蛍光染色の結果、PD-L1とERMは細胞膜に分布し、高度に共局在した。興味深いことに、RNA干渉法によりezrin/radixinの発現を抑制したところ、細胞表面におけるPD-L1発現量及び局在性が低下した一方、moesinの発現抑制は細胞表面のPD-L1発現量及び局在性を変化させなかった。以上の結果、ERMの中でもezrin/radixinが、PD-L1のHEC-265細胞表面局在に関与する可能性が示された。

総説
  • 八木 麻未, 上田 豊
    2023 年 3 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/04
    ジャーナル フリー

     2021年11月に約8年5か月に及んだ「HPVワクチンの接種の積極的な勧奨の一時差し控え」が終了され、2022年11月には2023年4月より9価ワクチンが定期接種に導入される方向性が決定した。安全性評価については、重篤な副反応のリスクがワクチン接種で増加することは認められていない。日本においても2つのスタディによって、HPVワクチン接種と多様な症状の関連は否定された。有効性評価については、国外から浸潤がん予防効果が報告されている。日本では前がん病変予防効果までが報告されており、浸潤がん予防効果については今後の報告が待たれる。

     長期に渡る積極的勧奨の差し控えやメディア報道はHPVワクチン接種率に多大な影響を与え、2000年度以降生まれの接種率は激減した。ワクチン停止世代となった2000年度生まれでHPV-16・18型感染率、細胞診異常率が再上昇していることが明らかになっており、接種機会を失った女性に対するキャッチアップ接種勧奨および子宮頸がん検診受診勧奨は非常に重要である。HPVワクチンの安全性・有効性を接種対象者とその保護者に伝え、また、不安や疑問に応えていく必要がある。医療従事者からの適切な情報提供が果たす役割は大きく、行政、教育機関、メディアなどの様々な組織と一体となって実行性のある子宮頸がん対策の実現に向けて取り組んでいかなければならない。

  • 杉本 公平, 正木 希世, 竹川 悠起子, 新屋 芳里, 岩端 威之, 小泉 智恵, 岡田 弘
    2023 年 3 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/04
    ジャーナル フリー

     2020年度より不妊治療の保険適用が開始された。政府は同時に「がん治療に伴う不妊への助成」とともに「里親制度・特別養子縁組制度の普及」を進めていく方針を示している。日本の里親制度・特別養子縁組制度の普及は欧米先進国と比較して普及が遅れているとされている。両制度とも子供を家庭に迎えたいと望む親のための制度ではなく、要保護児童(様々な事情により実親の元での養育が困難な児童)が家庭養護の中で成育するための制度であることを認識しておく必要がある。両制度には親権や法的親子関係などの違いがあるが、実際には多様な家族像があることを理解する必要がある。AYAがんサバイバーが里親・養親になることについて、日本の児童相談所や民間のあっせん団体は決して否定的ではないが、個別的な判断が重要であると考えている。埼玉県里親会で行われたアンケート調査では、里親カップルの約6%がどちらかが、がんサバイバーであった。情報提供については早い時期に簡単に情報提供を行い、後から間接的に情報を手に入れることができるリーフレットなどを準備することが重要であると考えられた。AYAがんサバイバーに対しても同様の準備が必要であると考えられた。

活動紹介
  • 三好 祐也
    2023 年 3 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/04
    ジャーナル フリー

     認定NPO法人ポケットサポート(以下、当法人)は岡山市に拠点に置き、幼少期から慢性疾患である当事者、医療関係者、教育関係者や、スタッフ、ボランティアを中心に病気の子どもたちの学習・復学・自立を支援する2015年にNPO法人化した団体である。病気や治療のために生まれる学習や体験の空白のことを「ポケット」と呼んでおり、彼らを支援「サポート」するため、「学習・復学支援」「当事者や家族・きょうだいらが集う交流の場の提供」「各種相談・理解啓発」の3つの柱が重なり合う形で事業展開を行っている。支援拠点と市内2箇所の医療機関で展開する「ポケットスペース」では医療者や行政との協働により入院中から退院後までの子どもたちの学習・復学支援や交流支援、相談業務などを実施している。AYA世代への支援では岡山県教育庁特別支援教育課に設置されている「長期療養児教育サポート相談窓口」を通じて、医療機関や学校などと、県内初の長期入院高校生への遠隔授業を協働したり、高校3年生への卒業式のオンライン中継なども行っている。この活動報告では、当法人が地域の医療機関や行政、教育機関などと協働しながら小児がんを代表とする慢性疾病の子どもたちや若者への支援を行う事業や具体事例について報告する。

  • 服部 佳朗, 篠田 邦大, 野浦 綾乃, 仲田 明子, 湊口 碧, 横地 裕也
    2023 年 3 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/04
    ジャーナル フリー
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