AYAがんの医療と支援
Online ISSN : 2435-9246
4 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 林 みずほ, 青木 美和, 市原 香織, 荒尾 晴惠
    2023 年 4 巻 2 号 p. 29-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/21
    ジャーナル 認証あり

     【目的】本研究の目的は、がん治療により性腺機能が低下した女性小児がん経験者のホルモン補充療法(以下、HRT)に対するアドヒアランスの様相を明らかにすることである。【方法】16歳以上の小児がん経験者の女性6名(1名保護者が同席)を対象に、半構成的面接調査を行い、質的内容分析を用いて分析した。【結果】小児がん経験者のアドヒアランスの様相には、小児がんを基盤とした治療に対する受け身の姿勢から自己で治療への責任を引き受けていく移行の段階を示す《受け身に成らざるを得なかった小児がん体験》、《治療に対する受け身の姿勢から主体的な取り組みへの移行》、《病気と自分の体に関心をもってHRTを日常生活に取り入れている状況》の3つの局面が明らかとなった。なかでも、《治療に対する受け身の姿勢から主体的な取り組みへの移行》には、小児から成人への移行期特有の [母親からの主体の移行] 、 [病気や治療への関心の高まり] というアドヒアランス獲得のきっかけ、 [成長に伴う服薬環境の変化] といったアドヒアランスの阻害に繋がるきっかけがあることが示された。【結論】小児がん経験者のアドヒアランスの獲得に向けて、個々の発達に応じて親からの主体の移行を図り、HRTの意味づけを促す支援の必要性が示された。また、飲み忘れの予防のために、多職種による長期的な身体的・精神的フォローアップの重要性が示唆された。

  • 小堀 宅郎, 杉本 実希子, 伊藤 卓也, 堀田 紀久子
    2023 年 4 巻 2 号 p. 35-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/21
    ジャーナル 認証あり

     AYA世代や小児によくみられる神経膠芽腫は、原発性脳腫瘍の中でも特に高悪性度で予後不良である。Programmed death-ligand 1(PD-L1)等を標的とした免疫チェックポイント阻害薬は、様々な癌症例に対して優れた臨床効果を示す一方、神経膠芽腫に対する効果は限定的である。このことから、既存薬と作用機序の異なる新しい治療薬の開発が切望されている。Ezrin、Radixin及びMoesin(ERM)は、特定の細胞膜分子と細胞内のアクチン骨格とを繋ぎ、 “足場” としてそれらの細胞膜局在を支えている。本研究では、神経膠芽腫患者由来のKNS-42細胞及び臨床検体のデータベースに収録される遺伝子発現解析データを用い、PD-L1の細胞膜発現におけるERMの関与に加え、ERMの発現変動と患者生存率への影響を解析した。KNS-42細胞において、PD-L1とERMは細胞膜で高度に共局在し、分子間相互作用を形成した。興味深いことに、PD-L1のタンパク質発現はERM各々の発現抑制によりいずれの場合も検出限界未満まで消失した。一方、患者腫瘍組織において、Ezrin及びRadixinと異なり、MoesinとPD-L1の発現は正の相関関係を示し、これらを高発現する患者では無病生存期間が短縮した。以上より、神経膠芽腫においてMoesinはPD-L1と連動して発現上昇し、患者生存率を低下させる予後不良因子となる可能性が示された。

  • 寺内 恵美子, 堀部 敬三, 鈴木 礼子
    2023 年 4 巻 2 号 p. 46-54
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/21
    ジャーナル 認証あり

     目的 小児・AYA世代がん患者・経験者は治療中だけでなく、治療後も様々な課題に直面しているが、その現状は広く知られていない。本調査は、小児・AYA世代がん患者・経験者の抱える課題の認知度について、横断的調査を実施した。

     方法 2016~2022年度にかけて東京都食育フェア一般来場者を対象に、大学生と小児がん患者会が連携して、レモネードスタンドとアンケート調査(無記名自記式質問紙法/Web方式)を実施した。質問内容は①「AYA世代という言葉」、②「治療後の晩期合併症の可能性」、③「希少疾患であるために治療開発が遅れていること」、④「小児がんは約7~8割が治ると言われていること」の4項目とし、認知度を評価した。

     結果 認知度アンケート調査に参加同意した年齢・性別が明らかな計3,413名を対象に分析した。認知度は質問①10.8%、質問②6.6%、質問③7.1%、質問④15.0%であった。

     結論 ①~④の質問項目の認知度が15%以下で、小児・AYA世代がん患者・経験者が抱える課題について十分に理解されていない現状が明らかになった。長期にわたり、安心して継続的に支援が受けられるように、小児・AYA世代がん経験者・患者会、医療・教育関係者、企業、行政機関がともに協力し、医療、心理、教育、就労、福祉などの様々な領域での支援や政策を整え、今後も社会の理解を進めるために、この現状を周知する必要がある。

編集委員会企画 AYA支援チーム紹介
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