AYAがんの医療と支援
Online ISSN : 2435-9246
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原著
  • 小堀 宅郎, 伊藤 優衣, 浦嶋 庸子, 伊藤 卓也, 小畑 友紀雄
    2024 年 4 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/05
    ジャーナル 認証あり

     我が国における卵巣癌の罹患率及び死亡率は年々増加し、特に思春期・若年成人(AYA)世代から急増する。卵巣癌の組織型の中でも日本人の発症頻度が高い明細胞腺癌は、化学療法抵抗性で極めて予後不良である。卵巣明細胞腺癌に対する新たな治療法として、Programmed death-1(PD-1)/PD-ligand 1(PD-L1)経路を標的とした免疫チェックポイント阻害療法への期待が高まる一方、その奏効率は極めて低い。このことから、PD-1/PD-L1経路を阻害する新規治療標的の探索が切望されている。

     細胞内の足場タンパク質Ezrin/Radixin/Moesin(ERM)ファミリーは、癌関連細胞表面分子と細胞内のアクチン骨格とを連結し、細胞表面局在を調節する。本研究では、日本人女性由来の卵巣明細胞腺癌細胞株OVTOKO細胞を用い、PD-L1の細胞表面局在調節におけるERMの役割を解析した。PD-L1とERMは細胞膜で高度に共局在し、分子間相互作用を形成した。興味深いことに、Ezrin/Radixinと異なり、Moesinの発現抑制はPD-L1のmRNA発現量へ影響することなく、その細胞表面発現量を低下させた。以上の結果、ERMの中でもMoesinが、OVTOKO細胞表面PD-L1の局在調節に関与する可能性が示された。

事例報告
  • 釣餌 咲希, 坊本 佳優, 島岡 竜一, 竹中 基記, 古井 辰郎
    2024 年 4 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/05
    ジャーナル 認証あり

     思春期・若年成人(adolescent and young adult:以下AYA)世代は就職、結婚、出産、育児など多くのライフイベントを迎える世代であり、患者ごとに心理社会的な背景は様々である。そのためAYA世代のがん診療では個々のライフステージに応じた多彩なニーズに配慮することが重要となる。

     今回、24歳で卵巣がんに対して妊孕性温存手術を施行し、その後、妊娠、出産に至ったが、第2子出産後早期に再発が発覚した症例を経験した。本症例では経過の中で変動する患者の心理社会的状況に応じた多様なニーズや希望を把握し、がん治療に並行したサポートが必要であったため、その治療および支援の経過について報告する。

活動紹介
第5回AYA研学術集会招待講演報告
第5回AYA研学術集会優秀演題報告
  • 福島 俊, 岩田 慎太郎, 大木 麻実, 小林 英介, 小倉 浩一, 尾崎 修平, 米本 司, 根津 悠, 浅野 尚文, 中山 ロバート, ...
    2024 年 4 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/05
    ジャーナル 認証あり

     【目的】小児・AYA世代の悪性骨腫瘍サバイバーのスポーツ活動の実態を多施設共同研究で明らかにすることを目的とした。

     【方法】2000年から2020年までの間に原発性悪性骨腫瘍に対して当院を含む6つの医療機関で根治的手術が実施され、調査時に12歳から39歳であるサバイバーを対象とした。ウェブアンケートで治療前後のスポーツ実施状況を調査した。

     【結果】70名から有効な回答を得た。治療前にスポーツ活動があった48名の内、なんらかのスポーツを継続していたのは24名だった。治療前にスポーツ活動がなかった22名の内、6名は治療後にスポーツを開始していた。治療後にスポーツ活動を行っているのは計30名(43%)だった。1週間のスポーツの合計時間は治療前群で中央値7時間、治療後群で中央値3時間と減少傾向がみられたが、有意差はなかった。運動強度の指標であるメッツは治療前群で中央値7だったが、治療後は中央値5.75と有意に低下した(t検定、p=0.0044)。スポーツによる1週間の消費カロリーは治療前群で中央値2695kcalだったが、治療後群で中央値1140kcalへと有意に低下していた(t検定、p=0.0344)。

     【考察】小児・AYA世代の悪性骨腫瘍サバイバーの治療後のスポーツ頻度や運動強度は低下する傾向がみられた。医療者側からの情報提供が重要と考えられた。

編集委員会企画:AYA支援チーム活動紹介
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