小麦澱粉にモノアシルグリセロールを加えて加熱処理し,ESR分析によって,含有する脂肪酸の種類や加熱条件の影響を検討した。モノアシルグリセロールはモノリノレート(ML),モノオレエート(MO)とモノステアレート(MS)であり,加熱処理はオープンエア条件の下,150℃で0.5時間,200℃で0.5時間,200℃で1時間である。試料のESRスペクトルは
g=2.005の1本線信号で構成され,非常に強い異方性が確認された。含有する脂肪酸の違いによるESRスペクトルは,強度の強弱はあるが,同様なパターンを示した。1本線信号のESR信号強度は150℃で0.5時間加熱試料では未処理試料とほぼ同じであったが,200℃加熱試料ではESR信号強度が顕著に増大し,加熱時間に依存した増加を示した。マイクロ波強度を変えて計測するとESR信号強度は脂肪酸の種類により異なる飽和挙動を示した。以上のことから,小麦澱粉とモノアシルグリセロールの系において,脂肪酸の種類や加熱条件の,ラジカルの飽和挙動および生成量への影響をESR分析により明らかにすることができた。
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