還元水あめ(Hydrogenated Starch Syrup, HSS)は,水あめ(Starch Syrup, SS)を水素添加して生成する糖アルコールの一種であり,食品産業において広く使用される素材である.本稿において著者らは,各種HSSの接着特性とそのメカニズムを調べた.様々なDE(デキストロース当量)のSSとHSSの接着力を評価したところ,DE 26—30のHSSが最も接着力が高いことが示された.また,接着力は固形分濃度に応じて高かったが,DE 14—16のHSSは65%固形分濃度において最も接着力が高かった.接着表面の観察を行ったところ,接着力が高いHSSは凝集破壊を,接着力が低いものは界面破壊を起こしていた.これらのメカニズムを解析するためにガラス転移温度(Tg)を測定したところ,Tgが80°C以下でTgと接着力には正の相関があることが示された.また被着材に対する接触角を測定したところ,接着力が高い条件では布に対する接触角が一定の値(95°~100°)を取ることが判明した.以上の結果から,接触角が一定の値を取る条件下でHSSの接着力がTgに依存することが示された.
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