応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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最新号
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巻頭言
総説―受賞論文―
  • 金子 哲
    2025 年 15 巻 1 号 p. 2-11
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    ヘミセルロースは地球上に二番目に多く存在する再生可能なバイオマス資源であり,ペントースを多く含む複雑な分岐構造を有するヘテロ多糖である.ヘミセルロースの研究や利用には,構造を厳密に識別できる酵素を利用することがブレークスルーとなる.そのため,ヘミセルロースの分岐に対する基質特異性の解明は非常に重要である.そこで,本研究では,ヘミセルラーゼの構造と機能の相関について解析を行った.キシラナーゼが特定の構造を持つオリゴ糖を生成するメカニズムや,α-L-アラビノフラノシダーゼ,アラビノガラクタン-プロテイン(AGP)の糖鎖分解酵素の基質特異性について酵素の立体構造に基づいて解明した.AGP糖鎖分解酵素の研究においては,新規酵素を発見し,たった一つのアミノ酸が基質特異性を制御することを明らかにした.また,L-ラムノースに結合する新たな基質結合モジュール(CBM)を発見し,CBM67を新設した.

  • 松沢 智彦
    2025 年 15 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    糸状菌は様々な多糖類分解酵素を生産し,これらを協調的に作用させることによって植物などが生産する多種多様な多糖類を分解し,資化している.糸状菌は多糖類に適応した酵素とそれらの酵素を適切なタイミングで生産するための転写制御因子を獲得することで多糖類の多様性に適応してきたと推察される.本総説では,筆者がこれまでに研究してきた黄麹菌Aspergillus oryzaeのキシログルカン分解機構の一端およびセルロース系バイオマスの糸状菌の多糖類分解酵素による糖化反応を促進する酵素について紹介する.

  • 中村 彰彦
    2025 年 15 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    結晶性のセルロースやキチンは不溶性の固体であり,分解酵素はその表面に吸着する必要がある.そこで蛍光1分子計測により糖質分解酵素ファミリー6の糸状菌由来酵素とバクテリア由来酵素の吸着に寄与するドメインの比較を行った.また結晶分解可能な酵素は,結晶表面の分子鎖を加水分解しながら運動する.セラチア菌由来キチナーゼAは蛍光1分子計測による吸脱着速度定数に加え,散乱1分子計測による運動素過程の速度定数と高速原子間力顕微鏡による生成物の運動阻害定数の解析も行い,反応中全ての速度定数の決定を行った.トリコデルマ由来糖質分解酵素ファミリー7のプロセッシブセルラーゼでは,3種のオリゴ糖と天然型及び2種の変異体酵素の反応をグローバルフィッティング法で解析した.得られた基質阻害定数より,基質結合トンネルのどちら側から基質が入りやすいのか明らかにすることができた.

  • 舟根 和美, 加藤 光, 日野 志朗, 儀部 茂八, 坂井 真知, 岡田 和之
    2025 年 15 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり

    サイクロデキストランは別名環状イソマルトオリゴ糖と呼ばれCIと省略される.グルコースがα-1,6グルコシド結合で環状に連結した構造であり,天然には黒糖中に発見された.α-1,6グルカン(デキストラン)またはイソマルトオリゴ糖を基質として微生物由来のCIグルカノトランスフェラーゼ(CITase)により生産される.CIは水溶性が高く,抗プラーク能と包接能を有する.CIの実用レベルの生産を可能にするために,原料となる良質なデキストラン高生産菌の分離,CITase高生産菌の育種を行い,CIを含有する製品CI-Dextran mixの商業生産に成功した.現在CI-Dextran mixを添加したオーラルケア商品が生産販売されている.さらに,CI-Dextran mixを可溶化剤として利用するために,難溶性成分をビーズと共に固体混合してから水抽出する方法を開発した.また,基礎研究ではあるが包接能の高いCI-10の生産力を3倍に高めた変異酵素の作製に成功した.さらにCI生産菌は澱粉からCIを生産する代謝経路を持つことを明らかにし,研究室レベルではあるが澱粉原料からCIを生産することに成功した.

受賞紹介/令和6(2024)年度大会ポスター賞発表内容
報文
  • 本多 裕司, 齋藤 泰宏, 勝見 尚也, 山崎 裕也, 笹木 哲也, 安原 里美, 林 美央
    2025 年 15 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    石川県が新たに開発した「石川酒68号(百万石乃白)」の精米歩合別の試料を調製し,澱粉,胚乳貯蔵蛋白質及び遊離アミノ酸について分析するとともに,「山田錦」,「五百万石」,及び「石川門(石川酒52号)」についても同様の分析をした.各品種の玄米について比較してみると,「石川酒68号」と「山田錦」のToは「石川門」及び「五百万石」と比較して5°C低かった.また,各精米歩合の試料においても「石川酒68号」と「山田錦」のToは「石川門」と「五百万石」のToに比べ3–4°C低かった.各品種の玄米の粗蛋白質含量は6.2–7.0 g/100 gであったが,精米が進むにつれて減少し,50%精米した「石川酒68号」と「山田錦」は3.1 g/100 gであり,「石川門」及び「五百万石」は3.3 g/100 g及び3.4 g/100 gであった.各精米歩合別に品種間の胚乳貯蔵蛋白質の構成比を比較したが,いずれの品種も37–39 kDaグルテリン及び26 kDaグロブリンと22–23 kDaグルテリン(塩基性)が他の胚乳貯蔵蛋白質と比較して多く含まれていた.「石川酒68号」の玄米における遊離アミノ酸含量は他の品種の玄米と比較してAsp, Asn, Glu, Arg, Lys, His,及びTyrの含量が有意に低かった.

解説
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