一般に,海洋細菌であるVibrio属細菌は,キチナーゼを分泌して
N,
N'-diacetylchitobiose[(GlcNAc)
2]を生産することが知られている。しかし,一部の菌はさらにキチンオリゴ糖脱アセチル化酵素(COD)を分泌し,菌体外最終産物としてβ-
N-acetyl-D-glucosaminyl-(1,4)-D-glucosamine(GlcNAc-GlcN)を生産する。CODは,Carbohydrate esterase family 4に分類され(GlcNAc)
2に特異性の高い脱アセチル化酵素として2010年にEC 3.5.1.105が付された酵素である。CODの酵素化学的性質については,数種のVibrio属細菌由来の酵素で報告されている。最近,我々は
Vibrio parahaemolyticus由来CODが1つの活性ドメイン(PDD)と2つのキチン結合ドメイン(CBD)から成ることを立体構造から確認した。また,各ドメインがそれぞれ独立して機能することも解明した。さらにGlcNAc-GlcNは,COD生産性Vibrio属細菌に特異的なキチナーゼ生産誘導因子および遊走性因子であることも明らかにした。これらのことから,CODは一部のVibrio属細菌にとってはキチン利用のためのシグナル分子生産に必須な酵素であることがわかった。
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