セルラーゼの高生産菌である
Trichoderma reeseiのセルラーゼ誘導物質の1つにソホロースがある.ソホロースは,本菌のβ-グルコシダーゼ (BGL) の糖転移反応によって合成されることが示唆されている.
T. reeseiのゲノムには,10種類のBGL遺伝子が存在することが示唆されており,これらの異種発現系を大腸菌と麹菌で構築した.10種類の組換え酵素のうち9種類がBGL活性を示し,その酵素化学的性質を明らかにした.セロビオースを基質として,糖転移能力を評価したところ,Cel1A,Cel3A,Cel3BおよびCel3Eに転移生成物が認められ,特にCel1Aは約10%の高い変換率でソホロースを合成した.一方,
T. reeseiにおけるCel1A 遺伝子の破壊は,セルラーゼおよびセルラーゼの正の転写因子の発現時期を遅らせることから,Cel1Aはセルラーゼの誘導に重要な役割を果たしていることが明らかとなった.一方,Cel1Aの活性部位近傍のアミノ酸2残基に変異を導入し,Glc感受性と熱安定性を改善することに成功した.また,同時に比活性の増加 (2.4倍) とGlc活性化 (50 mM Glc存在時に1.8倍) を獲得させることに成功した.この変異型Cel1Aを利用することにより,セルラーゼ生産量を増大させた
T. reeseiの作出が期待される.
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