セルロースはD-グルコースから構成される,枝分かれ構造を含まない直鎖状の多糖である.また,直線上に配置した分子同士が会合し,結晶性の高い高次構造を形成するため,セルラーゼなどの酵素による分解性が低い.筆者らは,セルロース溶解性を示すイオン液体に着目し,セルロースの高次構造と酵素分解性の関係を調査した.イオン液体による溶解後に再析出された再生セルロースは,II 型セルロースに近い結晶型を示したが,その構造は用いるイオン液体の種類によって異なることを明らかにした.次に,作用機序が異なる3 種類のセルロース分解酵素を用いて再生セルロースの分解性評価を行った結果,非晶領域に作用しやすいエンドグルカナーゼによる分解性が,イオン液体の種類によらず大きく上昇することが明らかとなった.また,再生セルロースの構造がよりII 型セルロースに近くなるほど,酵素分解性は低下した.実バイオマスに対するイオン液体処理においては,イオン液体の種類により溶解挙動が大きく異なることと,完全溶解を行わなくても十分に酵素反応性を改善させることが可能になることを明らかにした.
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