セルロースやキチンを原料とした材料づくりでは,自然界での生合成による微細構造や化学構造を活かすことが重要である.近年,医療材料などの分野で高生体親和性かつ高強度のハイドロゲルに注目が集まっており,セルロースやキチンはその原料として有望である.従来の高強度ハイドロゲル調製法では,化学的架橋剤の添加,電解質の混合,塩酸への浸漬など第3成分の添加が必須とされていた.今回紹介する水熱ゲル化は,前記のような添加物を一切使用せずに,自然のセルロースの化学構造を維持したままの新しいハイドロゲル調製法である.まずウォータージェットを用いた湿式解繊により,水だけを用いてセルロースナノファイバー(CNF)(直径10~15nm,長さ500~1,500nm,濃度1wt%)を調製した.さらに,そのCNF分散液を,水熱処理(160~200°C,圧力0.6~1.6MPa,1.5~120min)することで,高強度のハイドロゲル(圧縮弾性率~7kPa)を調製した.さらに水熱ゲル化は,キチンナノファイバーや化学修飾されたTEMPO酸化CNFにも適用可能であることも明らかにした.
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