現在の死因別死亡率第一位は悪性新生物である。主ながん治療法は 1)外科的療法 2)放射線療法 3)化学療法があり、補助的療法として温熱療法が用いられることもある。低LET放射線を使用した放射線療法は細胞周期や細胞の状態で感受性が変化することや、人体への被ばくが問題となる。また、温熱療法は単独ではあまり効果が期待できず、単独で著しい効果を得るまで温度を上げすぎると熱さに耐えられない。そこで、放射線療法と40~42℃の温熱処理を行う温熱療法(マイルドハイパーサーミア)を併用することで、がん抑制効果を高め、また被ばく線量の低減が期待できることに注目した。
本研究では放射線療法とマイルドハイパーサーミア の併用によるヒト食道扁平上皮がん(KYSE-70)細胞の抑制効果を調べた。KYSE-70細胞に温熱処理(42℃,15分または30分)後、放射線2~10 Gyの照射を行った。X線照射から120 時間後にクリスタルバイオレット染色法を用いての細胞増殖能を評価した。X線単独では照射線量が大きくなるほど、がん抑制効果は増加し、6 Gy照射からは細胞の形態も大きく変化していた。このことから、マイルドハイパーサーミア併用実験では臨床で分割照射に利用される2 GyとX線照射単独ではあまりがん抑制効果がない4 Gy(4 Gyおよび2+2 Gy)を照射することを決定した。マイルドハイパーサーミア併用では温熱処理30分と放射線照射2+2 Gyの併用でKYSE-70細胞の生存率が大きく下がった。放射線単独では細胞周期S期後半、低酸素細胞に対する効果が低いが、温熱療法ではそれらの細胞に対する効果が高く、また照射による損傷は温熱を使用することで固定などがおこる。このことによりX線照射の総線量を下げることができて副作用が低減できるのではないかと考える。
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