多層クラスター分析法は,あらかじめ想定しておいた複数の層からなる階層クラスター構造のクラスターに対象を所属させるクラスター分析法である.本稿では,実データの分析を通じて多層クラスター分析法を評価する.すなわち,多層クラスター分析法を用いて,8つのソフトドリンクについて,消費者が購入したブランド(銘柄)の変更を表すブランドスイッチングデータを分析する.分析で得られた結果は2つのグループの差,すなわち,第1のグループはダイエットでないコーラ味のブランドであるCokeとPepsiという2つのブランド,第2のグループはそれ以外のブランド(全てのダイエットブランドとダイエットでないレモンライム味のブランド)が消費者のブランドスイッチングにおいて最も重要であることを明らかにした.これは,2つのグループの差異を強調したマーケティング戦略が必要であることを示唆しており,多層クラスター分析法がブランドスイッチング行列という実際のデータを分析する上で有用であることを示している.ブランドスイッチング行列を多層クラスター分析法により分析した場合には,非対称多次元尺度構成法や非対称クラスター分析法により分析した場合のように,ブランドスイッチングの非対称関係を直接表現することはできない.一方,多層クラスター分析法による分析は,ブランドスイッチング元のブランド違いに基づいたブランドスイッチング先のブランド間の関係を表現することができる.これは,商品陳列などに有用な情報をもたらすと考えられる.
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