データ分析の理論と応用
Online ISSN : 2434-3382
Print ISSN : 2186-4195
8 巻, 1 号
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論文
  • 吉野 諒三, 田中 康裕, 小出 哲彰, 稲垣 佑典, 芝井 清久, 前田 忠彦
    原稿種別: 論 文
    2019 年 8 巻 1 号 p. 3-24
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/11/22
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    公開データ利用促進の任務を担う情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設のプロジェクトの一部として,2018 年3 月13 日「第2 回人間・社会データ構造化シンポジウム」が開催された.特に,社会調査データの公開における個人情報保護等の法的規制と倫理的指針について,同施設の社会データ構造化センターの法律アドバイザーである牧野二郎弁護士により,一般公開の特別講義が行われた.講演に先立ち,同センターの研究者たちとの協議を経て,牧野総合法律事務所により講演資料が用意された.本稿は,筆者らがその資料を改稿し,シンポジウムでの討議や,2018 年5 月よりEU で施行されているGeneral Data Protection Regulation(一般データ保護規則)など関連資料やその後の推移の確認などを含め,官民学の社会調査関係者向けに概説したものである.

    現実の法律の執行は,各研究者の解釈や意図とは必ずしも完全には一致しないこともあり得るが,本稿は実証的データに基づく人文社会科学の発展や政策立案を促進するための参考としてまとめた.

  • —日本人の国民性調査からの知見—
    Wolfgang Jagodzinski, Hermann Duelmer, 稲垣 佑典, 前田 忠彦
    原稿種別: 論 文
    2019 年 8 巻 1 号 p. 25-46
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/11/22
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    Yamagishi & Yamagishi は,アメリカと比べて日本では一般的信頼が低いことを示したうえで,日本社会で広く見られる長期的なコミットメント関係が,一般的信頼の欠如をもたらしたと考察した.

    これに対して本研究は,「日本人の国民性調査」の二次分析を通じて,日本におけるコミットメント関係への選好が過去35 年ほどの間に一般的信頼の水準に強い影響を及ぼしたという仮説に疑問を投げかけるものである.

    なお,分析からは,一般的信頼と以下のような事柄との関連性が示唆された. ①一般的信頼は「年齢」によって弱い正の影響を受けるが,「教育」によって強い正の影響を受ける.したがって,教育機会の拡大と政治的関心の広がりによる「認知動員」の上昇や日本社会の高齢化の過程は,一般的信頼の向上をもたらした可能性がある.②都市化の影響については,依然としてあいまいなままであった. ③「性別」について、初期の調査時点では女性の一般的信頼は低かったが,1990 年頃になるとこのような性差は消失した.

    ただし上記の変数は,いわゆる「失われた10 年」や2008 年の世界的な経済危機の影響によって生じたと考えられる,1990~2008 年の一般的信頼の低下を説明するものではなかった.

  • 西里 静彦
    原稿種別: 論 文
    2019 年 8 巻 1 号 p. 47-57
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/11/22
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    半世紀にわたる数量化理論の仕事で,取り残した一つの課題がある.それは1989 年にGreenacre の強烈な批判で失墜したCGS スケーリングを擁護する論文を書くという今は亡きCarroll への約束である.それは,分割表の数量化で得られる行と列の最適変量を,いかに同一空間に表現するかというグラフ法の問題である.行と列の変量は行と列の相関が1 でない限り同一空間にない.それにも拘らず,すべての場合に行と列を同一空間にプロットするという方法が,半世紀の間に定着化してしまった.その打開策として提起されたCGS スケーリングは握りつぶされ,そのあとCGS スケーリング正当化の論文を出すことは困難を極めた.本文は現在数量化理論の砦としてかまえる同時グラフ法の強固な壁を乗り越え,正当な同時グラフには2 倍の空間が必要であることを示した.残念ながら,CGS スケーリングは2 倍の空間を考慮しなかったためにGreenacre の批判に屈した.本論文の空間2 倍説に対し読者の理解が得られ,現在広く使われている対称グラフ法(フレンチプロット)と非対称グラフ法を批判の目で見直してくれれば何よりである.

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