バイオメカニズム
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18 巻
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  • 大日方 五郎
    2006 年 18 巻 p. i-ii
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー
  • 末松 良一
    2006 年 18 巻 p. 1-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    欧米諸国とは異なる特有のロボット観を育んだ「からくり」について, まずその歴史を概観し, 次いで江戸時代に庶民に普及する契機となった「竹田からくり芝居」について紹介する. また, 座敷からくりの代表作である「茶運び人形」と「弓曵き童子」を取り上げ, 西欧のオートマタ (自動人形) と対比しつつ, 日本のからくり人形の先見性などその特長を指摘する. からくり芝居を今に伝える「山車からくり祭」について, その演技のいくつかを紹介するとともに, なぜ中部地域に集中しているのか, 地域社会やモノづくり産業技術にどのように関連しているのかなどについて解説する.

1部 生体機能のシステム化
  • 大日方 五郎, 梶原 康宏, 柴田 直生, 長谷 和徳
    2006 年 18 巻 p. 13-22
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    眼球の反射機能の一つとして前庭動眼反射が知られているが, 注視状態での頭蓋への運動外乱に対する注視点まわりの制御特性としてその機能が調べられている. しかし, 前庭動眼反射とメンタルワークロードとの関係が定量的に調べられたことはないように思われる. 本研究ではまず, Haslwanterらによって提案された数学モデルに基づき, 特定の個人の前庭動眼反射特性を同定し, 同定モデルが実際の眼球の動きによく一致することを確認した. 次に, このモデルを手動制御系におけるトラッキングタスクによって検証することを試みた. トラッキングタスクを実行中に, 音声提示の2桁の暗算をサブタスクとして与え, サブタスクの有無により同定モデルと実際の眼球の動きの誤差を評価し, サブタスクの有無が前庭動眼反射の動特性に影響を与えることを確認した. この結果は, 前庭動眼反射がメンタルワークロードの影響を受けることを示しており, またその影響は同定モデルにより定量的に評価できる可能性を示唆している.

  • 速水 則行, 田中 英一, 山本 創太, 武内 浩樹
    2006 年 18 巻 p. 23-34
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    動作解析において, これまであまり考慮されてこなかった筋疲労の影響を検討するため, 従来の力学的な筋モデルと組み合わせて使用する筋疲労モデルを開発した. そのため, 運動単位に着目し, それらを活性状態, 疲労状態により四つの状態に分割し, その状態変化を微分方程式により表現した. さらに, 代謝特性や疲労耐性の違いから三つの運動単位タイプに分割し, 運動単位の動員様式にはサイズ原理を取り入れてモデル化した. モデルの妥当性を検討するため, 先行研究や動的条件の疲労実験結果との比較を行ったところ, 筋疲労の特徴が再現できることを確認した. また, 各運動単位タイプの動員タイミング, 疲労の進行など, タイプ毎の特性の違いを再現できることが分かった.

  • 荻原 直道, 工内 毅郎, 中務 真人
    2006 年 18 巻 p. 35-44
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    ヒトの精密把握能力の形態的基盤の進化を明らかにするためには, ヒトと最も近縁なチンパンジー手部構造の形態と機能の関係を理解することが不可欠である. このためCT および屍体解剖により取得した形態学的情報を元に, チンパンジーの手部筋骨格系の数理モデルを構築した. 本モデルを用いてチンパンジーの形態に規定される精密把握能力を生体力学的に推定し, ヒトの手と比較した結果, 特に第1背側骨間筋の付着位置の違いが, ヒトに特徴的な優れた把握能力に大きく寄与していることが示唆された.

  • 中島 求, 三浦 康郁, 金岡 恒治
    2006 年 18 巻 p. 45-56
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    競技水泳選手には腰痛患者が多く, またL5/S1などの腰椎下部に椎間板変性を有している頻度が高い. そこで本研究では, まずクロール泳における腰部への変動的な負荷を水泳力学シミュレーションにより明らかにし, 水泳においては矢状面上の負荷が主であることを明らかにした. 次に変動的な負荷に対する, 矢状面二次元腰部筋骨格モデルを作成し, 腰椎挙動のシミュレーションを行い, 腰椎下部の変位振幅が大きくなる結果を得た. また体幹内部の筋の剛性を上げることにより腰椎下部の変位振幅を小さくできることを明らかにした. さらにX線シネ撮影装置を用いて陸上での腰椎挙動を測定する被験者実験を行い, シミュレーションの妥当性を確認した.

  • 長谷 和徳, 小林 慎哉, 加納 豊広, 石田 浩司, 堀田 典生, 大日方 五郎
    2006 年 18 巻 p. 57-68
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では運動中における血圧などの循環器系のダイナミクスの変動を再現し得る統合的数理モデルを構築し, そのメカニズムを計算機シミュレーションにより明らかにした. 身体運動としてペダリング運動を想定し, 所定の回転速度でペダリング運動を再現できる筋骨格モデルの構築を行った. 循環器系モデルは既存の呼吸循環器系の連続時間モデルを参考にし, これにセントラルコマンドや, 末梢化学受容器の特性など, 運動器系と循環器系との相互作用モデルを新たに付加した. シミュレーションより得られた血圧変動パターンなどは実測結果の特徴をよく表していた. また, 圧受容器におけるセットポイントの変化の重要性が確認された.

2部 生体と人工物とのシステム化
  • 下戸 健, 日垣 秀彦, 安武 誠治, 吉住 昌晃, 中西 義孝, 濱井 敏, 三浦 裕正, 岩本 幸英
    2006 年 18 巻 p. 71-78
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
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    膝関節は複雑な6自由度運動を許容しているため, 多種多様なデザインの人工膝関節が製品化されている. しかし, 生体内において各人工膝関節の設計コンセプトが機能しているかどうか解析することは容易ではない. そこで本研究では, フラットパネルディテクターから出力される医用画像とイメージマッチング法を応用することにより, 正確な動態解析を試みている. 本報では, 実際に人工膝関節が置換された被験者を対象に跪き動作時の動態解析を行い, 生体内における大腿骨コンポーネントとポリエチレンインサートの相対運動を明らかにした. さらに, 被験者に依存し, 各機種のコンセプトを発現する運動パターンを確認することができたので報告する.

  • 今戸 啓二, 池内 秀隆, 三浦 篤義, 伊東 朋子, 大西 謙吾
    2006 年 18 巻 p. 79-88
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    介護職の77%, 看護職の64%もの人が経験する腰痛に対し, 簡単で効果的な実用的腰部負担軽減具は未だ開発されていない. 本研究は実用化を目指して簡単な構造の腰部負担軽減具を試作し, 力学モデルによる理論解析と評価実験を行った. 実験ではベッドから車椅子への移乗, 体位変換についての動作解析と, 脊柱起立筋の筋電図より試作品の腰部負担軽減効果を評価した. さらに椅子に座る, 床にあるものを回収するなどの日常動作についても装具を評価した. その結果, 試作した腰部負担軽減具は深い前屈姿勢での腰の負担は確実に軽減しながらも, 日常的な体の動きを拘束するものではないことを確認した.

  • 三浦 弘樹, 佐々木 誠, 大日方 五郎, 巖見 武裕, 長谷 和徳
    2006 年 18 巻 p. 89-100
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では, 個人に適合する車いすの設計指針を構築するため, その実現に不可欠となる3次元運動計測技術とモデル解析技術を確立した. はじめに, 車いす駆動における上肢運動とハンドリムに加えた手先の力とモーメントを計測可能な3次元計測システムを開発し, 車いす使用者の身体運動を力学的側面から定量化した. つぎに, 個人の身体寸法と上肢7関節の最大関節トルクを考慮した動的操作力楕円体を定義し, 使用者の上肢運動特性という観点から, 手先力の発揮しやすさとハンドリム操作との運動学的関係を明らかにした. さらに, それらの計算値や実験データ, および上肢剛体リンクモデルに基づいて, 駆動時のフォームを改善する最適化計算を行い, 上肢の機械的仕事がおよそ20%減少する駆動フォームを導出した. 本研究の結果は, 使用者一人一人に最適な車いすを設計するための重要な基盤技術となる.

  • ―高齢者のジレンマ解消の解として―
    二瓶 美里, 金重 裕三, 藤江 正克, 井上 剛伸
    2006 年 18 巻 p. 101-112
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では心理的な問題に対する工学的支援手法の構築を目的として, 高齢者の移動支援機器の開発を行った. そのために, 質的研究アプローチを用いた高齢者の調査から, 高齢者が移動支援機器に対して抱くジレンマに着目し, そのジレンマと解消過程の心理概念モデルを構築した. それを基に, 身体機能の維持と移動性さらに他者から見た歩行を実現することをコンセプトとした移動支援機器の開発を行った. 本研究で製作した機器は, トレッドミル上で歩行運動を行うことにより, 歩行面が回転し, 同時に歩行速度の変動を駆動輪に増幅して伝達する機能を持つ. そのために, 歩行速度変動を運動学的な視点から抽出し, 歩行パターンを推定する手法を決定し, システムの開発を行った. また, 開発機の試乗評価から基本機能を確認した. さらに, 高齢者を対象とした開発機器の印象についての主観評価から, 受け入れやすい機器であることが示された.

  • 内藤 尚, 長谷 和徳, 井上 剛伸, 大道 佳昇, 相川 孝訓, 山﨑 伸也, 諏訪 基, 大日方 五郎
    2006 年 18 巻 p. 113-125
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    筆者らは, 人体モデルによる動作生成シミュレーション技術を用いて, 福祉用具の開発・設計を支援する手法を確立することを目指している. 本研究では, これまでの研究で開発した股義足歩行シミュレーションモデルを, 設計・開発支援ツールとして股義足股継手の開発へ応用することを試みた. 現状の股義足の問題点を踏まえ, 新しい機能をもつ2種の股継手の設計案を提案し, それらのモデルをシミュレータに導入した. 股義足の特性の微調整と神経パラメータの探索計算を繰り返すことで, 設計案の股義足を用いて歩行ができることを確認し, その設計案を参考に股義足股継手の試作とそれを用いた歩行による初期評価を行い, 試作した股継手を用いた歩容の変化について考察した. 最後に, 本シミュレータの開発支援ツールとしての有効性について検討するとともに, 今後の課題を明らかにした.

3部 人工物による生体機能のシステム化
  • 須藤 誠一, 露木 浩二, 本間 義則, 前田 健伍, 本田 崇
    2006 年 18 巻 p. 129-140
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    微小生物の運動機能・機構を解析し, マイクロロボットを開発するアプローチの重要性が認められ, マイクロロボットの実現に向けた試みがなされている. 本研究では微小水棲生物としてトンボの幼虫である若虫を取り上げ, 若虫の遊泳運動を高速度ビデオカメラシステムによって解析した. また, 陸生昆虫の歩行移動における脚の動きとの相違を明確にするため, 昆虫の歩行解析も行い, 両者の比較によって抗力推進の脚運動メカニズムを明らかにした. このような若虫の泳動解析に基づいて, 非接触エネルギー供給システムによって駆動されるマイクロ泳動メカニズムを試作した. 本研究における泳動メカニズムはNdFeB磁石と外部交流磁場によって秒速数十mmで泳動することを確認し, 外部交流磁場の周波数による泳動速度の特性についても脚ヒレ長さを変えて詳細に調べ, 20Hz付近で遊泳速度が高くなることを明らかにした.

  • 林 豊彦, 宮嶋 晃子, 中村 康雄, 中嶋 新一, 小林 博, 山田 好秋
    2006 年 18 巻 p. 141-152
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    ヒトの顎運動のメカニズムを明らかにするために, ヒトに近い解剖学的構造と生理学的制御メカニズムをもつ自律顎運動シミュレータJSNを開発してきた. 本研究では, 咬合力センサの3軸化, 顎関節負荷センサの装着, 咀嚼様空口運動のための筋アクチュエータ駆動信号の改良を行った. 改良型シミュレータJSN/2Cの咀嚼運動シミュレータとしての性能を評価するために, 1) 咬合力センサの測定精度, 2) 下顎切歯点の3次元軌道, 3) 上顎第一臼歯に加わる咬合力の3次元動態, 4) 噛みしめ時における閉口筋活動と咬合力・顎関節負荷との関係について調べた. その結果, シミュレータJSN/2Cは, ヒトの咀嚼運動シミュレータに必要とされる基本条件を満たしていることが明らかとなった.

  • 谷 和男, 川村 拓也, 山田 浩貴
    2006 年 18 巻 p. 153-163
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    アフォーダンスの概念に基づいたロボットの自律的作業遂行の制御を構想する. 機械製品の分解では, 部品がそれを取り外す行動をアフォーダンスとして提供し, 人間やロボットなどの行動者がそれを受け取ることによって, 分解過程が進行すると考えることができる. 行動者を生物的な種として考えたときに, それが分解対象物のある環境に置かれ, 分解成功が種の保存につながるならば, 行動者は進化を通してより効率的な分解行動を獲得していくであろうし, それは新たなアフォーダンスの発見である. この考えを遺伝的アルゴリズムを用いたシミュレーションによって提示する.

  • 山川 聡子, 阿部 晃治, 藤本 英雄
    2006 年 18 巻 p. 165-174
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    人間が操作しやすい機械を設計するためには, 人間の知覚特性を考慮することが必要だと考えられる. しかし, 多くの場合, 人間の知覚特性は設計の初期段階では明確には考慮されておらず, 設計後の官能評価と調整に頼っていた. 本研究では, あらかじめ人の力覚特性を測定し, マスタ-スレーブシステム設計の必要条件を導くことを目的とする. そのため, 力覚特性のひとつである弁別閾に注目した. 本稿では, 提示力が時間的に変化する場合の弁別閾測定を行った. 提示力がゆっくり変化する場合には, 弁別閾が大きくなり, 変化を知覚しにくくなるという結果が得られた. 測定結果にもとづいて, 操作者が提示力の変化を知覚できるためのマスタ-スレーブシステムのスケーリング条件を導く.

  • 山崎 信寿, 田中 隆之
    2006 年 18 巻 p. 175-185
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    身体の剛体的特性と関節抵抗特性を模擬した, 全身16関節38自由度のダミー骨格を開発した. ダミーの関節抵抗特性は, 四肢関節の抵抗特性が平均的な値に近い男性1名を代表とし, その全自由度について関節トルクと関節角度の関係を計測して決定した. 身体の関節抵抗は可動限界付近で急激に増大する非線形特性を持つ. この関節抵抗特性を模擬するために, C型樹脂の曲げおよび圧縮抵抗を利用した小型関節機構を開発した. 試作ダミー骨格の各節の重量と重心位置は目標値から10%以内で一致した. また, ダミーの関節抵抗特性を人体と同様の方法で計測したところ, 両者は計測の再現性の範囲内で一致した. 開発したダミーは様々な支持状態に対応して自然な肢位をとることができ, 介護動作訓練や救助訓練に応用することができる.

4部 生体理解のためのシステム化技術
  • 松田 純平, 藏田 耕作, 福永 鷹信, 日垣 秀彦
    2006 年 18 巻 p. 189-198
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    微小重力環境における長期滞在や高齢社会により増加傾向にある長期臥床患者では骨量減少による生活の質の低下が問題となっている. 骨量減少を抑止するには骨量減少のメカニズムを解明することが必須である. 骨は機械的刺激に応答してリモデリング (再構築) を行う組織であることから, 解明には力学的側面からのアプローチが重要である. そこで本研究では, 擬微小重力環境を発生させる多方向重力負荷培養システムを新たに開発した. 骨組織の中で機械的刺激を感受する骨細胞を用いて, 多方向重力環境が細胞の機能や分化に及ぼす影響を調査した. その結果, 多方向重力環境にさらされた骨細胞は細胞増殖能および細胞間情報伝達能が有意に抑制されること, 骨細胞の培養液上清を用いた骨髄細胞の培養において骨髄細胞から破骨細胞様細胞への分化を有意に増加させることが明らかになった.

  • 斎藤 健治, 増田 正, 岡田 守彦
    2006 年 18 巻 p. 199-208
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では, 表面筋電図 (表面運動単位活動電位) 逆解析により運動単位の構造推定を試みた. 表面運動単位活動電位 (表面MUAP) は筋周囲方向に並べた多点表面電極列を用いて計測した. 計測した表面MUAPから, 逆解析により等価電流双極子の深さと強度を推定した. 逆解析は, MUAPモデルによる表面電位と, 計測した表面MUAPとの差を最小にするパラメータ (深さ, 強度等) を探索することにより実行した. 次に, 半径と筋線維密度をパラメータとする運動単位モデルを用いて表面電位を生成し, その逆解析により, 深さと強度の推定値と運動単位の半径と筋線維密度の関係を明らかにした. この数値シミュレーションで得られた運動単位の構造と逆解析推定値との関係を, 表面MUAPの逆解析結果に適用することにより活動運動単位の領域サイズと筋線維密度を推定した.

  • 渡辺 彰吾, 北脇 知己, 岡 久雄
    2006 年 18 巻 p. 209-218
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    筋音図 (MMG) は, 筋の電気的な活動を記録する筋電図とは異なり, 筋の機械的な機能を反映していると言われるが, その発生メカニズムは十分に解明されていない. 本研究ではラットの体表上に加速度センサ, レーザ変位計を設置し, 同時に光ファイバ型圧力センサを筋内に挿入して, 腓腹筋を電気刺激したときの, 加速度MMG, 表面変位, 筋内圧力を測定した. そして, 単収縮を誘発した際の加速度MMG, 表面変位, 筋内圧力の潜時, 伝播速度等の比較や, 筋小胞体からのCa2+放出を抑制するdantroleneを筋注したときの各波形の変化を測定し, MMGの発生メカニズムについて考察した. 本研究から, (1) 加速度センサを用いて測定されたMMGは力学的に変位に変換が可能である, (2) 加速度MMG は筋収縮に伴う筋内圧力の変化によって生じる側方へのせん断 (shear) 波の伝播, 合成によるものである, (3) 加速度MMG の潜時差より, 神経・筋接合部の所在を推定することが可能である, 等の知見が得られた.

  • ―等尺性収縮力依存性と筋疲労の影響―
    内山 孝憲, 大杉 健司, 村山 光義
    2006 年 18 巻 p. 219-227
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    触診のように, 筋を押すときの反力を計測し, 押し込み量と反力の関係から, 筋の硬さを評価した. まず, 上腕二頭筋を対象として, 等尺性収縮力と筋の硬さの関係を調べたところ, 提案する筋の硬さの指標は等尺性収縮力に対して比例的に増加した. 次に, 下腿三頭筋を対象として, 反復性筋収縮による疲労と筋の硬さの関係を調べるために, 足関節の底屈・背屈運動を, 20%および40% MVCの収縮力で, 底屈・背屈角度が目標値の1/3に減少するまで行った. 筋の硬さの指標は, 運動直後に最も大きく, 時間とともに指数関数的に減少した. このときの血流量は, 運動直後が多く, 時間とともに減少したが, 筋の硬さの指標に比べて, 元のレベルに戻るまでに長い時間を要した. 筋の硬さの変化には, 血流量の他に影響を与えるものがあることが示唆された.

  • 中村 康雄, 中村 真里, 林 豊彦, 菊入 大輔, 建道 寿教, 信原 克哉
    2006 年 18 巻 p. 229-239
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    肩甲上腕関節は, スポーツなどの酷使により過大な負荷を受けると関節周囲の軟部組織に障害が発生する可能性が高くなる. 臨床では, 肩関節障害の診断支援や治療効果を評価するため, 肩甲上腕関節の接触動態の定量評価が求められている. 疾患肩の接触動態を評価するには, 健常肩の接触動態を知る必要があるが, 接触動態の評価は難しく, 先行研究でも報告は少ない. そこで本研究は, 生体内における関節の接触動態を評価するための基礎研究として, open MRIを用いて肩甲上腕関節の骨間距離を評価することを目的とした. 健常者4名の上腕挙上にともなう肩甲上腕関節の骨間距離の推移から, 健常者の肩甲上腕関節は機能的に良好な適合性を持つことが確認できた.

  • 桐山 善守, 山崎 信寿, 名倉 武雄, 松本 守雄, 中村 俊康, 松本 秀男, 千葉 一裕, 戸山 芳昭
    2006 年 18 巻 p. 241-250
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    腰椎の運動特性を理解するために, 動作時の筋張力を再現できる模擬筋駆動型屍体実験装置を開発した. 腹直筋, 左右内・外腹斜筋, 左右脊柱起立筋に模したステンレスワイヤ7本を屍体腰椎に取り付け, 筋張力方向に牽引した. ワイヤ張力の制御には, ステッピングモータとロードセルで構成したサーボアクチュエータを用いた. 筋張力は, 腰椎の筋骨格靱帯モデルと実際の運動データから推定した. 新鮮屍体腰椎2体に対し, 前屈30°, 後屈20°, 側屈20°, 回旋10°を行わせたところ, 実運動と同等の動作を再現できた. また, 前屈運動であっても腰椎形状の左右非対称性によって椎骨間に側屈運動が生じることがわかった. さらに, 側屈運動ではL4-5で側屈方向が逆転した. 回旋運動ではL1 が最も大きくL2とL3が一体として動き, L5は回旋しなかった. また, 回旋に随伴する側屈角度はL3で大きくなった.

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