バイオメカニズム
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20 巻
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1部 機能の向上
  • 木塚 朝博, 板谷 厚, 岩見 雅人, 川村 卓
    2010 年 20 巻 p. 11-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    競技レベルでの高度なスポーツスキルの評価において, 運動能力と状況認知能力が同時に必要な場面をモデル化したデュアルタスクは, わずかなスキルレベルの差異を顕在化させる可能性がある. 本研究では, 競技場面に実在する運動課題と状況認知課題を設定し, 2つの課題を同時遂行するデュアルタスクを試作した. それを大学競技レベルにあるサッカー選手とベースボール選手を対象に実施し, レギュラーレベルと準レギュラーレベルの差異を検討した. その結果, 準レギュラー群ではデュアルタスク時に課題の成績が低下するが, レギュラー群では低下しないことが示された. また, 両群を分ける要因は, 状況認知能力の差異にあることが示唆された.

  • 岩見 雅人, 木塚 朝博
    2010 年 20 巻 p. 21-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    ボールバウンシング動作は種々の球技で用いられるスキルであり, 運動協調性を評価する上でも有用な動作課題とされている. しかし, その動作速度や熟練度の違いを運動学的, 電気生理学的な指標から検討した研究はほとんどみられない. そこで本研究では, 熟練度の異なる被験者に対して3つの異なる速度条件でボールバウンシング動作を実施させ, 運動学的, 電気生理学的データの変化を捉えた. その結果, 動作速度の増加に伴い関節の角度変位量と筋活動様相の関係性が変化し, またその変化様相は熟練度によって異なっていた. これらの速度条件による変化や熟練度の相違は制御戦略の違いを表しており, 熟練群は各速度条件に対して合目的的に関節スティフネスを調節していることが示唆された.

  • 山崎 大河, 金本 賢典, 後藤 清志, 忻 欣
    2010 年 20 巻 p. 31-42
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    熟練運動の最適性は, タスクを達成できるような運動の選択肢が複数存在することを前提として議論されることが多い. しかし, 鉄棒運動の場合, 手と鉄棒との間には摩擦トルクのみが働き自由に駆動トルクを加えられないという拘束を受けるため, 初期姿勢から終了姿勢に至る運動にどのような選択肢が存在するのか (運動選択の冗長性) を, 明確に想像するのは容易ではない. 本研究では, 体操選手の運動の計測データとの整合性を考慮しつつ, 「け上がり」 や 「後方車輪」 を簡単な剛体3リンクによってモデル化し, 駆動関節角度の時間変化をスプライン関数やフーリエ級数を用いて表現した上で, これらの技の背後にある運動の冗長性の一部を, スプライン関数やフーリエ級数のパラメータの集合として, 明確に定義した条件下で一意に求める方法を提案する. 数値解析によって, これらの技の背後にある運動の冗長性の一部を実際に計算できることを示し, その結果から, これらの技を達成できるような運動は少なくとも無視できない程度に冗長に存在していることを示す. さらに, 求められた運動の冗長性を表すパラメータ集合と, その中で体操選手が選択する運動との関係を, 最適性の観点から検討する.

  • 八田 有洋, 西平 賀昭, 東浦 拓郎, 金 勝烈
    2010 年 20 巻 p. 43-52
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    長期的な剣道鍛錬が脳─脊髄運動神経機能に及ぼす影響について, 末梢の脊髄運動神経機能については末梢運動神経伝導速度 (motor nerve conduction velocity : MCV) を用いて, 中枢の随意運動に伴う脳内処理過程については運動関連脳電位 (movement-related cortical potentials : MRCP) を用いて剣道鍛錬者と一般健康成人を対象に研究を行った. 1) 剣道鍛錬者は利き側だけでなく, 非利き側の尺骨神経伝導速度も一般健康成人より有意に速い値を示した. 2) 自発的な非利き側握力課題に先行して頭皮上より記録される運動準備電位 (Bereitschaftspotential : BP) の開始潜時は剣道鍛錬者が一般健康成人よりも有意に短い値を示した. 3) 一次運動野の皮質錐体路ニューロンの活動を反映するmotor potential (MP) 振幅は, 利き側と非利き側の握力課題において剣道鍛錬者が一般健康成人よりも有意に大きい値を示した. したがって, 脳─脊髄運動神経機能に長期的な運動トレーニングによる適応変化が生じる可能性が示唆された.

  • 中村 康雄, 齊藤 稔, 林 豊彦, 江原 義弘
    2010 年 20 巻 p. 53-64
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    サッカーは, キック動作を基本とした主に足でボールをコントロールするスポーツである. ボールを自在に操る蹴り脚は, 熟練者であるほど巧みな動きをする. そのため, 多くの先行研究では, 足のみを対象としてキック動作の定量的な測定・解析が行われてきた. しかし, キック動作は全身運動である. キック動作をさらに理解するためには, 足だけでなく, 蹴り脚の動作の要となる腰部の運動についても同時に測定し, 定量的に評価する必要がある. 本研究は, インステップキック動作を対象とし運動学・動力学解析することと, 熟練者と未熟練者の腰部の運動の違いを定量的に評価することを目的とした. キック動作はモーションキャプチャ・システムを用いて測定した. 熟練者と未熟練者の運動を評価した結果から, 腰部は, 上体の急激な屈曲運動の補助, 下肢へのエネルギー伝達, 姿勢の安定の3つの役割があると考えられた.

2部 機能の補助
  • 山崎 信寿, 雨宮 聡美
    2010 年 20 巻 p. 67-76
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    多くの女性は美容意識が高く, 容姿のみならず歩き方も気にしている. このため, 日常的に着用できるストッキングによって, 特に女性が気にする外股歩行を補正することを試みた. 臀大腿部に68点の標点をつけて歩行中の体表面変形を3次元計測し, 補正張力が期待できる伸張部位と固定に適した不変部位を明らかにした. その結果, 腰部から足部までらせん状に弾性ベルトを配置し, 股関節屈曲と膝関節伸展に伴う大腿後面の伸びを利用すれば, 内旋方向の張力が得られることがわかった. 幅75~50mm (0.09N/mm) の弾性ベルトを市販ナイロンストッキングに縫い付け, 外股歩行の20代女性5名に履かせて歩行計測を行った結果, 4°程度の補正効果が見られ, 着用や着座への影響はなかった.

  • 西浜 里英, 山崎 信寿
    2010 年 20 巻 p. 77-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    代表的婦人靴であるパンプスは, 甲が浅く, 歩行中に踵が脱げやすい. このため, 靴のファッション性を変えずに, 歩行中の足変形を利用することで踵のずれやすさを改善することを試みた. 踵がずれ始めるのは, 踵離地直前であり, この時期には足アーチが低下して, 舟状骨が張り出すと共に, 中足骨が広がって足囲が増加する. このため, 非伸縮性の紐を履き口囲から甲で交差させて, 中足骨頭部で固定するように α 状に靴に内包させ, 足囲増加を利用して履き口の固定力を高め, 踵のずれを減少させる機構を考案した. 試作パンプスを用いた成人女性9人の歩行計測では, 歩行周期50%時の踵のずれ量が従来と比較して平均23%減少し, 日常使用によってもずれ低減効果が持続することを確認した.

  • 寺島 正二郎, 佐藤 栄一, 小竹 和夫, 植木 一範, 佐々木 聡
    2010 年 20 巻 p. 87-98
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究開発では頸髄損傷者や筋ジストロフィーなどの重度障害者のための操作・支援装置として, 残される随意機能の1つである舌の動作に着目して, 舌運動で操作可能なマウスピース型の操作装置の開発を行っている. 本稿では, 開発した口腔内リモートコントローラーの仕様を説明すると共に, その性能および操作性について評価を行った.

     その結果, RFタグを用いることにより内蔵電源が不要なリモートコントローラーの開発に成功し, その通信特性として安定的な最大通信距離は大気中, 水中, 肉塊内共に110mm以上と良好な値を示した. また, 実利用時の通信特性を評価したところ, 頬脇にアンテナを設置した場合, 設計仕様を満たす十分な通信特性が得られており操作性も良好であった. さらに, 市販の電動車椅子を運転操作した結果, 安定した走行が可能であり, これらの結果から本システムの有効性と実利用の可能性を認めた.

  • 二瓶 美里, 木下 悟朗, 酒井 美園, 佐藤 春彦, 井上 剛伸
    2010 年 20 巻 p. 99-109
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    健常児と比較してさまざまな機会が制限される, 車いすを使用する障害児の発達を促すことを目的とし, 「二足歩行」 と同等の身体感覚が得られる電動車いすの試作機を開発した. 開発した試作機は, 目線の上昇を実現する半立位機構, 上肢の到達域拡大を実現する下肢による操作系, 動的なバランス保持のための筋活動を活性化するための座面動揺機能を有する. 健常被験者による試作機の試用評価から, システムが基本的な要求機能を満たしていることを確認した. また, 対象児による試用評価を実施した. その結果, 健常児と同様の目線高さや下肢操作による車いすの駆動, 座面動揺による筋活動の活性化, 上腕や手首位置による作業域の拡大が認められ, 要求機能を満たしていることが確認できた. また, 開発した電動車いすにより発達促進の可能性が示唆された.

  • 中山 学之, 荒木 洋輔, 杉本 幸夫, 藤本 英雄
    2010 年 20 巻 p. 111-122
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    脚に運動疾患を持つ患者のリハビリトレーニングにおいては, 転倒を防止するとともに脚にかかる負担を軽減するための装置として, 患者自身の自重を任意の姿勢で完全に補償することのできる自重補償装置の開発が強く望まれている. このような装置として従来から, 天井吊り下げ型のものや, 動力を用いたパワーアシスト装置によって自重を完全に補償する装置はいくつか開発されてきたが, 将来的な在宅での長期リハビリテーションへの応用を考えた場合には, より軽量でかつメンテナンスが容易な, バネのみから構成されるリハビリ装置の開発が望まれる. そこで本研究では, バネの復元力のみで駆動されるコンパクトな機械式自重補償装置と, 特定の姿勢を維持することを容易にする機械式線形スティッフネス呈示装置を開発し, これらを組み合わせることで, 重度の筋力低下を伴う患者でも安心して使用することのできる下肢リハビリ装置を開発することを試みた. そして, 簡単な試験により, 開発したシステムが自重補償装置および線形スティッフネス呈示装置として正常に動作することを確認した.

3部 感覚と学習
  • 土井 幸輝, 數藤 貴, 藤本 浩志
    2010 年 20 巻 p. 125-134
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    視覚や聴覚に続く第3の感覚器である触覚に関して, 近年, 触覚のディスプレイ・インタフェースの開発やVR技術への応用を意図した触覚の錯覚 (触錯覚) の知覚心理学的研究がさかんになりつつある. 著者らは, 触錯覚の一つであるベルベットイルージョン (ベルベット感) に着目し, 先行研究で難しいとされた受動触によるベルベット感の呈示の可能性を検討することにした. 本研究では, 受動触によりベルベット感を体感できる触覚のディスプレイ・インタフェースの開発に向けての基礎研究という位置付けで, ベルベット感の発生に影響を及ぼす各因子の条件とその発生率の関係を調べた. 具体的には, ベルベット感の発生に影響を及ぼす各因子の条件をコントロール可能な受動触によるベルベット感評価装置を製作した. そして, その装置を用いて受動触によるベルベット感発生に影響を及ぼす各因子の条件を網羅的に設定し, 各因子の条件でのベルベット感の発生率を実験により調べた. その結果, 各因子について受動触によりベルベット感が発生し易い因子の各条件が明らかになった.

  • 井上 剛伸, 武澤 友広, 石渡 利奈
    2010 年 20 巻 p. 135-146
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本論文は, 軽度認知症者の自己高揚を促すための電子日記システムのコンセプトの提案について論じたものである. 認知症者では, これまで開発が困難とされてきた, 精神生活を直接支援する福祉機器が必要となる. 本研究では, 心理学的手法を用いた4項目からなる開発指針を設定し, それに基づき, 近時の自己高揚経験 (達成経験・親和経験) を抽出し呈示するという, 電子日記システムのコンセプトを提案した. 呈示内容として達成経験と親和経験が必要であることは, 調査結果から心理学的に裏付けられたものであり, それらの内容を読むことで自己高揚が促されることについても, 認知症者を対象とした実験結果から示唆された.

  • 遠藤 博史, 石川 純, 梅村 浩之, 阿部 健太郎, 松田 次郎
    2010 年 20 巻 p. 147-156
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    熟練技能を継承していくためには, 技能の背景にある科学的根拠を示すことが重要である. 本研究では, 熟練した手わざ技能の人間側の要素を明らかにすることを目的として, ガラス研削作業の力の分析を行った. 若手作業者は研削する力の強さにメリハリがなく, 常に力を出し続けた状態であるが, 経験年数の増加とともに力にはっきりした強弱が表れた. 若手作業者のやり方は, 回転する研削皿に対して常に抵抗力を維持し続ける必要があり, 疲労の影響が大きくなると考えられた. 一方, 荷重点 (力の重心位置) は作業者によって異なり, ある1つのパターンに収斂することはなかったが, 数値解析の結果, 中堅以上の作業者の重心位置は力のばらつきの影響が出にくいパターンであることが分かった. 本実験の結果から, 手わざのガラス研削作業において, 疲労の軽減やばらつきの補償といった人間側の欠点を補う技能が明らかとなった.

  • 林 豊彦, 山岸 直也, 中村 康雄, 中嶋 新一, 井上 誠, 渡辺 哲也
    2010 年 20 巻 p. 157-169
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    ヒトの顎運動メカニズムに対する理解を深めるために, 我々はヒトに近い解剖学的構造と生理学的制御系をもつ自律顎運動シミュレータJSNを開発してきた. 本研究では, 咀嚼の効率化に有効と考えられている次の3つの機能 : 1) 歯根膜咬筋反射, 2) 食片弾性の検出, 3) フィードフォワード制御 (食片検出後における咬筋・内側翼突筋の活動開始の早期化) を, ヒトに近いメカニズムでJSN/3Aに実装した. 実験の結果, 歯根膜咬筋反射は, 初期の抑制には咬合力の急激な上昇の抑制効果が, 続く促進には咬合力の増強効果が見られた. 食片弾性は, 側頭筋前部の長さと上顎第一大臼歯に加わる咬合力の2つの感覚データから推定可能であった. フィードフォワード制御は, 咬筋・内側翼突筋を主体とした自然で効率的な噛みしめの再現に有効であった.

  • 松田 康広, 佐久間 一郎, 神保 泰彦, 小林 英津子, 荒船 龍彦
    2010 年 20 巻 p. 171-182
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では, 指点字を習得した盲ろう者と習得していない健常者が, 直接皮膚接触を行なうコミュニケーションの実現を目指し, 盲ろう者から健常者に打点された指点字を認識し, 健常者に音声で伝達する打点認識システムを開発している. ここでは, 被打点者が加速度センサを装着し, 打点によって生じる衝撃加速度の特徴を明らかにするために, 指点字の打点運動の計測実験を行なった. そして, 打点による衝撃加速度の特徴から, 打点された指と位置の認識アルゴリズムを導出した. 認識アルゴリズムの評価として, 打点者と被打点者が隣に並んだ打点の, 打点された指の推定認識率は92.9%, 打点された位置の推定認識率は81.9%であった.

4部 筋と身体運動
  • 長谷 和徳, 小島 聡太, 大日方 五郎
    2010 年 20 巻 p. 185-196
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, 身体動作中の筋疲労を定量的かつ詳細に評価するため, 中枢性・末梢性の筋疲労を考慮した筋骨格モデルの開発を行うことである. 運動の意志から筋の活性度を経て筋張力を発揮するまでの筋の力発揮特性を計算論的に表した筋疲労モデルを構築した. また, モデルのパラメータ同定法について検討し, さらに筋疲労を考慮した評価関数と最適化計算法を組み込んだ筋骨格モデルを構築した. これらのモデルより得られる疲労特性を先行研究による筋疲労実験結果と比較し, その妥当性を確認した. また, ペダリング運動の計測を行い, 従来モデルと筋張力の推定精度を比較した結果, 提案筋骨格モデルの方が全体的に推定精度が向上していた.

  • 藤川 智彦, 百生 登, 大島 徹
    2010 年 20 巻 p. 197-206
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    バイオメカニクスの分野において, 運動の基本である歩行を理解することは必要不可欠である. そのため, ヒトの歩行に関する解析は筋骨格モデルによるロボット工学的な理論解析を用いて明らかにされてきた. そこで, 本研究は生体特有の二関節筋の存在に注目し, 二関節筋と一関節筋を含めた最も単純化したモデルである大腿部の三対6筋の駆動機構による運動パターンとヒトの歩行軌道の関係を明らかにすることを試みた. この三対6筋の運動パターンには静的条件下における四肢先端部の出力方向制御をおこなう筋の協調制御パターンをもちい, その運動パターンで理論的に求めた下肢先端部の軌道がヒトの歩行軌道と非常に類似することを明らかにした. さらに, ヒト歩行時の軌道とその筋活動を動作筋電図学的解析により確認し, 下肢大腿部の三対6筋と筋の協調的制御パターンが歩行の軌道に関与していることを明らかにした.

  • 渡辺 彰吾, 北脇 知己, 岡 久雄
    2010 年 20 巻 p. 207-216
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    強縮の進行度合いを示すFusion indexと刺激周波数との関係を表す曲線は, Fusion index-Frequency Curve (FFC) と呼ばれ, 2つのパラメータk, hで構成されるシグモイド関数 (FFC-equation) で表現できる. 本研究では, 筋線維構成比が異なるラットの腓腹筋, ヒラメ筋, 中間広筋を対象として, 変位筋音図のFFCを測定し, FFC-equationを適用させた. その結果, FFC-equationは変位筋音図にも適用させることが可能であり, kおよびhは, 単収縮からも簡易的に推定できることなどがわかった.

  • 橘内 基純, 金子 文成, 青山 敏之, 戸田 創, 福林 徹
    2010 年 20 巻 p. 217-224
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では, 菱形筋を中心とした肩関節外転運動における肩甲骨周囲筋群の筋活動量の変化を検討することを目的とした. 対象は肩関節に既往のない健常男子大学生6名とし, 肩関節外転運動時の大・小菱形筋の筋活動をワイヤ電極により, 前鋸筋, 僧帽筋中部線維の筋活動を表面電極により計測した. この結果, 小菱形筋と大菱形筋間において筋活動量に差異が認められるとともに, 小菱形筋と前鋸筋の2筋は負荷の増加に伴って筋活動量が増加する傾向が見られた. よって, 小菱形筋と前鋸筋は負荷依存的に活動することが考えられ, 肩関節外転運動に伴う肩甲胸郭関節の運動は肩甲骨周囲筋群の協調運動により遂行されている可能性が示唆された.

  • 和田 良広, 宮下 智
    2010 年 20 巻 p. 225-232
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    近年, スポーツや健康増進の分野でコアトレーニングという深部体幹筋に着目したトレーニングに注目が集まっている. 体幹の安定性については, Local muscles (固定筋) と Global muscles (運動筋) に分類され, 脊柱の安定性に関与するLocal musclesの重要性を検討することが増えている. このLocal musclesにアプローチする具体的な方法のひとつとして, 排尿を止めるように模擬的に下腹部に力を入れるよう口頭指示することでLocal musclesの1つである腹横筋を収縮させることができるとされている. しかし, この方法が実際に腹横筋の収縮を促す方法として適切か, どのような肢位で行うことが効果的か等の報告は無い. 本研究の目的は腹横筋の収縮を促すこの方法の有効性と, 効率的な肢位を検証することである. 対象は男性61名 (平均年齢18.1±1.8歳). 背臥位, 立位姿勢で安静時及び排尿を止めるように模擬的に下腹部に力を入れるという口頭指示を行ったときの腹横筋の筋厚を, 超音波診断装置を用いて測定した. 結果, 深部体幹筋の収縮を促す方法としてこの口頭指示を行うことは腹横筋, 内腹斜筋の随意的収縮を促す有効な手段であること, その有効な肢位としては, 背臥位がより効果的であること, 随意的収縮を行えない場合は, 収縮を意識しなくても腹横筋の収縮可能な立位保持の選択が有効であることを確認した.

  • 赤木 亮太, 矢内 利政, 金久 博昭, 福永 哲夫, 川上 泰雄
    2010 年 20 巻 p. 233-241
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究は, 肘関節屈筋群を対象に, 新たな筋横断面積指標を作成し, 等尺性最大随意収縮 (MVC) 時の筋横断面積指標と筋力との関係を検討した. その結果, 筋厚と体肢周径囲の積 (MT×C) が筋横断面積指標として適切であることが示された. 若齢者では, MVC時のMT×Cと筋力との関係は, 安静時のそれと同等あるいはそれ以上に密接であった. 一方, 中高齢者では, MVC時のMT×Cと筋力との関係は, 安静時のそれよりも密接であった. このように年齢間で違いがみられた要因として, 中高齢男性の筋が若齢男性のそれよりも変形しやすいことが考えられた. 以上の結果から, MVC時のMT×Cは安静時のものよりも骨格筋の力発揮特性を広い年齢層にわたり正確に表し得る指標となると結論付けられた.

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