視覚障害者に対する触覚サインとして, 消費生活製品の操作終了部に付す凸バー (凸状の横バー) と操作開始部に付す凸点 (凸状の丸い点) が国内外で規格化されているが, 今後, 規格の改正や新たな関連規格の制定にあたり, これらの推奨寸法に関する豊富な基礎データが必要である. 特に, 触知覚特性に重要な影響を及ぼす利用者の年齢や触知による情報入手経験の観点から, 視覚障障害者が凸バーと凸点を指先で識別できる寸法の条件が網羅的に明らかではない. そこで本研究では, 日常生活を触知に依存していない若年及び高齢の晴眼者と, 長年に渡り触覚を日々活用してきた若年及び高齢の視覚障害者を対象に, 凸バーと凸点の寸法がそれらの識別容易性に及ぼす影響を評価することを目的とした. 参加者に対して, 寸法を厳密に統制した凸バーと凸点の刺激を人差し指で識別させる実験を行った. その結果, 凸バーは, 年齢及び触知経験に関わらず, 長辺と短辺の差が大きいほど早く正確に識別できた. 特に, 若年晴眼者, 若年視覚障害者, 高齢視覚障害者は凸バーの長辺と短辺の差が2.0 [mm] 以上, 晴眼高齢者は3.0 [mm] 以上あれば正確に識別できることが明らかとなった. また, 年齢に関わらず, 視覚障害者はその差が3.0 [mm] 以上, 晴眼者は4.0 [mm] の時に, より早く識別できた. 一方, 凸点は, 年齢及び触知経験に関わらず, 直径が小さく, エッジの曲率半径が大きいほど, 早く正確に識別できることがわかった.
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