バイオメカニズム
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22 巻
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
  • 西田 直子
    2014 年 22 巻 p. i-ii
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー
  • 八村 広三郎
    2014 年 22 巻 p. 1-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本稿では, 舞踊や祭などの無形文化遺産のデジタル・アーカイブに関する話題について述べる. 無形文化財は人間の身体動作が大きな要素になる. 身体動作の計測には, おもに人体の関節部分の動きや関節角度を計測するモーションキャプチャシステムが利用される. 舞踊の身体動作の計測には, 光学式モーションキャプチャシステムが広く利用されている. 一方で, 舞踊で特に重要な, 衣装などをつけた踊り手の表情などを含む 「見え」 を, 3次元情報として記録するシステムも開発されている. ここでは, これらのシステムについて紹介した後, これらを, 舞踊を中心とする無形文化財のアーカイブに利用することの意義および課題などについてふれる. さらに, モーションキャプチャにより計測した身体動作データを対象にして行うデータ解析やデータ検索の手法について述べる. 最後に, 世界遺産にも登録された大規模な祭りである, 京都祇園祭の山鉾巡行という文化遺産を対象にしたデジタル・アーカイブの試みについても紹介する.

1部 身体運動の計測・モデリング
  • 廣川 俊二, 福永 道彦
    2014 年 22 巻 p. 15-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    和式生活では様々な座位動作が行われるが, これらの動作時の下肢関節のキネマティクスを体系的に計測した研究例は少ない. 本研究では, 健常成人男子10名, 同女子10名を対象に, 三次元磁気式位置計測センサーを用いて, 正座を初め, 様々な座位動作中の股関節と膝関節の屈曲角の時間変化を計測し, 各動作中の関節角の時間変化パターンの特徴や, 最大屈曲角, 股関節と膝関節の屈曲角変化の相関関係などを求めた. その結果, 股関節の最大屈曲角は立位靴下着脱での157.5±20.4°, 膝関節のそれは上肢の介助なし, 片脚から踏み出して正座を行う際の157.1±10.0°であること, 座位状態よりも座位動作や起立動作の過程で最大屈曲角を示す動作が多いこと, 股関節と膝関節の屈曲角変化には強い相関性が認められることなどの点を明らかにした.

  • 平野 剛, 那須 大毅, 小幡 哲史, 木下 博
    2014 年 22 巻 p. 27-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    ホルン演奏時の表情筋の制御様式と熟達度によるその違いを調べるために2つの実験を行った. 第1実験では熟達奏者にさまざまな音を演奏させ, 音が鳴る直前と音が鳴っているときの表情筋の活動と唇周りの皮膚表面の動きを計測した. その結果, 音が鳴る直前の活動強度と音が鳴っているときの活動強度の間に差はみられなかった. また計測されたほとんどの筋で演奏する音量が大きいほど, また演奏する音の高さが高いほど筋活動量は高くなった. 一方で口唇周りの皮膚表面の動きは, 演奏する音量, 音の高さにかかわらず一定だった. この結果から, 熟達ホルン奏者は意図した音に応じて, 音が鳴る直前から広範囲の表情筋の活動を共同的に制御し, 振動する唇の張力や質量を変化させていることが示唆された. 第2実験では熟達奏者と未熟達奏者の2群に分けて, 表情筋の活動の違いを検討した. その結果, 連続しない1つの音を演奏する課題では活動量に違いはみられないが, 異なる音の高さを連続して演奏する課題では, 上唇に付着する筋に活動量の違いが見られた. 上唇に付着する筋の活動は, 複雑な演奏を行うときに重要な役割を果たし, その制御には長期的な訓練を要することが示唆された.

  • 小幡 哲史, 木下 博
    2014 年 22 巻 p. 37-47
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    3軸小型力覚センサーを指板に埋め込んだ実験用バイオリンを用いて, 熟練奏者と初心者を対象にビブラート音なしでの単音演奏とビブラート音演奏での指板力を計測した. また, 一部の熟練奏者ではそれに関わる左手の筋活動も同時に計測した. 熟練奏者の単音演奏では, 弦を押さえる瞬間に, 指板力の鋭い立ち上がりが見られ, 遅いテンポではその後力が減少した状態で保たれるが, 速いテンポではパルス波形のみが見られた. ピークの力は1, 2 [Hz] では4.5 [N] を超える程であったが, それより速いテンポでは力が減少した. 一方で, 手内および前腕の筋活動はテンポが速くなるにつれて増大した. 初心者は熟練者に比べ, テンポや指の違いに関わらず, 力発揮が弱かった. ビブラート音演奏では, 熟練者は弦を固定するために一定の垂直方向への力を加えた上で, 弦長を変化させるための長軸方向への力を加えていた. 本研究は, 実際の演奏における指板力の測定を実現し, 得られた指板力情報とテンポや指, ビブラート音や経験の差について, また関連する筋活動について議論した.

  • 三輪 洋靖, 持丸 正明, 野場 重都, 舛田 晋
    2014 年 22 巻 p. 49-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    嚥下感覚は 「食」 を楽しむ要素の1つと考えられているが, 嚥下感覚は主観的要素が強く, 工学的検証は不十分であった. そこで, 本研究では嚥下音や筋活動計測から嚥下活動と嚥下感覚の関係をモデル化することを目的とした. 本稿では, 嚥下試料として炭酸水を用い, 炭酸強度を変化させながら, 嚥下中の嚥下音および筋電を計測することで, 炭酸強度と嚥下活動の関係を解析した. その結果, 炭酸強度によって, 嚥下音ハイパワー部面積, 嚥下音発生時間と筋電の活動時間に統計的有意差が確認された. さらに, 刺激強度, 嚥下方法, 嚥下感覚のモデル化を行い, 炭酸強度に対して嚥下感覚は上に凸の特性を持つことが示唆された.

  • 阿部 匡樹
    2014 年 22 巻 p. 59-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    一つの標的に対する到達運動の解が無限にあるように, 目標志向性課題における運動制御は様々な階層において冗長性を有する. 近年, 我々の運動制御系はパフォーマンスのばらつきを最小限度に抑えるためにむしろこの冗長性を利用していることが示唆されてきたが, この評価は多分にその解析法に依存する. 本研究では運動課題遂行変数の幾何学的・時系列的パターン抽出を題材とし, 冗長性に対するヒトの運動制御の特徴ならびにその評価法を議論する.

  • 那須 大毅, 松尾 知之
    2014 年 22 巻 p. 69-78
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では, ダーツ投げ動作の鉛直面におけるリリース変数 (リリース時のダーツ位置, 投射速度, 投射角) に着目し, 1) 各リリース変数のばらつきの大きさ, 2) リリース変数間の相互補完構造の度合いに関して, 熟練者 (8名) と初心者 (8名) の違いについて検討した. 各被験者は60投のダーツ投げ動作を実施し, ダーツおよび人差し指の動作を7台の赤外線カメラ (480Hz) で撮影, 座標データを取得した. 分析の結果, パフォーマンス結果のばらつきが小さかった熟練者は初心者と比べて, 1) 全てのリリース変数のばらつきが小さく, 2) リリース変数間の相補構造の度合いも大きかった. ただし一部の熟練者は, 影響が最も強い投射角のばらつきを非常に小さくすることで, パフォーマンス結果のばらつきを小さくしていた.

2部 運動・感覚機能
  • 速水 達也, 金子 文成, 横井 孝志, 木塚 朝博
    2014 年 22 巻 p. 81-91
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では, 体性感覚入力 (運動感覚) に基づく運動調節機能を体性感覚–運動連関機能と定義し, 体性感覚–運動連関機能を測定評価するための運動課題 (運動平衡保持課題) を実施した. 運動課題の実施には, 作成したハプティックデバイスを使用し, 装置から加わる力との釣り合いを保ち, 身体位置の変化がどの程度生じたかを定量化した. これまでの報告に加えて, 装置から加わる力が漸増する局面と漸減する局面とで, 測定結果がどのように異なるかを調べた. さらに, 対象者を運動歴の有無に応じて2群に分類し, 運動歴の差異による影響についても検討した. その結果, 漸減する局面の方が漸増する局面に比べて課題の難易度が高く, 運動歴による影響も漸減局面において顕著であることが示された. また, 運動平衡保持課題を練習方法として用い, 両局面の測定結果がどの程度改善されるかについて調べ, 練習の前後で感覚機能と運動機能とがどのように変化するかについても検証した. その結果, 両局面ともに練習期間前後で有意に改善し, 感覚機能と運動機能も向上することが明らかとなった. これらの結果から, ハプティックデバイスを使用して実施する運動平衡保持課題は, 体性感覚-運動連関機能の測定評価方法として妥当であり, 感覚機能と運動機能の向上を目的とした練習方法としても有用である可能性が考えられた.

  • 林 豊彦, 角田 卓哉, 石川 真伍, 遁所 直樹
    2014 年 22 巻 p. 93-103
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    重度肢体不自由者にとってパソコンは, 生き生きとしたコミュニケーションや社会参加の確保にとって必要かつ不可欠な機器である. 彼らのコンピュータは, 単純なオンオフ・スイッチと直交移動スキャン・ソフトウェアからなる特殊なポインタを必要とする. しかし, この方法では, はじめにいくつかのパラメータを試行錯誤的に決定しなければならない. そこで本研究では, 個々のユーザの反応時間を測定して, パラメータ値を設定する手法を提案した. さらに, その有効性について, 健常者と肢体不自由者を用いて実験的に検証した. その結果, 得られた最適設定では, 平均的に操作回数を増やすことなく, 操作時間を短縮できることがわかった.

  • 豊田 航, 土井 幸輝, 藤本 浩志
    2014 年 22 巻 p. 105-117
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    視覚障害者に対する触覚サインとして, 消費生活製品の操作終了部に付す凸バー (凸状の横バー) と操作開始部に付す凸点 (凸状の丸い点) が国内外で規格化されているが, 今後, 規格の改正や新たな関連規格の制定にあたり, これらの推奨寸法に関する豊富な基礎データが必要である. 特に, 触知覚特性に重要な影響を及ぼす利用者の年齢や触知による情報入手経験の観点から, 視覚障障害者が凸バーと凸点を指先で識別できる寸法の条件が網羅的に明らかではない. そこで本研究では, 日常生活を触知に依存していない若年及び高齢の晴眼者と, 長年に渡り触覚を日々活用してきた若年及び高齢の視覚障害者を対象に, 凸バーと凸点の寸法がそれらの識別容易性に及ぼす影響を評価することを目的とした. 参加者に対して, 寸法を厳密に統制した凸バーと凸点の刺激を人差し指で識別させる実験を行った. その結果, 凸バーは, 年齢及び触知経験に関わらず, 長辺と短辺の差が大きいほど早く正確に識別できた. 特に, 若年晴眼者, 若年視覚障害者, 高齢視覚障害者は凸バーの長辺と短辺の差が2.0 [mm] 以上, 晴眼高齢者は3.0 [mm] 以上あれば正確に識別できることが明らかとなった. また, 年齢に関わらず, 視覚障害者はその差が3.0 [mm] 以上, 晴眼者は4.0 [mm] の時に, より早く識別できた. 一方, 凸点は, 年齢及び触知経験に関わらず, 直径が小さく, エッジの曲率半径が大きいほど, 早く正確に識別できることがわかった.

  • 西村 崇宏, 土井 幸輝, 藤本 浩志
    2014 年 22 巻 p. 119-128
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では, タッチパネル携帯端末の操作性向上を目指し, その操作方法がポインティング特性に及ぼす影響を評価することを目的として実験を行った. さらに, 得られたポインティング特性の結果に基づき, タッチ感知領域の設計手法について実験的検討を行った. その結果, ディスプレイ上での操作位置や操作方法がポインティング位置の分布傾向や操作性に影響を与えることが明らかとなった. また, 本実験により得られたポインティング位置の分布傾向に基づき, 楕円によるタッチ感知領域の検討とその評価を行った. その結果, 片手操作でみられる特定の方向にポインティング位置の分布が偏るような特徴をもつターゲットに対して, 正方形による設計手法よりも効率的にタッチ感知領域を設計できる可能性が示唆された.

  • 土井 幸輝, 豊田 航, 藤本 浩志
    2014 年 22 巻 p. 129-139
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    点字の触読経験の有無によらず利用できる浮き出し文字が, アクセシブルデザインの理念に基づいてエレベータやテレビのリモコンのボタンに採用されつつある. しかし, 浮き出し文字の触知覚特性に関する知見は十分ではない. そこで本研究では, アラビア数字の浮き出し文字のサイズが識別容易性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として, 浮き出し文字の識別実験を行った. その結果, 浮き出し文字のサイズとその識別容易性の関係が明らかになった. 本研究によって得られた浮き出し文字の触知覚特性に関するデータは, 国内外の標準規格の制定及び改訂の際に有用な知見となる.

3部 スポーツの計測・評価
  • 木下 まどか, 藤井 範久
    2014 年 22 巻 p. 143-154
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, テコンドーの前回し蹴りを三次元動作分析することで, テコンドー特有の 「速い」 かつ 「早い」 蹴り動作について知見を得ることであった. そこで, 蹴り脚のキックスピードに対する下胴および蹴り脚各関節の運動におけるキネマティクス的貢献を算出した. その結果, インパクト時の膝関節伸展動作による貢献はキックスピードの約60%を占めていた. 上位群は下胴左回旋, 股関節屈曲角速度を適切なタイミングで大きくすることにより, 膝関節伸展に作用する膝関節力を生成していた. したがって, 膝関節伸展動作による貢献を増加させ, 「速い」 かつ 「早い」 蹴り動作を行うために, 下胴および股関節の動きが重要であると推察された.

  • 村田 宗紀, 藤井 範久
    2014 年 22 巻 p. 155-166
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    硬式テニスにおいて, サーバーは様々な回転や速度のサーブを打球することで相手に球種を予測されにくくする. これまでに球種の打ち分け技術に関するkinematics的分析から, 球種間のスウィング方向の差は上肢によるスウィング操作ではなく, 主にインパクト時の上胴の姿勢の差に起因することが報告されている. そこで, 本研究では上胴の姿勢を決定する主要因であろう下胴と下肢のkineticsについて検討することを目的とした. その結果, 右利き選手の場合, 左脚は主にヘッドスピード獲得のための力学的エネルギーを発生し, 右脚は力学的エネルギーを発生するだけでなく, 回転を打ち分けるために胴部の姿勢を調整する役割も担っていることが明らかとなった.

  • 岩見 雅人, 田中 秀幸, 木塚 朝博
    2014 年 22 巻 p. 167-176
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    スポーツ場面等において, 熟練者は状況の変化に応じて動作を円滑に切り換えることが可能であるが, 未熟練者ではギクシャクした動作となってしまう. そこで本研究では, 速度変化を伴うボールバウンシング課題時の上肢筋活動と円滑性を, 熟練度の差異から比較検討することを目的とした. 対象者はバスケットボールの熟練者と未熟練者とした. 実験の結果, 熟練者群は未熟練者群より上肢筋の同時収縮量, および円滑性の指標である上肢関節角躍度のZero-crossing数が低値を示し, より滑らかな動作切り換えが可能であったことが捉えられた. これらの結果から, 熟練者群は, より同時収縮が少なく 「緩衝型」 の円滑なボールバウンシングを行なっており, 一方で未熟練者群は関節を固める 「衝突型」 の動作戦略を用いていたことが示唆された.

  • 大田 穂, 木塚 朝博
    2014 年 22 巻 p. 177-187
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    ソフトボール守備場面は捕送球と状況判断のデュアルタスクと捉えられ, その状況判断は視覚情報獲得の方略の影響を受けると推察される. 本研究は, ソフトボール上級群と中級群を対象に, デュアルタスク時の守備技能と, 視覚情報獲得の方略である状況判断時の頭部回転を比較した. その結果, 守備技能では, 各シングルタスクにおいて両群の有意な差は認められなかったが, デュアルタスクにおいて上級群が中級群よりも有意に優れた. また, 状況判断時の頭部回転において, 通常条件では上級群が中級群よりも有意に小さいが, 視野制限条件では両群に差はみられなかった. 本研究の結果, 頭部回転の大きさの違いが, 守備技能における差の要因の1つであることが示された.

  • 金原 秀行, 岩本 正実
    2014 年 22 巻 p. 189-199
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    アメフトは, 軽度の外傷性脳損傷 (MTBI) が最も多く発生する競技といわれている. 我々は頭部の角加速度の大きさとその持続時間に基づいた脳傷害評価指標RIC36とPRHIC36を提案している. 本研究ではアメフト衝撃時の頭部の加速度データを取得し, スポーツにおけるMTBIを対象とした脳傷害評価指標の妥当性と有用性について示す. 頭部の衝撃挙動についてよく検証された人体有限要素 (FE) モデルを用いて, アメフト衝撃時の頭部挙動を再現し, 頭蓋内の脳ひずみを予測した. 頭部挙動と脳ひずみの関係を調査した結果, RIC36とPRHIC36は脳ひずみから推定される脳損傷率と強い相関を示した.

4部 ロボティクス・機器開発
  • 榎堀 優, 伊藤 陽脩, 平山 高嗣, 間瀬 健二
    2014 年 22 巻 p. 203-211
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    ウェアラブルセンサによる日常生活中の継続的肺気量推定は, 肺疾患の早期発見に向けて重要である. 衣類型ウェアラブルセンサの多くは肺気量を上体周囲長の変動から推定する. しかし, 利用者に負担をかけない単一姿勢によるキャリブレーションを想定すると, 姿勢変動による周囲長の変化に影響されて推定精度が低下する. そこで各姿勢時の上体周囲長をキャリブレーション姿勢時の上体周囲長相当値へ補正することによる推定精度の向上手法を検討した. 光学式モーションキャプチャを用いて, 立位時と座位, 立位前屈時 (30度, 60度, 90度) の上体周囲長変動を分析した結果, 立位前屈の補正に対して線形補正が有効である事が分かった. 4名の被験者において, 姿勢変動による推定誤差の増加分0.30±0.12Lが, 総当たりで決定した最適補正値で0.03±0.05L, 各姿勢時の平均上体周囲長から導出した補正値で0.23±0.09Lへ向上した.

  • 安藤 健, 武田 真季, 山田 憲嗣, 大野 ゆう子, 本田 幸夫
    2014 年 22 巻 p. 213-224
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    近年, 心身の疲労を和らげるマッサージに注目が集まる中, 特にヘッドケアの需要が高まっている. これまでに人の指を模した接触子で頭皮・頭髪に対してマッサージ様のこすり洗い (接触摺動洗浄) をするヘッドケアロボットを開発している. 本稿ではまず官能評価 (階層的クラスタリング) と生理学評価 (ATPによる洗浄性評価と自律神経系計測による快適性評価) を組み合わせることで洗浄領域拡大と快適性の更なる向上という試作機の課題を抽出した. さらに, 再度官能評価と生理学評価を行い, 5節リンク機構やコンプライアンス制御などを用いることで基本機能である洗浄性, 付加機能である快適性が十分な性能で実現できていることを示した.

  • 田川 善彦, 新田 益大, 増山 智之, 松瀬 博夫, 志波 直人
    2014 年 22 巻 p. 225-236
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    微小重力下にある国際宇宙ステーション (International Space Station : ISS) では生体の筋骨格系が減弱する. このため種々の対策が実施されているが, 大掛かりな設備となっている. そこで簡便で効果的な訓練法が模索され, 我々のグループではヒトへの電気刺激によるハイブリッドトレーニング (hybrid training : HT) 法を提案し, 地上や微小重力模擬下で効果を検証してきた. 本論文ではHTのISS 内実施に伴い想定される以下の事項を取り上げた. まずシステムの電気刺激条件と含水性刺激電極, 刺激装置と人体通電時の電磁適合性 (electro-magnetic compatibility : EMC) について検討した. 次にHTと人体浮遊時の身体揺動, 日本実験モジュール (Japanese Experiment Module : JEM) に上体を固定した時のISSへの振動的加速度の影響について検討した.

  • 中島 康貴, 渡邉 峰生, 井上 淳, 川村 和也, 藤江 正克
    2014 年 22 巻 p. 237-248
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    片麻痺患者の歩行訓練では, 理学療法士 (PT) が患者の骨盤動作を逸脱しないように誘導するハンドリングという手法が行われている. ハンドリングは麻痺の症状や個人差に応じたアシストが可能である一方, PTの身体的負担が大きいため, 長時間正確な動作を繰り返す量的な訓練は困難とされている. 本研究では, ロボットが持つ精確性とPTが持つ患者への適応性を両立するために, PTのハンドリングの力学的特性を定量的に把握し, その特性を規範とした歩行訓練ロボットの開発を目的とする. 本稿では, 片麻痺患者のハンドリング計測の実験結果から, インピーダンス特性を考慮したハンドリングモデルを構築し, そのモデルの精度検証およびモデルに基づいた制御を実装したロボットによる有効性を評価した.

  • 中山 淳, 堀木 充, 小川 和徳, 岡 久雄, 道免 和久
    2014 年 22 巻 p. 249-258
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    MP関節伸展位拘縮の主要因は側副靭帯の短縮であると言われている. 著者らは, これまで側副靭帯を牽引することができる回転型動的牽引スプリント (Rotational-Type Dynamic Traction Splint; RDT) を考案した. しかし, 作製手順が複雑である等の問題点があったので, 脱着が容易な人工筋を用いた新しい屈曲型動的牽引スプリント (Pneumatic-Type Dynamic Traction and flexion splint; DTF) を新たに開発した. そして, 筋活動, 疼痛およびカフによる血流阻害を測定し, CTを用いて関節裂隙の評価を行った. その結果, DTFはRDTより生体へ与える影響は低く, かつMP関節全体が牽引され, 臨床的有用性が高いスプリントを開発することができた.

  • 中西 義孝, 嶋津 賢了, 岡 裕一, 松本 保朗
    2014 年 22 巻 p. 259-267
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

    近年, 再生可能エネルギーの利用が促進されている. しかし, 発電効率や環境への悪影響が懸念される事例も散見される. 本報告では, 河川流のエネルギーを周辺環境への影響を僅少にしつつ, かつ, 高効率に回収するための仕組みを提案する. この過程で生体関節の潤滑システムに学び, 低摩擦・低環境負荷を飛躍的に高めた防水システム (Bio-Star) の開発に成功した. この防水システムは従来のオイルシール部品のシールリップに相当する部分の材料に親水性多孔質材料 (PVF) を導入し, 非ニュートン性水溶液 (PEG) にて潤滑する構造となっている. 実験水槽および河川流での試験結果は, この防水システムが有効に機能することを示していた.

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