目的:
我が国では2008年より経済連携協定(EPA)を通じインドネシア、フィリピン、ベトナムより外国人看護師・介護福祉士候補者を受け入れている。EPA制度や日本での就労についてのベトナム人看護学生の意識を知り、外国人医療従事者に対する教育支援の資料とする。
対象:
ベトナムのThai Binh Medical College(タイビン医療短期大学)の看護学科3年生(最高学年)478名(男性51名、女性427名)。
倫理的配慮:NPO法人外国人看護師・介護福祉士教育支援組織の倫理委員会の承認を得た(承2014001)。
方法:
ベトナム語に翻訳した調査票を日本側が作成した。調査はタイビン医療短期大学側が実施し(2016年1月)、回答はexcelファイルに入力したものを日本側へメール送付された。データの解析は日本側が実施した。ベトナム語での記述式回答は、日本で日本語に翻訳した。
統計処理:データの統計解析はχ2検定を用い、pが0.05未満を有意差ありとした。
結果:
調査対象者478名のうち397名(男性42名、女性355名)から回答を得た(回答率83.1%)。
1. 日本語学習の経験:「あり」、42名(10.6%)
2. 日本の文化や技術への興味:「あり」322名(81.9%)
3. 日本の医療や看護についての学習経験:「あり」17名(4.3%)
4. EPAについて:「知っている」217名(54.6%)
5. EPA候補者になりたいか:「はい」153名(男性9名、女性144名)(38.5%)、「いいえ」101名(25.4%)、「わからない」143名(36.0%)。「はい」の回答者は女性が男性より有意に多かった。「はい」の回答者は「いいえ」の回答者に比し、③日本文化や技術への興味が有意に高かったが、④日本の医療や看護についての学習経験では有意差を認めなかった。
6. EPA候補者になりたい理由(複数回答):「日本では働きたいから」77名、「日本の医療技術を学びたいから」62名、「日本文化に触れたい」56名、「給料」44名。自由記載として「就労環境・住環境がよい」、「もっと勉強したい」など。
7. EPA候補者になりたい学生への質問
1. 日本での就労希望年限:「3年以内」25名(16.3%)、「3~5年」44名(28.8%)、「5~10年」14名9.2%)、「永住したい」12名(7.8%)、未記入58名(37.9%)
2. 日本で働くについての不安は何か(複数回答):「日本語」71名、「文化・風習の違い」44名、食事13名
3. 日本で働く場合、希望すること(複数回答):「生活や仕事について相談できる場所が欲しい」68名、「ベトナム人との交流の場が欲しい」43名、自由記載として「自分が希望する給料であること」、「お金を稼ぎたい」、「日越文化交流をしたい」など
考察:
タイビン医療短期大学はハノイ近郊の地方大学である。第1陣ベトナム人EPA看護師候補者1名の出身大学であるので調査先として選択した。2016年1月に大学を訪問し、卒業生の国内での就職先が不足しているため海外にも就労先を求めている、日本での就労についてはEPA制度があるが、募集人数が限られているので他に就労の可能性が欲しい、日本語を第2外国語として学んでいる学生が合計70名ほどいるとの情報を得た。今回の調査結果によれば、学生の日本文化や技術に対する興味は高く(81.1%)、EPAの認知度も半数を超え、EPA候補者になりたい者も多く(38.5%)、学生の日本就労への関心の高さが明らかになった。
EPA候補者には看護師候補者と介護福祉士候補者がある。学生が応募条件の違いをどの程度認識しているかについては質問していないので明らかでない。看護学においても日本とベトナムでは多少の違いがあるが、ベトナムでは介護は家族が担うものとされ日本のような介護専門職は存在しない。そのため学生は介護福祉士の業務などを知らないで応募する可能性がある。本調査においてもほとんどの学生が日本の医療や介護を学んだことがないと答えている。
今後介護技能実習制度が実現すればさらに多くの外国人の受け入れが予測される。受け入れ側である日本の病院や施設は、来日するベトナム人の背景を理解し適切な対処をする努力が必要であろう。また、ベトナムの大学には日本の看護や介護についての基礎知識が得られる講義の提供が求められる。当法人でも支援を計画している。
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