バイオフィリア リハビリテーション学会研究大会予稿集
Online ISSN : 1884-8699
ISSN-L : 1884-8672
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挨拶・祝辞
  • 山下 和彦
    原稿種別: その他
    p. 1-
    発行日: 2021/02/11
    公開日: 2021/05/17
    会議録・要旨集 フリー

     このたびは,第24回バイオフィリアリハビリテーション学会~リハビリ医療介入方法多様化への提案~にご参加いただきありがとうございます.

     2020年現在,日本は高齢化率28.7%,後期高齢化率(75歳以上の人口割合)は14.9%です.2042年には高齢者人口(3,935万人)が最大となります.ここで問題となるのは,高齢化率だけではありません.都心部では2045年までは人口が増加しますが,地方の多くは40~60%以上減少することが予測されています.つまり,人口密集率の高い都心部では,糖尿病,関節症,認知症などの様々な状態を持つ独居などの単身高齢者を対象とするリハビリが求められています.さらには,自宅やデイサービスセンタ,集会所などで楽しく実践でき,遠隔で実践度や状態をモニタリングすることが期待されます.一方,地方では人口減少が大きいのは若い世代となります.そのため,介護人材の減少が課題となるだけではなく,近隣のスーパーなどの施設も減少し,生活自体が孤立化していくと予測できます.

     リハビリの方法は大きな転換期を迎えています.従来の他動運動を短い時間のみリハビリ室で行う方法のみではなく,“遠隔”,“定量的”,“自分だけでも簡単に実施できる”リハビリに国内外で注目が集まっています.そのため,本大会のテーマは「リハビリ医療介入方法多様化への提案」とし,様々な観点から理学療法士などのリハビリの専門家,ICTを推進する工学者,支援者などを交えディスカッションができればと期待いたしております.そして,本学会で注目している創動運動はMotivative Exerciseとも呼ばれ,リハビリ現場で実証データが積み重ねられています.病院だけではなく,通所リハビリの施設でも活用が広がりつつあり,新しい報告が楽しみな状況でもあります.

     これからの社会のニーズに合ったリハビリを提供し,エビデンスを構築するために,様々な職種の方にご参加いただき,活発な議論が起こることを期待いたしております.

  • 田中 敏幸
    原稿種別: その他
    p. 2-
    発行日: 2021/02/11
    公開日: 2021/05/17
    会議録・要旨集 フリー

     2021年に開催される第24回大会は了徳寺大学健康科学部の山下和彦教授を大会長として迎え、横浜市の神奈川県民センターで開催することとなりました。山下教授の専門分野は、医療福祉工学・リハビリテーション科学で、足部骨格構造計測や感覚機能改善に関して顕著な成果を上げています。高齢化社会となった近年では、特にコロナ禍の現在では、医師一人あたりの負担は日に日に増えているように思います。医師の負担軽減のためには、機能も含めた人体の計測の研究が必要不可欠であると考えています。高齢化社会では、リハビリ科の医師、理学療法士、大学が一体となって、新しいリハビリのあり方を考えていくことが重要です。

     リハビリの分野ではすでに、一人の患者に対して理学療法士が1対1で対応する現在のシステムに限界が生じています。今後の高齢化社会では、一人の理学療法士が複数の患者に対応する新しいリハビリシステムが必要になります。患者一人ひとりについて脳の損傷部位が異なり、異なるリハビリが必要となるので、それぞれの患者に対して利用する器具を変えていく必要があります。また、それらの器具をどのように用いることが一番効果的なリハビリなのかを考えることも必要です。新医療システムの提案・器具の開発・リハビリのシステム設計、これらを有機的に結びつけることによって、次世代のリハビリシステムが完成していくと考えています。山下教授の研究分野は、まさにこれからのリハビリテーション医学の中心になると思われます。

     これまでにバイオフィリアリハビリテーション学会が行ってきた活動はすでに世界でも認められ、13th ISPRM(International Society of Physical and Rehabilitation Medicine World Congress)においては招待講演が行われました。私たちの活動は、今後大きなイノベーションを起こしていく機運が高まっています。コロナ禍での大会ではありますが、研究発表と交流を通じて、第24回大会がリハビリの分野での新たな展開を起こす機会になれば幸いです。

  • 滝沢 茂男
    原稿種別: その他
    p. 3-
    発行日: 2021/02/11
    公開日: 2021/05/17
    会議録・要旨集 フリー

     第24回バイオフィリアリハビリテーション学会大会の開催に当たり、国際学会理事長として、国際学会から心からのお祝いを申し上げます。

     今日世界は人口転換の時代を迎え、人類にとっての大きな転機を迎えようとしています。これまでの暮らしぶりでは、人々の幸せを確立することが出来ない時代になっています。

    我々の学会はリハビリ医学の「障害の受容」と「インペアメント」を死語にするべく研究活動を続けてきました。学会は年々充実し、2016年は厚生労働省大臣官房国際課のご協力の下世界保健機構(WHO)の参加があり、2020年は11月にポーランド科学アカデミー(PAN)と日本学術振興会(JSPS)の両選抜によるジョイントセミナーを開催しました。

     2019年国際学会は岡山大学で「創動運動実施に関する国際標準化の準備」を主題に2019年6月開催され、ワークショップ「バイオフィリア」では、 「リハビリテーション医学の介入技術の多様化を目的とする、創動運動実施に関する国際標準化の準備」を行いました。

    またその他、2019年の特筆する事柄として国際リハビリテーション医学会世界会議神戸大会(ISPRM2019)において、「LONG Workshop: Super aged community: role for community based and primary rehabilitation care」が開催され、我々の多年の研究を世界に向け招待講演としてお示しすることができました。

     この開催は、Prof. Alessandro Giustini, Ex President of Italian NeuroRehabilitation Societyのリーダーシップの下、Prof. Walter Frontera国際リハビリテーション医学会(ISPRM)理事長のご参加と講演を得て実施しました。

     我々の活動は、人類の普遍の価値の創造に関連しています。自由・平等・博愛という普遍の価値は18世紀のフランス革命から生まれました。この概念は、ナポレオンの勝利と共に広がり、敗北により、自由・平等・博愛の概念は世界の規範となり、民主主義の基礎なったと、私は考えています。

基調講演
  • 山下 和彦
    原稿種別: 論説
    p. 5-
    発行日: 2021/02/11
    公開日: 2021/05/17
    会議録・要旨集 フリー

    1.少子高齢化と医療提供体制の多様化

     超高齢化に加えて,少子化が進んでいる.どのような環境下であっても,日常生活の維持が重要であるが,独居,老老夫婦世帯などの増加により様々な課題が存在する.要介護要因の上位には,認知症,高齢による衰弱,転倒骨折,関節疾患が挙げられる.これらはすべて歩行機能に関連する項目であり,歩けることや移動能力の確保が生活の基礎となることが改めて認識される.

     高齢化の進行と慢性疾患の増加は心疾患,脳血管疾患の増加を引き起こす.これらの疾患の急性期の治療ののちにはリハビリ期間がある.リハビリの医療制度上の課題もあるが,多くの患者を少ない理学療法士が対応し,時間も決められていることからそれぞれの対象者の特性にあった支援を十分に行うことは難しい.さらに,新型コロナ(Covid-19)の流行により,密接なリハビリの提供は益々難しくなり,リハビリの効果が低下,および継続しにくいことから日常生活機能の低下が危惧される.

     一方,AIやセンサの発達により,社会はIoTやロボット,遠隔などがキーワードとなっている.つまり,一様に病院のリハビリ室で理学療法士の手によって職人的に行われていたリハビリも重要であるが,地域で様々な環境下で様々な取り組みが行われて,その情報が適切に集約され,評価,支援につながれば,新しいリハビリのあり方を示すことにつながり,これからの社会情勢にマッチする医療提供体制を構築できると考えられる.

  • 田中 敏幸
    原稿種別: 論説
    p. 7-
    発行日: 2021/02/11
    公開日: 2021/05/17
    会議録・要旨集 フリー

    近年の高齢化により脳卒中患者数が増加を続けており,一人の理学療法士が一人の患者に対してリハビリを行うという従来のリハビリシステムでは限界がある.そこで,一人の理学療法士が複数の患者を同時に対応できるシステムが検討されてきた.その一つが滝沢メソッド(Takizawa Method)と呼ばれるものである.滝沢メソッドは,リハビリ患者の多くが片麻痺患者であることに注目し,患者の健側の機能を利用して患側のリハビリを行うことを考えたものである.理学療法士と同程度の動作を与えることはできないが、患者の健側が理学療法士のサポートをすることができる.理学療法士が行う他動運動に対して、滝沢メソッドのリハビリは創動運動と呼ばれている.最近では,創動運動という表現も定着してきているように思われる.

    最近多く提案されているリハビリテーションは,ロボットや器具を身体に装着してリハビリを行うというものが多い.ロボットや装着器具の作製に必要な技術が飛躍的に発展していることで,そのようなリハビリシステムの提案が多くなってきているように思われる.ロボットや装着器具を用いたリハビリにおいても,患者がロボットを利用する場合と理学療法士がロボットを利用する場合の2種類がある.患者がロボットや装置を使う場合,工場などで用いる装置よりもさらに安全でミスのない技術が要求される.ロボットや装着器具は,患者の動かない部分を強制するためのものであるが,一つの欠点として患者がロボットや装着器具の力に頼ってしまい,結果としてリハビリにならない可能性がある.理学療法士がロボットや装着器具を利用する場合には,理学療法士の身体の補助が目的となる.この方法では理学療法士のリハビリ作業の助けにはなるが,理学療法士は一人の患者に対応することになる.ロボットや装着器具を利用したリハビリは,高額な費用がかかったり,従来のシステムからの脱却ができなかったりという問題点を抱えている.滝沢メソッドのソリューションは,理学療法士の不足や高齢化社会における脳卒中患者の増加などに対応できることから,世界的にも期待が集まっている.

講演
  • 山下 知子, 山下 和彦, 滝沢 茂男
    原稿種別: 講演予稿
    p. 8-
    発行日: 2021/02/11
    公開日: 2021/05/17
    会議録・要旨集 フリー

    地域には元気な高齢者から虚弱になりつつある高齢者,介護を必要としている状態などの様々な高齢者が存在する.これまでに医工学と医療情報の観点から地域の中で「歩行」,「足部」,「高齢者」などをキーワードとして研究を進めてきた.その中で,足部のケアが前向きな活動の継続に重要であることを明らかにしてきた.この成果を,脳血管疾患などの後遺症による麻痺患者のリハビリ効果の向上に活かしていきたいと考える.

  • 個人の身体能力評価とフィードバックを可能にする
    島貫 泰斗, 滝沢 茂男, 田中 敏幸
    原稿種別: 講演予稿
    p. 9-
    発行日: 2021/02/11
    公開日: 2021/05/17
    会議録・要旨集 フリー

    近年、高齢化社会を迎えた本国では、介護を必要とする人が急速に増えている。ただ、介護を受け入れる体制は整っておらず、人材は不足している。そんな中、介護サービスを持続的に提供していくためには、各々の介護の必要度合いに応じて無駄なく提供する必要がある。このためには、各々の介護の必要度合いを測る指標が必要で、現在は介護度が主に用いられている。しかし、現在の介護度の判定は医師などによる主観的なもので、客観的に判定されておらず、介護サービスを適切に提供することを困難にさせている。そのため、介護度が客観的に判定できるシステムが必要とされており、様々な研究が進められている。

    滝沢らの研究によれば、足の前後運動の運動速度と介護度には相関関係があるとわかった[1]。また、足の前後運動の速度を測定し無線通信によってデータを送信する装置(評価機)が製作された[2]。この評価機により、足の前後運動から正しく介護度を判定するための測定データを収集することが容易となった。

    ただ、介護度を判定するためには、上記の測定データの収集に加えて、測定データを蓄積する必要がある。また、蓄積したデータを可視化、解析するシステムも必要である。そこで、本研究では、これらの要件を満たす、評価機からの測定データをクラウドで一元管理し蓄積されたデータを容易に検索できるシステムを構築することを目的とした。

記事
  • リハビリテーション医学のパラダイムシフト-創動運動による障害克服報告会の開催にあたって
    滝沢 茂男
    原稿種別: 会議報告
    p. 10-
    発行日: 2021/02/11
    公開日: 2021/05/17
    会議録・要旨集 フリー

     このバイオフィリアリハビリテーション学会・バイオフィリア研究所の研究は1987年藤沢市において地域訓練会の解剖学的脳損傷を持つ人のみを受け入れると医師会と市の間で協定して設置された地域訓練会の成果を市会議員が確認し始まった。その開始状況を図1に示す。

     多年に及ぶ研究の間、多くの研究費支援を国の機関や神奈川県から受けた。その状況は昨年この学会で報告1)した。しかし、その成果を発表するにあたり、例えば、日本リハビリテーション医学会(リハ医学会)、厚生省の研究班やその他の学会により発行された脳卒中治療ガイドラインについて、「患側優先の神経筋促通法(法と略)によるリハビリを見直す必要がある.法の理論や手技は進歩に伴い,片麻痺の改善を期待させるが,診察現場で片麻痺患者を例に40年昔と現在と比較すると,診察結果は昔と変わっていない.法が治療に有効との感じを受けない.」とした内容を、日本のリハビリ医学の草分けとも言える故福井圀彦医学博士(脳卒中最前線の著者)や故木村哲彦国立障害者リハビリセンター病院院長(当時)と筆者の共著で投稿したが、リハ医学会のジャーナルには掲載を許可されなかった。

     また研究を積み重ねこのまま現在のリハビリ医療を続けていると要介護者が積み上がって、国の経済や国民の生活に大きな影響を与えると指摘し、それゆえ、リハビリ医療の改革をしなければならないという論文を社会技術論文集に投稿した。社会技術の論文の審査員は2名でうち1名は出版するべきものとした社会技術の関係者で、もう一名はリハビリ医学の関係者で、指摘について、「嘘」と表現した評価で論文発表できなかった。

     その状況下で、この学会は、規模が小さくても、我々の研究をしっかりと世の中に提案すべきであるとした研究者たちの集まりからうまれ、そうした意味ある研究を公表できる場として重要な意味を持って来た。

     そして先に述べた様に、研究所と多くの大学を通じて、多くの研究費を得て実施してきた研究が認められ、2019年 ISPRM のロングワークショップで、そして2020年日本学術振興会とポーランド科学アカデミーの二国間セミナーで、世界に向け発信することができた。

     2021年実施の日本学会と、そして続いて開催される日本語の二国間セミナー報告会でこれまでの研究すべてが報告され、今後過去を振り返る必要がなくなる。

    そして今年のこの学会から新しいステージへの飛躍が始まる。

     この視点から、リハビリテーション医学のパラダイムシフト-創動運動による障害克服報告会の案内を以下報告する。

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