Bird Research
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2 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • 植田 睦之, 百瀬 浩, 山田 泰広, 田中 啓太, 松江 正彦
    2006 年 2 巻 p. A1-A10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/28
    ジャーナル フリー
    オオタカの幼鳥の分散過程と環境利用を明らかにするために,2001年 7月,栃木県芳賀郡で 5羽のオオタカの巣立ちビナに電波発信機をつけ,調査を行なった.巣立ち後,オオタカの幼鳥が巣に戻ってこなくなるまでの期間は,40日前後だった.オオタカの営巣地からの分散は,巣のそばから急にいなくなるタイプ,徐々に巣から離れていくタイプ,そして一度巣から比較的近い位置に移動し,しばらく滞在した後に更に分散するタイプが認められた.オオタカの幼鳥の最外郭行動圏は巣立ち後,水田や畑などの開放的な環境が占める割合が徐々に高くなった.しかし実際に幼鳥が使っていた環境は,広葉樹,針葉樹,その他樹林といった樹林地で,開けた水田は忌避されていた.樹林地帯より水田地帯の方がオオタカの獲物である鳥類の生息数が有意に多く,水田地帯ではスズメやムクドリの群れが多く記録され,オオタカはそれらを捕食していた.オオタカの幼鳥はこれらを捕食するために,開けた場所を行動圏とし,開けた場所に点在する樹林からそれらを捕食しているのだと思われる.
  • 嶋田 哲郎, 植田 健稔
    2006 年 2 巻 p. A11-A17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/03
    ジャーナル フリー
    2005/06年冬の記録的な厳しい気象条件が水鳥の越冬状況に与えた影響を明らかにするために,宮城県北部にある伊豆沼・内沼において,気象条件とガンカモ類の個体数のデータを,平年並みの寒さであった2004/05年と2005/06年で比較した.2005/06年の気象条件をみると,12月の気温の低下と積雪の増加が顕著で,11,1月は平年並みに近い状況であり,沼の凍結期間は前年の 3倍以上の長さだった.ガンカモ類の個体数変動をみると,2004/05年に対し,2005/06年ではオオハクチョウが増加,マガンが安定傾向にあり,カモ類は増加時期が早い傾向にあった.オオハクチョウの増加とカモ類の早い時期の増加は,宮城県以北の厳しい気象条件によって南下してきた個体によるものと考えられた.一方で,越冬期,ほとんどのマガンは宮城県北部に集中しており,新たに南下する群れがなかったために,マガンの個体数は安定していたと考えられる.
  • 黒沢 令子, 徳永 珠未, 小林 和也, 平田 和彦
    2006 年 2 巻 p. A19-A24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    2005/06年冬に北海道の一部でスズメの大量死がおこり,特に餌台のある民家等から死亡個体が報告された.そこで,スズメの異変について多角的な視点から捉えることと,個体群への影響を評価するために,大量死が起きた冬を含む2005年 4月~2006年 3月,そして2003年 4月~2004年 3月に行なわれたルートセンサスの結果を解析した.2003/04年は年間を通したスズメの個体数の変動は小さかったのに対し,2005/06年は2005年12月と2006年 1月とのあいだに個体数が急減したことがわかった.この時期は市民からスズメが減ったとの問い合わせが始まった時期とよく一致しており,身近な鳥類の個体数変化を感知するために市民の観察の有効性が示唆された.わが国には,いち早く野生動物の危機に対応できる体制がまだ整備されていないので,野生個体群の疾病を含めた健全性について全国的なモニタリング体制を整えることが望まれる.それが整うまでは,行政とNGO,研究者などが,異変を察知した市民の観察情報を活かすために,日ごろから情報の共有をはかっておくことが大切だと考えられた.
  • 植田 睦之
    2006 年 2 巻 p. A25-A33
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/26
    ジャーナル フリー
    鳥類の減少の一因として,その食物となる飛翔性昆虫が減少していることが考えられる.しかし,飛翔性昆虫の個体数のモニタリングはほとんどなされておらず,その現況は明らかでない.そこで,飛翔性昆虫のモニタリング手法を考えるために,東京都中西部で,昆虫の調査手法として使われるライトトラップを簡便化した手法を試みた.この手法は自動販売機の灯りに夜間集まってくる昆虫をかぞえる方法で,この手法により得られた昆虫量指標は 4月から 6月にかけては河川沿いに多く,その後,それ以外の地域との差は小さくなった.さらに,その季節変化は 2年とも一致していた.また,春の昆虫量指標が多いことが示された河川沿いには,ツバメが早く定着することも明らかになった.これらの結果は,今回試みた手法により飛翔性昆虫のモニタリングができることを示唆しており,今後は全国各地の様々な環境で試験して,全国的な飛翔性昆虫のモニタリングの可能性について検討していきたい.
  • 平野 敏明
    2006 年 2 巻 p. A35-A46
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/25
    ジャーナル フリー
    2005年 5月中旬から 8月下旬,2006年 4月中旬から 8月下旬にかけて,栃木県藤岡町から小山市の渡良瀬遊水地で,カセットテープレコーダーから鳴声を再生してクイナとヒクイナの繁殖期における生息分布,個体数,生息環境の調査を行なった.2005年には110地点,2006年には140地点で鳴声再生を実施した結果,クイナおよびヒクイナの生息が2005年には20地点と 2地点,2006年には16地点と 2地点でそれぞれ確認された.しかし,同一個体の可能性のあるものを除くとクイナは2005年が12羽,2006年が10羽,ヒクイナは2005年,2006年とも 1羽と推定された.クイナおよびヒクイナが生息していた場所は,20cm以下の深さで地表に水があるヨシやスゲ類が繁茂する環境で,下層植物のない乾燥したヨシ原ではまったく記録されなかった.渡良瀬遊水地におけるこれら 2種の生息分布は,著しく限られていた.これは,渡良瀬遊水地の多くが,乾燥したヨシなどの高茎草原からなっていることが理由の 1つと考えられた.クイナ類など湿地性鳥類の良好な生息地を創出するために,人為的な掘削などによる湿地性環境の再生が必要と考えられる.
  • 福田 道雄, 加藤 七枝
    2006 年 2 巻 p. A47-A53
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル フリー
    1999年から2004年まで,東京湾岸沿いに形成された 3か所のカワウの集団繁殖地(コロニー)で,3週齢以上に成長したヒナを巣立つとみなして,繁殖に成功した巣の推定巣立ちヒナ数を比較した.繁殖成績はコロニー,年ごとに異なっていた.これまで報告されたカワウの採食範囲に基づけば,これらのコロニーの日常採食活動場所は重複し合う距離内にあったが,繁殖成績にさまざまな差異があったとことなどから,それぞれのコロニーの採食場所は異なっていたと推察される.
テクニカルレポート
  • 植田 睦之, 田中 啓太
    2006 年 2 巻 p. T1-T7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/20
    ジャーナル フリー
    鳥類の繁殖生態調査ではビデオでの巣の録画がよく使われる.この手法は効果的な反面,解析に膨大な時間がかかる欠点がある.そこで,親鳥の訪巣を動体監視ソフトウェアをもちいて抽出できないか検討するため,富士山で録画したルリビタキの巣,3巣のビデオ録画をUFO Capture V2という動体監視ソフトウェアをもちいて解析した.その結果,親鳥の画面上の大きさに関わらず,親鳥の訪巣の前後の動画を自動抽出することができた.動くものを抽出するというソフトウェアの機能上,巣が揺れてしまうような場合には使用するのが難しいなど,適用上の制限はあるが,ビデオ録画の解析ツールとして有用と考える.
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