Bird Research
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3 巻
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原著論文
  • 峯岸 典雄
    2007 年 3 巻 p. A01-A09
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/02/27
    ジャーナル フリー
    長野県軽井沢町で1989年より2006年の繁殖期に105日の定点録音を行ない,鳥類の出現状況について解析を行なった.オオルリとハシブトガラスは増加傾向にあったが,それ以外の種は減少傾向にある種が多く,キジ,カッコウ,ツツドリ,クロツグミ,アカハラ,ウグイス,ホオジロ,ノジコ,アオジは調査開始当初は普通に記録されていたにもかかわらず,まったく記録されなくなった.減少した種の多くでは,一度,記録数が増加し,その後減少するパターンがみられた.増減のおきた時期は周囲で開発が行なわれた時期と一致しており,開発により生息できなくなった個体が一時的に調査地に移入し,その後,消失してしまうため,このような増減が起きたのかもしれない.
  • 植田 睦之
    2007 年 3 巻 p. A11-A18
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
    環境省が行なった「ガンカモ科鳥類の生息調査」の結果と気象庁による積雪の深さと最低気温の記録をもちいて北海道,東北地方,中部地方日本海側で越冬するハクチョウ類とカモ類の越冬数におよぼす積雪や気温の影響について解析した.北海道のカモ類を除き,ハクチョウ類もカモ類も年々記録数が増加する傾向があった.気象要因については,東北および中部地方の日本海側の地域では,ハクチョウ類は気温の,カモ類は積雪の影響を強く受けることがわかった.気温は開水面の凍結を通してねぐらや休息地の状況に影響を与え,積雪は水田などの採食地での食物の採りやすさに影響を与えると考えられる.したがって,ハクチョウ類は給餌への依存度が高く,止水域をおもな生息地としているために気温の影響を強く受け,カモ類は,水田などが重要な採食地になっているので,積雪による影響を強く受けると考えられる.
  • 黒沢 令子, 長谷川 理, 泉 洋江, 越川 重治
    2007 年 3 巻 p. A19-A25
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/05
    ジャーナル フリー
    2006年初頭に北海道の中央地域でスズメが大量死し,個体数が減少した.そこで市民が気軽に参加できるような簡易定点調査法により,その後のスズメの個体群動態のモニタリングを開始した.積雪地域(北海道など)と雪のない地域(関東地方)の違いや季節および,餌やりの影響を比べたところ,スズメの出現数は平均3.6~3.8羽(0.78ha)で,両地域に差はなかった.季節別にみても夏と冬ともに平均3.6羽で差はなかった.一方,北海道の同一地点において,季節別に冬期の餌やりの交互作用をみると,冬期に餌やりのある地点では,冬期のスズメの数が有意に多く,餌やりのある場所にはスズメが集中することが裏付けられた.このような状態は感染症が発生した場合には水平感染が起きやすくなるので,2005/06年のような大量死を引き起こす要因になりうる.それを避けるためには,餌やりは最小限にして過密状態を避け,餌台の衛生管理の徹底を呼びかける必要があるだろう.市民参加による調査は,簡便さが要求される一方,精度にバラつきが生じやすいことと,さらに検討できる要因を増やすために調査地点数を増やすことが課題である.スズメのような身近な鳥は,人間の近くに住むので,環境の健全性を見守る指標として利用できることから,学校や自然教育における応用が期待される.
短報
正誤表
テクニカルレポート
  • 植田 睦之
    2007 年 3 巻 p. T1-T2
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/08
    ジャーナル フリー
    繁殖開始時期や繁殖状況の調査は鳥類の繁殖生態の研究の基礎となることである.しかし,多くの巣そして広範囲の地域でそれらを調査するためには,多大な労力を要する.また,さまざまな事情により調査間隔が開いてしまう場合には調査対象の巣の繁殖状況を把握できないこともある.このような場合に繁殖状況を自動的に記録できるような仕組みがあれば、研究上,極めて有用である.そのための手法にはいくつかの方法があるが,なかでも装置が安く設置も簡単な方法が巣内の温度を温度ロガーで記録し,繁殖状況を把握する方法である.温度による繁殖状況の記録はすでにいくつかの研究で行なわれ,近年はさらに簡単な方法で調査が行なわれ,成果があがりはじめている.そこで,この手法で調査を行なっている 3組の研究者にその成果を報告していただき,温度ロガーを使った繁殖状況の調査の可能性と限界についてまとめた.
  • 植田 睦之, 関 伸一, 小池 重人
    2007 年 3 巻 p. T3-T11
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/08
    ジャーナル フリー
    鳥類の繁殖時期のモニタリングを温度ロガー「サーモクロンGタイプ」を巣箱の底に設置することで可能かどうかについて検討した.対象種はアカヒゲ,シジュウカラ,ヤマガラ,コムクドリとした.シジュウカラ,ヤマガラ,コムクドリについては抱卵開始,ふ化,巣立ちを推定/把握することができた.アカヒゲについては,巣箱の底の一部を底上げし,そこにロガーを設置すれば,繁殖時期を推定/把握することが可能であった.したがって,種によっては多少の工夫が必要であるものの,巣箱設置時にロガーを設置し,秋期に回収することで繁殖状況を把握する簡便な調査を行なうことが可能と考えられる.
  • 村濱 史郎, 那須 義次, 松室 裕之
    2007 年 3 巻 p. T13-T19
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/08
    ジャーナル フリー
    2006年11月~2007年 5月,フクロウ巣箱内に自動温度記録計を設置し,巣箱内の気温を記録した.回収した記録のうち,2007年 3月 4日~4月30日までの間を解析したところ,巣箱内の温度記録の変化からフクロウの繁殖ステージの一部,抱卵開始からふ化までを推定/把握することができた.フクロウでは巣内に温度記録計を設置することによりその繁殖状況を把握することが可能と考えられた.
  • 水田 拓
    2007 年 3 巻 p. T21-T28
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/20
    ジャーナル フリー
    マダガスカル共和国アンカラファンツィカ国立公園において,2004年と2005年に温度データロガーを用いてマダガスカルサンコウチョウの巣の捕食者と捕食時間帯の特定を試みた.温度データロガーの設置と並行してビデオカメラによる捕食現場の撮影を行なった結果,ブラウンキツネザル,シロハラハイタカ,ゴノメアリノハハヘビの 3種の捕食者が特定された.ブラウンキツネザルとシロハラハイタカは夕方に,ゴノメアリノハハヘビは夜間に巣の卵やヒナを補食していた.巣の内部の測定温度は,これらの種による捕食の後急激に低下していた.ブラウンキツネザルによる捕食では,親が捕食の40分以上前から巣外に出ていたため温度変化は他と少し異なっていたが,温度変化から捕食者の種を特定することはできなかった.巣の捕食は夜間,早朝,夕方に多かったが,抱卵期と育雛期で捕食時間帯に違いは見られなかった.本研究により,捕食時間帯を特定するための温度データロガーを使用することは有効であることが示唆された.
  • 植田 睦之, 水田 拓, 村濱 史郎
    2007 年 3 巻 p. T29-T32
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/20
    ジャーナル フリー
    今回の特集論文から,温度ロガーを使って鳥類の繁殖状況を把握できることが示された。温度ロガーを使うことで,調査者の労力をかけず,また,調査の鳥への影響を最小限にすることができる。また,調査者がいることにより生じにくくなってしまう事象,たとえば捕食を記録する上でも極めて有効な調査手法と言える。繁殖状況を記録するその他の方法としては,ビデオ映像を録画する方法があげられる.ビデオ録画より得られる情報は給餌量や食物の内容,捕食者の種など温度ロガーと比べて極めて多いが,データ処理に膨大な時間がかかる欠点がある。その点,温度ロガーはデータを直接コンピュータに取り込むことができるなど,データ処理が簡単にでき,また価格も安いので多くの巣に対して使用ができる。したがって必要な情報の質が温度ロガーで十分な場合は,温度ロガーが最も効率的な調査手法と言えるだろう.
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