Bird Research
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4 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • 嶋田 哲郎, 進東 健太郎, 藤本 泰文
    原稿種別: 原著論文
    2008 年 4 巻 p. A1-A8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/11
    ジャーナル フリー
    越冬期間中のガンカモ類の給餌へのエネルギー依存率の推定を2007年11月から2008年 3月にかけて伊豆沼・内沼に隣接した給餌池で行なった.ガンカモ類の個体数と給餌量を毎日調査したところ,優占したガンカモ類 4種のうち,最も個体数が多かったのはオナガガモで最大1,400羽であった.次いでオオハクチョウで最大110羽,それらにキンクロハジロ,ホシハジロが続いた.白米や玄米などの給餌量は12月に最も多く1,279kgでその後減少した.体重とFMR(Field metabolic rate)をもとに,4種の月ごとの代謝エネルギー量が推定された.また給餌量,個々の餌のエネルギー量およびエネルギー消化吸収効率から,月ごとの利用可能エネルギー量を求めた.代謝エネルギー量に対する利用可能エネルギー量の割合を依存率とすると,11月(飛来の初期)および 3月(渡去期)では102%,94%と代謝エネルギー量と利用可能エネルギー量がほぼ同じであったが,厳寒期である 1~2月には35~40%と代謝エネルギー量が利用可能エネルギー量を大きく上回り,給餌だけでは 1日の基礎代謝に必要なエネルギー量を獲得できないことが示唆された.
  • 平野 敏明
    原稿種別: 原著論文
    2008 年 4 巻 p. A9-A18
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/17
    ジャーナル フリー
    チュウヒの採食環境について,2004年から2006年の越冬期に渡良瀬遊水地の 4か所で調査を行なった.池沼や水路,管理用の道路が縦横に走る人為的に造成されたヨシ原と隣接する乾燥したヨシ原のみの調査地とのあいだでチュウヒの探餌飛行の頻度を比較したところ,チュウヒは,2シーズンとも前者のヨシ原を後者より有意に多く利用した.前者の調査地では,後者に比べて,チュウヒの獲物となる鳥類が有意に多く記録された.また,調査地を100×100mのメッシュに区切り,チュウヒの探餌飛行の頻度を比較したところ,水路や池を含むメッシュが,植物だけのメッシュより有意に多く利用された.こうした水路や沼を含むヨシ原がチュウヒに良く利用されるのは,獲物となる生物が多いこととともに,チュウヒの狩りの方法である不意打ちハンティングに好ましい環境のためと考えられる.したがって,池沼や細い水路などが含まれる多様なヨシ原を保全し,創出することが,チュウヒの越冬環境を保全するにあたって重要と考えられる.
  • 三上 修
    原稿種別: 原著論文
    2008 年 4 巻 p. A19-A29
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/26
    ジャーナル フリー
    スズメは日本において最も身近な鳥でありながら,その基礎的な生態についてわかっていないことが多い鳥でもある.本研究では,スズメの最も基礎的なデータの 1つである,日本本土におけるスズメの個体数を推定することを試みた.まず,スズメの生息密度が異なると予測される 5つの環境において(商用地;住宅地;農村;非繁殖地;その他),野外調査によりスズメの巣密度を調査した.そして,それぞれの環境が日本本土に何km2あるのかをGISデータより求め,環境ごとに面積と巣密度を掛け合わせることで,日本本土におけるスズメの全巣数を推定した.その結果,約900万巣という結果が得られた.この値に一夫一妻を仮定して 2倍することで,2008年の繁殖期における日本本土のスズメの成鳥個体数は,およそ1,800万羽と推定できた.成鳥 1つがいあたり,秋までに 3羽の若鳥が生存すると仮定すると,秋には4,500万羽ということになる.なお,この値の取り扱いには注意する必要がある.なぜなら,これらの推定値はいくつかの仮定に基づいているため推定値としては粗いものであり,また実際のスズメ個体数は年によって変動すると推測されるからである.一方で,そのような粗さを考慮に入れても,日本本土における繁殖期におけるスズメの成鳥個体数は,数千万の桁に収まると思われる.
短報
  • 西 教生, 高瀬 裕美
    2008 年 4 巻 p. S1-S8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/28
    ジャーナル フリー
    2007年 5月中旬から10月中旬にかけて,山梨県都留市においてハシボソガラスおよびハシブトガラスの成鳥の風切羽,尾羽の換羽の調査を行なった.踏査によって落ちている風切羽および尾羽を採集し,定点観察によって飛翔中の個体の風切羽および尾羽の換羽状態を記録した.ハシボソガラスおよびハシブトガラスとも初列風切羽の最も内側の第 1羽から外に向かって換羽を開始し,第 5~第 6羽まで進むと次列風切羽は最も外側の第 1羽から内側に向かって換羽を開始した.ハシボソガラスは 5月下旬から,ハシブトガラスは 6月上旬から風切羽の換羽を開始し,ハシボソガラスは 9月上旬から中旬に,ハシブトガラスは 9月下旬から10月上旬に終了した.尾羽の換羽は初列風切羽の第 4羽が換羽をすると開始され,中央尾羽から外側に向かって換羽を行なった.
  • 松田 道生
    2008 年 4 巻 p. S9-S12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    ジャーナル フリー
    2008年 6月12日,北海道天塩郡豊富町のサロベツ原野にてムジセッカのさえずりを録音した.日本ではムジセッカは,越冬または旅鳥とされており,繁殖期の記録は初めてである.ムジセッカは,草原の草むらの中にいて姿での確認が難しい.そのため,さえずりが知られることで,今後ムジセッカの繁殖の確認につながるものと思われる.
テクニカルレポート
  • 植田 睦之
    原稿種別: テクニカルレポート
    2008 年 4 巻 p. T1-T8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    北海道から南大東島までの24か所の森林で一晩を通して耳による聞き取りと録音をもちいた夜行性鳥類の調査を実施し,繁殖期の夜行性鳥類の効果的な調査時刻について検討した.日没後および日の出前1時間半での記録率と一晩を通した記録とを比較したところ,ゴイサギの記録率は低いものの,それ以外の種ではこの時間帯だけで高確率で生息状況を把握でき,日の出と日没前後に調査することが夜行性鳥類の生息を把握するのに効率的だということがわかった.しかし,日没後だけではジュウイチとトラツグミの記録率が低く,日の出前だけでは,コノハズクとフクロウの記録率が低く,日没後か日の出前かどちらかだけの調査では夜行性鳥類の生息状況を十分に把握できなかった.また,人の耳による聞き取りと録音による記録を比べたところ,記録率に有意な差のある種はなかった.録音にはデータの再現性,種の判別のつかない声を専門家に識別してもらうことが可能などの利点もあり,夜行性鳥類の調査に録音は効果的といえる.
  • 植田 睦之, 島田 泰夫, 有澤 雄三, 高木 憲太郎, 樋口 広芳
    原稿種別: テクニカルレポート
    2008 年 4 巻 p. T9-T20
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/22
    ジャーナル フリー
    地上から電波を発射して上空の風向,風速を観測する「ウィンドプロファイラ(WPR)は,2001年に運用がはじまったばかりの大気用レーダーである.このレーダーに鳥に起因すると考えられる信号「鳥エコー」が映ることが知られている.そこで,この「鳥エコー」が本当に鳥からのエコーなのか検証した.北海道室蘭において2005年および2006年の秋期に 6日間,夜間や早朝に通過する渡り鳥の数を「夜間の鳴き声の数」,「月面の通過数」,「早朝の目視確認数」により把握し,2007年の秋期に 5日間「船舶レーダーに映る鳥エコー数」により把握した。それらの結果とWPRの「鳥エコー」とを比較した。
    WPRの「鳥エコー」の頻度は 4種類の手法で得た鳥の飛行頻度のいずれとも有意な正の相関があった.またWPRと船舶レーダーで把握することのできた「鳥エコー」の時系列そして高度方向のパターンは概ね一致していた.これらの結果は「鳥エコー」が渡り鳥からの反射であることを強く示唆している.ただし,鳥が密な群れで飛んでいた早朝はWPRの「鳥エコー」はその数を少なく評価しており,また飛翔高度は船舶レーダーによる記録よりもWPRは高く記録していた.このような欠点はあるものの,WPRの「鳥エコー」は全国31地点で冬期を除き毎日データが蓄積されている全国的な渡り鳥の状況を知るための極めて有用な情報であることがわかった.
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