Bird Research
Online ISSN : 1880-1595
Print ISSN : 1880-1587
ISSN-L : 1880-1587
7 巻
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
原著論文
  • ~一般参加型調査 子雀ウォッチの解析より~
    三上 修, 植田 睦之, 森本 元, 笠原 里恵, 松井 晋, 上田 恵介
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 7 巻 p. A1-A12
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    近年,日本国内においてスズメ Passer montanus の個体数が減少していると言われている.その原因はわかっていないが,熊本で行なわれた先行研究では,都市部では農村部とくらべて1つがいが連れている巣立ち後のヒナ数が少なく,都市化にともなう何らかの要因がスズメの減少をもたらしている可能が示唆されている.しかし,この研究は狭い地域で行なわれたものであり,それが本当に日本全体でも起きているかはわからない.そこで2010年にこの研究と同じく,巣立ち後のヒナ数を調べる調査を「子雀ウォッチ」と銘打ち,一般市民に協力してもらう形で全国規模で行なった.その結果,全国から406の記録が集まり,それを解析したところ,巣立ち後の平均ヒナ数は,商業地で1.41羽,住宅地で1.81羽,農村では,2.13羽と,商業地,住宅地,農村の順で多くなった.この結果は前述の先行研究の結果と整合性があり,やはり都市化と関連している何らかの要因が全国規模でスズメの減少要因になっていると考えられる.この子雀ウォッチを今後もつづけ,記録を蓄積することで,スズメの減少要因の解明につながると期待できる.
  • 藤田 薫, 藤田 剛, 長谷川 雅美, 樋口 広芳
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 7 巻 p. A13-A31
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/04
    ジャーナル フリー
    個体数や生息地面積の把握と共に局所個体群の生息の安定性を推定することは,火山諸島の希少種の保全のために,特に重要であると考えられる.本論文では,2002-03年の伊豆諸島におけるヤマガラの生息個体数と生息地の面積(森林面積)を島および亜種ごとに推測するとともに,各島での1955-2009年のあいだの生息の安定性に影響する要因を推定した.その結果,本土と共通する亜種ヤマガラは最も北の大島にだけ分布し,約60km2の森林に最低12羽から最大1,140羽生息すると推定された.絶滅危惧IB類に指定されている亜種ナミエヤマガラは伊豆諸島中部の新島と神津島の約20km2の森林に1,760-1,850羽,絶滅危惧II類の亜種オーストンヤマガラは南部の三宅島,御蔵島,八丈島の約65km2の森林に4,420-5,290羽,生息すると推定された.モデル選択の結果,伊豆諸島のヤマガラの生息割合に最も影響を与えていた要因は,島の面積であった.モデル式から,局所個体群の生息割合は,面積14.0km2以上の島で安定した生息を示す0.9以上の値をとり,1.7km2未満の島では0.1以下であった.伊豆諸島のうち面積が中程度,3-6km2の島(利島,式根島,八丈小島,青ヶ島)ではヤマガラの局所的な絶滅,侵入が起こりやすいと予測され,実際,近年,利島では絶滅が,式根島では侵入が確認された.
  • 三上 かつら, 植田 睦之
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 7 巻 p. A33-A44
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/01
    ジャーナル フリー
    アンケートや文献調査から,亜種リュウキュウサンショウクイ Pericrocotus divaricatus tegimae の西日本における分布拡大状況を把握した.1970年代に南九州に生息していた本亜種は,2010年までに九州北部・四国・紀伊半島においても確認されるようになった.生息地では留鳥であるが,一部個体は冬には繁殖地より暖かい中~低標高地へ移動している可能性もある.生息環境について,亜種サンショウクイ P. d. divaricatus と比較すると,両亜種のニッチは似通っているもしくは連続的であった.現在,繁殖期は亜種サンショウクイの方が北の地域に生息しているものの,越冬期は亜種リュウキュウサンショウクイの方が北の地域に生息していることから,両亜種の分布の違いは寒さへの生理的耐性では説明できない.1980年代に亜種サンショウクイが減少し,空いた地域で亜種リュウキュウサンショウクイが夏に繁殖できるようになり,さらに越冬するようになったものと示唆される.環境条件から推定した生息可能域は,関東地方にまでおよぶことがわかった.
  • 渡辺 美郎, 平野 敏明
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 7 巻 p. A45-A55
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/11
    ジャーナル フリー
    繁殖期と冬期のヒクイナ Porzana fusca の生息個体数を調査するために,兵庫県神戸市付近の約43.75km2内の河川や溜池,農地で2009年1月から6月に録音再生法をもちいて調査を行なった.冬期には, 190地点で鳴き声再生した結果,合計76羽(1月)と66羽(2月)のヒクイナが記録された.環境区分ごとの1月と2月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=55)が0.62羽と0.62羽,小規模河川(N=49)が0.18羽と0.29羽,池(N=78)が0.41羽と0.23羽,農地(N=7)が0.14羽と0.29羽であった.一方,繁殖期には,合計169地点で調査を行ない,合計81羽(5月)と45羽(6月)が記録された.環境区分ごとの5月と6月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=48)が0.79羽と0.46羽,小規模河川(N=49)が0.31羽と0.18羽,池(N=65)が0.38羽と0.17羽,農地(N=7)が0.38羽と0.38羽であった.農地を除く3環境区分の個体数は,冬期および繁殖期とも有意に異なっており,中規模河川がもっとも多く記録された.池の調査地における生息の有無と池の面積および池内の湿地性植物の面積を比較した.ヒクイナの生息が確認された池の面積(±SD)は,2.87±3.62ha(冬期)と2.69±3.20ha(繁殖期),生息が確認されなかった池は2.89±2.72ha(冬期)と3.16±3.16ha(繁殖期)で,両者の間には有意な違いは得られなかった.しかし,ヒクイナが生息していた池の湿地性植物の面積は,0.27±0.21ha(冬期)と0.28±0.22ha(繁殖期)で,生息していなかった池より湿地性植物の面積が有意に広かった.このことから,ヒクイナの生息には湿地性植物の面積が重要であることがわかった.調査地で,越冬期と繁殖期に70羽以上のヒクイナが記録されたのは,調査地には溜池が多くあることで,良好な生息環境が多く存在することが一因になっていると考えられる.
  • 山田 一太
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 7 巻 p. A57-A60
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/16
    ジャーナル フリー
     春の渡り時期にハヤブサ Falco peregrinus の捕食成功率を明らかにする目的で広島県大竹市の海岸で調査を行なった.調査は1991-2011年まで,2000年と2005年を除く,のべ19年間に146日行ない,ハヤブサの捕食行動は115日観察した.ハヤブサの狩りはヒヨドリ Hypsipetes amaurotis を狙った攻撃が多かった.記録の多い海上における成鳥雌雄のヒヨドリに対する捕獲成功率は,雌は68%,雄は89%と雄の捕獲成功率が有意に高かった.ヒヨドリに対する捕獲成功率の違いに影響する要因としては,平均攻撃回数が雌が6.2回だったのに対して雄は2.8回と少なく,体の小さい雄の方が小回りがきき,退避行動をとるヒヨドリにうまく追従して攻撃したことが考えられた.
短報
調査データ
Top