神奈川県立博物館研究報告(自然科学)
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2022 巻, 51 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
表紙・目次
生物学(動物学)
原著論文
  • 矢頭 卓児, 手良村 知功, 瀬能 宏
    2022 年 2022 巻 51 号 p. 1-7
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ホウボウ科のミナミソコホウボウ(新称)Bovitrigla acanthomoplate Fowler, 1938 の1 標本が遠州灘から得られた。この種は日本初記録種であり、遠州灘における出現はこの種の北限記録となる。南シナ海産の10 個体と比較するとともに本種を詳細に再記載した。
  • 鈴木 寿之, 大迫 尚晴, 山﨑 曜, 木村 清志, 渋川 浩一
    2022 年 2022 巻 51 号 p. 9-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    琉球列島八重山諸島の河川渓流域に生息するハゼ科ヨシノボリ属魚類の2 新亜種(Rhinogobius aonumai aonumaiRhinogobius aonumai ishigakiensis)をふくむ1 新種 Rhinogobius aonumai (新標準和名パイヌキバラヨシノボリ)を記載した。Rhinogobius aonumai aonumai (新標準和名イリオモテパイヌキバラヨシノボリ)は西表島のみに分布し、背鰭前方鱗数9–15、縦列鱗数32–37、脊椎骨数11+15–17=26–28(モードは27)、第2 背鰭前端の2 個の坦鰭骨は第10 脊椎骨の神経棘をまたぐ、腹鰭第5 軟条は最初に3 または4 分岐(ふつう4 分岐)する、頬の孔器列は縦列する、生鮮時の体の地色は黄色系である、第1 背鰭に暗色斑はない、尾鰭に暗色の横点列かジグザグ横線が並ぶ、雌の尾鰭基底に垂直に並ぶ1 対の暗色の短い棒状斑があるなどの特徴で同属の他種階級タクソン(種及び亜種)から区別できる。Rhinogobius aonumai ishigakiensis (新標準和名イシガキパイヌキバラヨシノボリ)は石垣島のみに分布し、背鰭前方鱗数10–14、縦列鱗数33–38、脊椎骨数10+16–18==26–28(モードは27)、第2 背鰭前端の2 個の坦鰭骨は第9 脊椎骨の神経棘をまたぐ、腹鰭第5 軟条は最初に2 または3 分岐(ふつう2 分岐)する、頬の孔器列は縦列する、生鮮時の体の地色は黄色系である、第1 背鰭に暗色斑はない、尾鰭に暗色のジグザグ横線が並ぶ、雌の尾鰭基底に垂直に並ぶ1 対の暗色の短い棒状斑があるなどの特徴で同属の他種階級タクソン(種及び亜種)から区別できる。
  • 菅原 弘貴, 内藤 順一, 岩田 貴之, 永野 昌博
    2022 年 2022 巻 51 号 p. 35-46
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    サンショウウオ属の2 新種を、日本の広島県南部から記載した。形態学的および分子系統学的解析に基づくと、アキサンショウウオは3 つのグループ(広島北部グループ、広島- 愛媛グループ、東広島グループ)に区別された。したがって、広島県南部および愛媛県北部に分布するグループと東広島市を中心に分布するグループを、それぞれHynobius geiyoensis sp. nov.(和名: ゲイヨサンショウウオ)とHynobius sumidai sp. nov.(和名: ヒロシマサンショウウオ)として記載した。雄個体による形態比較の結果、前者は他の2 種よりも頭胴長が有意に長かった。一方、後者はアキサンショウウオに似るが、尾の背面に明瞭な黄茶色の線をもっていた。本記載により、アキサンショウウオの分布域は大きく変更となるため、本種ならびに2 新種の保全に際して、生息状況を再評価する必要がある。
  • 菅原 弘貴, 藤谷 武史, 瀬口 翔太, 澤畠 拓夫, 永野 昌博
    2022 年 2022 巻 51 号 p. 47-59
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    サンショウウオ属の1 新種を、日本の愛知県西部から記載した。分子遺伝学的および形態学的解析の結果、ヤマトサンショウウオは愛知グループと近畿グループの二つに分けられることが示唆された。このため、ヤマトサンショウウオの愛知グループを、新種Hynobius owariensis sp. nov.(和名:オワリサンショウウオ)として記載した。形態比較の結果、調査した雄個体において、ヤマトサンショウウオが尾の上下縁に明瞭かつ鮮明な黄色線をもつのに対して、本新種ではこの形質が確認できなかった。さらに、雄個体において、体側に沿って前肢と後肢を伸ばした時、本新種は多くの個体が肋皺1 個分よりも離れるが、ヤマトサンショウウオでは多くの個体が肋皺1 個分以内(個体によっては重複する)に収まっていた。その他、両種間には有意に異なる形質が複数存在していることに加えて、判別分析の結果においても、雌雄共に形態的に区別可能であることが示唆された。本新種は愛知県の西部(知多半島から名古屋市周辺部)に固有であるが、既に絶滅したと考えられる集団も複数存在し、現在も開発や乾田化によって、絶滅の危機に瀕している。
  • 渡辺 恭平
    2022 年 2022 巻 51 号 p. 61-72
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本産のチビトガリヒメバチ亜科Phygadeuontinae の6 種について、新分布記録を報告した。すなわち、徳之島からムネブトマメトガリヒメバチAcrolyta spola Momoi, 1970 とオキナワマメトガリヒメバチDiatora lissonota (Viereck, 1912) を、本州と伊豆大島からヨネダフタコブチビトガリヒメバチPhygadeuon yonedai Kusigemati, 1986 を、本州からオオシマチビトガリヒメバチMastrus oshimensis (Uchida, 1930) 、ナガフタコブチビトガリヒメバチP. elongatus (Uchida, 1930) およびキタグニチビトガリヒメバチTheroscopus maruyamanus (Uchida, 1930) を新たに記録した。これらの種のうち、ムネブトマメトガリヒメバチとヨネダフタコブチビトガリヒメバチを除いた種は、先行研究で形態形質の十分な記載がされていないため、新たに再記載を行った。これらに加えて、同様に記載が不十分なアカアシフタコブチビトガリヒメバチP. akaashii Uchida, 1930 とフクイヤマチビトガリヒメバチT. fukuiyamensis (Uchida, 1936) についても、追加標本の情報とともに再記載を行った。オオシマチビトガリヒメバチとキタグニチビトガリヒメバチはいままで原記載による記録のみが知られており、今回の記録はそれぞれの種において2 例目の記録となる。
  • 苅部 治紀, 加賀 玲子
    2022 年 2022 巻 51 号 p. 73-80
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    キバネツノトンボは、現在、神奈川県内での分布が県北部の一角に極限される絶滅危惧種である。本報では、これまでほとんど報告のなかった本種の生態を解明するために、2020 年、2021 年に継続観察を実施した生態調査の結果を報告した。まず、今回本種が夜間生息地の草地のススキなどの枯れ茎に静止して休止することを初めて明らかにした。この中で発生初期はススキ、後期はイネ科草本を利用するなどの休止場所の選択や休止位置などの知見が得られた。また、休止時調査によりその時点の生息個体数や性比の確認、本種の天敵としての2 種のクモ類についても明らかにできた。産卵対象は、外来植物のセイタカアワダチソウの枯れ茎が74 % と多数を占めた。今回本種では初めて実施された個体識別マーキング調査により、総計174 頭にマークし、再捕獲率は6 % と個体群の出入りが激しい種であることや、発生初期にオスが多く、後期に向かって減少する性比の変動、オスで34 日、メスで24 日の個体寿命など、これまで未知であった多くの新知見を得ることができ、この調査手法の有効性を示すことができた。
  • 鈴木 聡
    2022 年 2022 巻 51 号 p. 81-88
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    2020 年4 月から2021 年5 月までの期間、神奈川県小田原市の入生田地区において自動撮影カメラを用いた哺乳類相調査を行った。10 定点に設置したカメラにより、中大型哺乳類8 種および種同定の困難な齧歯目ネズミ科および翼手目の動物が合計で2,500 回撮影された。撮影数と撮影頻度指数はともにイノシシ、ハクビシン、タヌキ、ニホンジカの順に大きい値を示した。7 定点以上で撮影された7 種およびネズミ科を対象とした、定点ごとの撮影頻度指数を用いた種間の相関分析では、イノシシとニホンジカの間で特に高い相関を示し、ニホンイタチとネズミ科の間およびニホンアナグマのネズミ科の間でも相関が見られた。一方でニホンイタチとハクビシンの間などで弱い負の相関が見られた。撮影頻度指数の種間での相関は、生息環境の類似性や種間競争を反映している可能性がある。
  • ブレイクモア ロバート J., 佐藤 武宏, Chelsea VASNICK, Shu Yong LIM
    2022 年 2022 巻 51 号 p. 89-94
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本初記録となるヨーロッパ原産のミミズ Dendrobaena veneta (Rosa, 1886) と Lumbricus terrestris Linnaeus, 1758 が確認された。本種はミミズコンポスト構成種や釣餌として利用されており、日本のコンポストの需要増加を満たすために、数年前より米国を経由して導入されたと考えられる。
  • ブレイクモア ロバート J., Shawn MILLER, Shu Yong LIM
    2022 年 2022 巻 51 号 p. 95-104
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    形態学的特徴およびmtDNA のCOI バーコーディングに基づき、沖縄県久米島産のアズマフトミミズ属の新種と、滋賀県琵琶湖産のフクロフトミミズ属の新種を記載した。また、2016 年に採集された標本に基づき、アメリカ原産のフクロナシツリミミズ Bimastos parvus (Eisen, 1874) と東南アジア原産のフィリピンミミズ Pithemera bicincta (Perrier, 1875) を沖縄県からの初記録として報告した。
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