学校教育研究
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第1部 深い学びをどう実現するか〈2〉
  • LTD話し合い学習法に着想を得た理科授業の実践より
    大越 啄櫻
    2021 年 36 巻 p. 8-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿の目的は,「深い学び」を具現化するための1つの方法としてLTD話し合い学習法を援用した小学校の理科「B生命・地球」における「生物と環境(6年)」の授業実践について報告するとともに,LTD記録用紙と質問紙調査,単元末テスト結果,児童のノートのテキスト分析を基に,学習効果及び「深い学び」の評価方法について検討することである。本稿で援用しているLTD話し合い学習法の特徴を簡潔に述べると,予習(個人思考)を必須とし,予習(個人思考)を基にして話し合い学習(集団思考)が行われる点である。この点について,「2.先行研究の検討」で詳しく述べてゆく。
  • 国際バカロレアの評価システムに着目して
    藤野 智子
    2021 年 36 巻 p. 22-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
     平成29年及び30年の学習指導要領改訂では,子どもたちに育成する資質・能力を三つの柱で再整理し,各教科等でどのような資質・能力の育成を目指すのかという目標の明確化により,「子供たちにどのような力が身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を図る,いわゆる「指導と評価の一体化」を実現することが期待されている。また,生徒や学校,地域の実態を適切に把握し編成した教育課程に基づき,学校全体で組織的かつ計画的に教育活動の質の向上を図る「カリキュラム・マネジメント」に努めることが求められている。文部科学省「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)(平成31年3月29日)」等に示されるように,授業改善と教育活動の質の向上において,中核的な役割を担うものは「学習評価」である。
  • 知識変容をもたらすインタラクションとリフレクション
    原田 信之
    2021 年 36 巻 p. 36-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
     アクティブラーニングは,一般に課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習のことを指し,総合的な学習の時間(以下,「総合的な学習」と略す)で実現しようとしてきた授業の質的転換と符合するものであった。このアクティブラーニングは,一方向的で受動的な講義形式が主流だった大学の授業に対し,「学習者中心のパラダイムへの転換をはかるための牽引役として登場し」(松下 2015, 3頁),主に高等学校に普及していった。この時に出された文部科学大臣の諮問文(2014年11月)では,「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」と定義されていたことからすると,この時点では,主体的・協働的(対話的)に学ぶ姿(どのように学ぶか)までに留まり,到達点としての「深い学び」(どこまで学ぶのか)までは示されていなかった。
  • ニューノーマル下の教育基盤
    廣瀨 裕一
    2021 年 36 巻 p. 50-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
     労働環境における在宅勤務の広まりはコロナ対応の緊急措置であったが,そのメリットも認識され,仕事は職場で行うという常識が覆った。勤怠管理等の課題はあるが,ポストコロナ期においてもこの勤務形態は日常化するであろう。オンライン授業の広まりによって教育環境にも大きな変化が生まれ,勤怠管理と同様,教師の目が十分行き届かないところでの子供の学習指導や生活指導が新たな課題となる。この非接触・遠隔を基本とするニューノーマルが浸透する状況においては,ICT活用能力と併せて,自律性を高めることが重要要件となる。特に,学校が長期間休業する場合や対面授業ができないような場合,他律に慣れた児童・生徒に自律性が育っていなければ,生活習慣の乱れや学習遅滞が深刻になるであろう。
  • 松田 淑子
    2021 年 36 巻 p. 63-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
     VUCAの時代において,探究型の学びへの転換は時代の要請であり必然である。「総合的な学習の時間」は,「生きる力」の象徴として探究型の学びを牽引すべく,既に平成10~20年告示の学習指導要領より小・中・高等学校に新設,展開されてきた。その「総合的な学習の時間」は,平成30年告示高等学校学習指導要領において「総合的な探究の時間」に改称され,探究型の学びの強化と期待を明確にしている。  本稿では,「総合的な探究の時間」における「深い学び」を「省察的に探究を繰り返す中で,真正の課題における本質と自己の在り方・生き方とを一体化させていく学びの〈総体〉にある」と捉えている。従って,「深い学び」を評価するには,探究の成果以上に探究のストーリーに着目し探究全体を検証することが肝要であると考える。
第2部 自由研究論文
  • 現象学的人間学の視座から
    土屋 弥生
    2021 年 36 巻 p. 78-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
     学校教育現場には多くの問題や課題が山積している。そのなかでも発達障害の可能性のある児童生徒に対する対応や指導については,教師たちの真摯な取り組みにも関わらず有効な方法が見当たらず,多くの教師が困難を感じている。  文部科学省(2012)の「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」によれば,知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒は推定値6.5%となっているが,「通常学級における発達障害の可能性のある児童生徒」については担任等が指導のなかでそのように感じることが調査の基準となっており,医師による診断を経たものが対象ではない。このことは通常学級で担任が関わるなかで「発達障害の可能性がある」と感じる児童生徒が,実際には未診断の場合が多いことを示していると考えられる。
  • 静岡県富士宮市「富士山学習」における教育長のビジョンに着目して
    長倉 守
    2021 年 36 巻 p. 90-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿では,社会に開かれた教育課程を先取りする学習である(天笠2018)と指摘される,静岡県富士宮市教育委員会の重点施策である総合的な学習「富士山学習」について,教育長のビジョンに着目しその特質を明らかにする。これにより,総合的な学習の時間のカリキュラム開発の支援に関する教育委員会の在り方について示唆を得たいと考える。
  • 組織内における役割と立ち位置の変化に着目して
    小杉 進二
    2021 年 36 巻 p. 105-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
    ⑴ 研究の背景  教員の人事異動に関する研究は,「教員をどのように配置したか」,あるいは「どのようなプロセスで配置したか」という教育行政学的・教育制度学的なアプローチによる研究と,人事異動によって個々の教師がいかなる影響を受けたかという教師学・教師教育学的研究に大別できる。前者は,学問上の研究関心・研究価値共に高いテーマでありながら,高度な機密性を有する人事異動の決定プロセスに対して調査を行うことの難しさもあり,先行研究の蓄積はそれほど多くない⑴。一方,後者については個々の教師に対する質問紙調査やインタビュー調査により多様なアプローチ(例えば川上ら2021,保坂2010)がなされている。これらの研究は人事異動が教師の成長・発達に両義的な影響性をもたらすことを示しているが,それによる知見を踏まえた「教員をどのように配置すべきか」という教育行政学的・教育制度学的な議論や,「人事異動を通していかに組織を活性化するか」「人事異動を通していかに人材を育成するか」という教育経営学・学校経営学的な議論は十分には深められておらず,今後の展開が期待される状況にある。
第3部 実践的研究論文
  • アイディの現象学的知見を手がかりに
    神林 哲平
    2021 年 36 巻 p. 120-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル オープンアクセス
     小学校学習指導要領では,「自己の生き方を考える」といった記述が,キーワードの1つとして「道徳教育」「道徳科」「総合的な学習の時間」「特別活動」の各教科等における目標に見られる(文部科学省, 2018)。その目標の実現に向けては,「なぜ~するのか」「~とは何か」といった物事の意味を内省的に考えることが出発点になるだろう。例えば「なぜ学習をしなければならないのか」といった問いは,かねてから多くの児童が抱く典型の1つだが,こうした切実な,実存的な問いに自ら納得する答えを考えるということは,自己の生き方の見つめ直しへとつながる可能性がある。そうした点で,物事の意味を考える活動には,今日的な社会的意義があると思われる。
第4部 実践研究ノート
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