1972年度より継続している大阪府内在住授乳婦の母乳中の残留性有機汚染物質(POPs)調査を実施した。PCBsやDDT等の有機塩素系化合物による母乳汚染は70年代半ばの最も高濃度時に比べて、2008年度現在約1/8~1/70にまで低下し、その低レベル域で今世紀以降平衡状態にあり、危険水域を大きく下回っている。PCBsの減少速度は化合物の中で最も遅く、残留性が高い。これら食物連鎖、特に魚介類摂取由来による曝露が起因であるPOPsに対し、白アリ駆除剤クロルデン(CHL)や2,3,3,3,2',3',3',3'-Octachlorodipropyl ether (S-421)、臭素系難燃剤Polybrominated diphenyl ethers (PBDEs) は毎年数名の高濃度曝露された母乳があり、室内からの直接・間接的な汚染が推測された。37年間継続されてきた当調査は種々の理由により、2008年度で幕を閉じた。
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