電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン
Online ISSN : 2186-0661
ISSN-L : 1881-9567
15 巻, 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
小特集の発行にあたって
解説論文
  • 吉田 弘
    2022 年 15 巻 4 号 p. 262-270
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    水中無線技術の歴史は古く,音波による測深技術や潜水艦の長波通信は,1900 年代前半に既に利用されていた.世界においては現在も積極的に石油・ガス産業や防衛・軍事産業で水中無線技術が多用されているが,我が国では,海洋産業の衰退もあり,市場の縮小とともに技術者も減ってきている.しかしながら,我が国は世界で6 番目の広さの海洋面積(領海+排他的経済水域)を有する国であり,そこには多くの資源があり,また,国家としても海洋立国をうたっている.国内の海洋市場が縮小しているならば,市場を創るという行動をするべきだ.また,普段,空気を媒質として研究を進めている多くの研究者にとって,液体導電性媒質の海水は非常に面白い研究ターゲットである.市場形成を迎える前に,基礎研究を進め,いつでも応用が利くようにしておくべきだ.本稿では水中無線技術の総論として,研究内容だけでなく,心構えや市場性,将来性について紹介する.
  • 樹田 行弘, 出口 充康, 志村 拓也
    2022 年 15 巻 4 号 p. 271-283
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    近年,海洋科学調査にとどまらず,海洋資源開発・インフラ開発や国家安全保障など多くの分野で水中無人ロボットや水中センサを活用した技術体系の構築が進められている.海中機器と海上のプラットホーム間で通信ネットワークを構築するために,多くの有線・無線の通信技術が研究開発されてきた.海中の電波伝搬特性などにより数十m以下程度の近距離通信環境を除いて,水中音響通信技術は唯一の無線通信手段として発展してきた. 本稿では,水中音響通信技術について主に物理層における技術的アプローチを紹介することを目的とする.初めに水中音響通信伝搬路の特徴について物理パラメータを基に概説し,続いて通信距離と周波数特性の関係から必然的に狭帯域特性となることを明かす.また,水中音響通信伝搬路の送受波ジオメトリによる特徴を概説する.水中音響通信に特徴的な伝搬特性に対して有効とされる技術の解説を行って,幾つかの実海域データにおける適用例を紹介する.これから水中音響通信を始める技術者・研究者の助けとなれば幸いである.
  • 藤野 洋輔, 福本 浩之
    2022 年 15 巻 4 号 p. 284-297
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    水中での通信には,吸収減衰が少なく,海水の濁りや太陽光の干渉等の影響を受けない音響通信が一般的に利用されている.しかし,音波の伝搬速度は電波と比べて5桁以上遅いことから,遅延広がり,ドップラー広がりが共に桁違いに大きい二重選択性フェージングが発生し,その伝搬路変動の克服が課題である.一般的に通信の高速化には高周波数帯を利用した広帯域伝送が有効であるが,高い周波数を利用した際により顕著となる高速な伝搬路変動に追従可能な波形等化技術が確立されていなかったため,水中音響通信の高速化には限界があった.近年,高周波数帯利用時に発生する高速な伝搬路変動の克服を目指し,マルチパス波の一部を空間領域で抑圧することで遅延広がり,ドップラー広がりを圧縮する時空間等化技術が提案されている.本論文では,時空間等化技術を解説するとともに,その動作原理や伝搬路変動への耐性を確認するための計算機シミュレーション,伝送実験について紹介する.
  • 塙 雅典, 中村 一彦
    2022 年 15 巻 4 号 p. 298-306
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    近年,海底資源開発や浅海域でのレジャー応用などを目的として水中光無線通信技術の研究開発が進められている.2018 年には電子情報技術産業協会(JEITA)共創プログラムの支援を受けて,研究所・企業・大学が参加するAqua Local Area Network(ALAN) コンソーシアムも設立され,少しずつではあるが研究開発の裾野が拡大している.地上で広く無線通信に用いられている電磁波は水による減衰が著しく大きいことから,水中環境における無線通信媒体としては適さない.水中無線通信にはこれまで主に超音波の利用が検討されているが,その通信速度はkbit/s 台に制限される.一方,特に400 〜 550 nm 程度の波長帯(紫色〜緑色)の可視光は水による吸収係数が他の波長帯に比べて著しく小さいことから,これらの波長帯の光源を用いた高速な光無線通信技術が検討されている.通信速度だけであれば特殊なレーザの利用により100 Gbit/s を実現した報告もなされている一方,通信距離の延伸や水中での通信リンクの確立手段,水中(海中)通信路の伝搬特性の解明など,まだ研究がほとんど行われていない点も多く,実用化にはほど遠い状況である.本稿では水中光無線通信技術の基礎,技術的課題や近年の研究開発動向とともに,筆者らのこれまでの取組みを紹介し,関連分野の研究開発活動の活性化の一助としたい.
  • 鈴木 謙一, 高橋 成五
    2022 年 15 巻 4 号 p. 307-313
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    日本を取り巻く広大な海洋及びその資源の有効活用,老朽化する水中インフラや新たな水中インフラの増加に伴う効率的な水中構造物点検,スマート漁業の進展など,今後水中へのICT/IoT 技術の積極的な導入が期待されている.そのため,我々は地上並みの高速ネットワークを水中に実現し,水中の3D データを取得するため,水中ライダの検討を行ってきた.本論文では,特に水中の測距データを取得する水中ライダの開発に向けた取組みについて紹介する.まずライダについて紹介するとともに,可視光ライダ化が水中の物体の測距が可能であることを示す.次に可視光ライダを耐圧容器に収容することにより開発した水中ライダを用いて,実際に水中で物体の3D スキャンを行った結果を示す.今後,実験で明らかになった問題点への対策及び再実験による評価を重ね水中ライダの完成度を向上させる予定である.
  • 松田 隆志, 菅 良太郎, 滝沢 賢一, 松村 武
    2022 年 15 巻 4 号 p. 314-323
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    日本は国土面積の12 倍にもなる約447 万km2 と世界第6 位の広さの排他的経済水域を有し,海洋資源大国となる可能性を持っている.しかし,海中の開拓はこれまで余り進んでおらず,海中でのセンシングや通信についても音波が主流であり,詳細なセンシングや高速な通信が求められている.筆者らは電波利用の最後のフロンティアである海中におけるワイヤレス技術の確立を目指して研究開発を行っている.本稿ではこれら電波を利用した海中ワイヤレス技術について,海中での電波伝搬や通信,海底下センシングについて筆者らの研究成果を解説する.
  • 小柳 芳雄, 江口 和弘, 枷場 亮祐, 山口 修一郎, 八木 達雄, 佐藤 浩
    2022 年 15 巻 4 号 p. 324-332
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
    AUV(Autonomous Underwater Vehicle)は海底調査やインフラ施設の監視などで使用されるが, バッテリー駆動のため活動時間に制約があるとともに,充電のたびに海から引き揚げる必要があるため作業性に課題がある.海中でワイヤレス充電ができれば運用時間を大幅に延ばすことができるが,潮流のある中でAUV を所望の位置に完全に静止させるのは難しい.そこで,送受電コイルの精密なアライメントを必要とせず,ポジションフリーで充電できる新たな給電方式が求められる.筆者らは,電磁波が伝わりにくい海中でも離れた場所に電力を送ることのできる海中向けの給電技術として,磁界結合方式のポジションフリー海中給電方式を提案している.伝送距離の長距離化のアプローチとして,直径3.4 m の送電コイルを7 段用いたドミノ方式により10 m 先の受電コイルに100 W の電力を送ることに成功している.またAUV の充電に必要な大電力を給電するためのアプローチとして,直列3 連送電コイルと,フェライト付き金属製中空容器に巻き付けた受電コイルにより,80% を超える高効率な電力伝送を達成しており,今後は実際のAUV を用いた実海域での実証を予定している.本稿ではこれら2 方式の海中給電技術について,システム設計手法と特性評価について解説する.
子どもに教えたい通信のしくみ
こんなツール,使っています
街plus探訪
科学館・博物館めぐり
若者よ!世界にでよう!
巻末言
編集後記
通信がみえる一枚の写真
feedback
Top