AUV(Autonomous Underwater Vehicle)は海底調査やインフラ施設の監視などで使用されるが, バッテリー駆動のため活動時間に制約があるとともに,充電のたびに海から引き揚げる必要があるため作業性に課題がある.海中でワイヤレス充電ができれば運用時間を大幅に延ばすことができるが,潮流のある中でAUV を所望の位置に完全に静止させるのは難しい.そこで,送受電コイルの精密なアライメントを必要とせず,ポジションフリーで充電できる新たな給電方式が求められる.筆者らは,電磁波が伝わりにくい海中でも離れた場所に電力を送ることのできる海中向けの給電技術として,磁界結合方式のポジションフリー海中給電方式を提案している.伝送距離の長距離化のアプローチとして,直径3.4 m の送電コイルを7 段用いたドミノ方式により10 m 先の受電コイルに100 W の電力を送ることに成功している.またAUV の充電に必要な大電力を給電するためのアプローチとして,直列3 連送電コイルと,フェライト付き金属製中空容器に巻き付けた受電コイルにより,80% を超える高効率な電力伝送を達成しており,今後は実際のAUV を用いた実海域での実証を予定している.本稿ではこれら2 方式の海中給電技術について,システム設計手法と特性評価について解説する.
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