日本では未知であったラクヨウクサスギゴケ(Timmia norvegica var.norvegica)を長野県北部の鑓ヶ岳で見出した.これにより,日本産クサスギゴケ属(Timmia)は,ミヤマクサスギゴケ(T. megapolitana Hedw.)と合わせて2種となった.本種は北半球の北緯40°以北に広く分布することが知られており,今回の日本の産地は本種の分布の南限となる.また,北半球の高緯度地域の石灰岩地に分布する種が,日本の高海抜域の石灰岩地に生育することが知られており,本種もその一例と考えられる.ラクヨウクサスギゴケは,(1)葉身細胞に高い円筒形のマミラをもつ,(2)葉の基部に透明で壊れやすい細胞をもつ,(3)葉が落ちやすい,(4)異型の葉をもつことで,ミヤマクサスギゴケから区別される.また,ラクヨウクサスギゴケは亜寒帯に,ミヤマクサスギゴケは冷温帯に生育する.
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