宮崎県の苔類相を再検討するため,調査が十分に行われていない県北部において詳細な苔類の調査を行った.その過程で,ヤスデゴケ属の植物で日本産のどの種にも当てはまらないものがあることに気が付いた.この植物の形質を外国産の種も含めて詳細に比較研究した結果,新種として扱うのが妥当であるという結論に達した.この新種(Frullania pseudoalstonii,ゴマダラヤスデゴケ)は,日本産の種では葉の背片基部に列状の眼点細胞を有するホソヤスデゴケとアオシマヤスデゴケに最もよく似ているが,この両種とは葉の背片全体に眼点細胞が散在していること,早落性の葉を有することによって区別することができる.ゴマダラヤズデゴケは東南アジアに広く分布するFrullania alstonii Verd.およびその変種(var. pfleidereri Hatt.)と近縁の種と考えられる.F. alstoniiとその変種も葉の背片に列状の眼点細胞と背片全体に散在する眼点細胞を有するが,葉は早落性ではないこと,葉の縁から仮根状の突起を出さないこと,腹葉が小さくて重ならないこと,葉の腹片が茎の方向に傾くことによって明確に区別することができる.
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