タイ類ケビラゴケ科のRadula fujitae Furuki(フジタケビラゴケ,新称)を沖縄島から採集された標本に基づき,新種として記載した.本種の特徴は,(1)植物体が透明感のある濃緑色をしていること,(2)尾状枝を有すること,(3)茎の断面で,細胞は厚壁であること,(4)葉は扁平で,広卵形であること,(5)葉が小さい細胞で縁取られること,(6)葉の腹片は扁平,長方形で,その基部は茎をほとんど被わないこと,(7)細胞の表面は平滑であることなどである.本種は尾状枝を持つことからsect. Amentulosaeに属する.この節には,日本にタカサゴケビラゴケRadula Formosa(Meissn. ex Spreng,)NeesとチャケビラゴケRadula brunnea Steph.がすでに知られている.これら2種とは,植物体が透明感のある濃緑色をしていることや葉が小さい細胞で縁取られることなどにより,容易に区別できる.最も近縁と考えられる種はニューギニアに固有なRadula verrucosa Yamadaであるが,この種は尾状枝が腹側に広く展開し,葉の細胞表面にベルカがあることで本種と区別できる.なお,学名と和名は基準標本の採集者である藤田明嗣氏を記念している.
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