武道学研究
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30 巻, 1 号
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  • 松本 ディビット, 武内 政幸, ビエル マイケル, 木村 このみ, 中島 〓
    1997 年 30 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1997/08/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    1.〔緒言〕
    他のスポーツでは,ストレスやストレス対処法と競技間の関連性について多くの研究が行なわれてきたが,今日まで柔道においてはこれらの要素と柔道選手の性格との相関関係や競技力に対する総合的影響についての研究は比較的少ない。この心理学的構成概念に対する包括的研究は,競技やその他の目的のために信頼のおける知識を必要としている柔道コーチにとって非常に有益である。
    2.〔研究方法〕
    アメリカ人強化柔道選手は,1996年夏期オリンピック選考会の試合前夜に心理的総合テストを行なった。この総合テストは,性格テスト(5評定尺度),自巴制御尺度,2種類の不安に関する調査票,2種類の自信に関する調査票,精神状態に関する調査票,ストレス対処に関する調査票(8評定尺度)を含む。各選手の競技は,翌日行なわれた試合での勝敗率と最終順位によって評価された。また比較のため他の試合前に強化選手以外の男女柔道選手に対しても同様の心理学的総合テストを行なった。
    3.〔結果〕
    心理的構成概念間の相互関係を示す6種類のモデルをこれらの概念の競技に対する予測能力と共にテストした。重回帰分析を用いたpath analyses(因果性の回帰)によって各モデルの価値を評価した。この論文で報告した一つのモデルは,心理的構成概念間の相互関係の説明力が最も高く,競技の予測に対して直接的また間接的貢献度が最も高かった。これらの心理学的構成概念において強化選手とその他の選手間,そして男女間で差が見られた。
    4.〔結論〕
    本研究では,試合に対する心構えや心理状態における柔道選手の敗者と勝者間の差を報告し,柔道選手の複雑な精神構造の一端を明らかにした。
  • 直原 幹, 市川 真澄, 山神 眞一, 宮本 賢作
    1997 年 30 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 1997/08/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    The location of the stance during the standard position (Chudan-no-kamae) in Kendo measured from skilled Kendo players (n=28) were divided in the two types, high grade type (=HG) and middle grade type (=MG), according to the trained career (=Dan-i and playing career) of them. The length, width and left foot angle made from vertical line estimated from the location of the stance were compared between HG and MG. The differences of equilibrium between HG and MG were studied in student Kendo players (n=10). The parameters of equilibrium determined by analyzing the center of the foot pressure were the displacement of the body sway and the body sway area. These parameters were compared between HG and MG. The length of the stance (cm/Height) was shorter significantly (p< 0.05) in HG (=0.12±0.03)than in MG (=0.15±0.05). In the width and left foot angle of the stance, there was no difference between HG and MG, respectively. The displacement of the body sway was shorter significantly (p< 0.01) in HG than in MG. As the total period kept standing, mean value of the displacement in HG (=716.6mm) was 14% shorter than in MG (=830.6mm). In the body sway area, there was no difference between HG (=28.9± 13.1cm2) and MG (=30.9 ± 17.0cm2). These results suggest that the equilibrium in Kendo posture correlate closely with the length of stance. In the present paper, correlation between biomechanical properties of the different stance types in Kendo players and skill levels of them are also discussed.
  • 飯田 穎男, 松浦 義行, 松本 デービット, 小森 富士登, 中島 〓, 武内 政幸, 田中 秀幸
    1997 年 30 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 1997/08/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    国際大会,全日本学生柔道優勝大会に出場した選手を含む4大学,95kg超級柔道部員63名を対象として体格・基礎体力テスト8要素10項目の測定結果より,セルコ社製BI法(SIF-891)による,Percent bodyfat(%) について各群の人数がほぼ等しくなるように,即ち18.5-24.0%(N=12),24.1-27.0%(N=12),27.1-28.9%(N=13),29.2-32.0%(N=13),32.2-42.1%(N=13)の5群の下位標本に分類し,体脂肪率群間の差異を求め,基礎体力と体脂肪率との関連について検討した結果,次のような結論が得られた。
    1)Percent body fat(%) の増加とともに体重も増加する。
    2)400m走で代表される瞬発的持久性はPercent body fat(%) の増加とともに顕著に低下する。
    3)Side Step で代表される敏捷性,垂直跳びで代表される瞬発力は, Percent body fat(%)24% を境にこれらの基礎体力要素のレベルが分かれると推測された。
    4)Bass dynamic balance test で代表される動的平衡性は, Percent body fat(%)の増加と共に劣る。
    以上の結果より重量級選手の競技力として必要な基礎体力のトレーニング法に重要な示唆が得られた。今後更に被検者を多く各階級別について,その基礎体力の構造,身体組成,各項目間の相関等々柔道競技における選手の基礎体力の適性について検討して行きたいと思っている。
  • 中島 〓, 飯田 穎男, 松浦 義行, 武内 政幸, 田中 秀幸, 小森 富士登
    1997 年 30 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 1997/08/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    I.目的
    女子柔道選手の競技力向上のための基礎体力に関しての研究は比較的少ない。そこで,今回は大学女子柔道選手の基礎体力の構造を明らかにし,大学男子柔道選手と比較して今後の女子柔道選手の基礎体力を評価する項目の選択および、評価に役立たせることを目的とした。
    II。結果と考察
    われわれの先行研究より,柔道選手の基礎体力として重要と思われる8要素((1)長育,(2)幅量育,(3)静的筋力,(4)敏捷性,(5)瞬発力,(6)瞬発的持久性,(7)柔軟性,(8)動的平衡性)を大学女子柔道選手37名について因子分析的手法を用いて,大学女子柔道選手の体力の構造の特性を推定した。
    その結果,(1)幅量育因子,(2)長育および静的筋力因子,(3)瞬発的持久性および動的平衡性因子の3因子が抽出された。
    また,大学男子柔道選手105名について女子と同じ方法で分析した結果,(1)幅量育および瞬発的持久性因子,(2)体格および静的筋力因子,(3)瞬発力因子の3因子が抽出された。
    両群間について比較検討した結果,程度の差こそあれ,余りその差は認められなかった。
    III.結論
    大学女子柔道選手の因子構造は,第1因子は幅量育因子,第2因子は長育および静的筋力因子,第3因子は瞬発的持久性および動的平衡性因子が抽出された。
    (1)大学女子柔道選手は長育・幅量育(体格)の貢献度が高く,共通性も体重は0.91を越えており個人差を説明する貴重な項目となっている。
    (2)大学女子柔道選手は大学男子柔道と比較して,筋力においては貢献度が低く,また共通性も低いことから説明されていない部分が大きいことを示唆している。
    (3)今後は,被検者をより多く測定し,女子柔道選手の競技力に必要な要素・項目についてさらに検討していきたいと思っている。
  • 吉村 良孝, 今村 裕行, 西村 誠司, Anthony T. NAKAZAWA
    1997 年 30 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 1997/08/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,その場基本(15分),移動基本(10分),一人打ち込み(10分),二人打ち込み(15分),型(20分)の空手道練習中の心拍数(HR),血中乳酸および主観的運動強度(RPE)を測定し,これらの練習がアメリカスポーツ医学会が推奨している呼吸循環機能を改善・維持するための運動強度(閾値)を上回るかどうかについて検討することである。対象は技術レベルの高い男子大学空手道部員7名である。
    5種類の空手道練習中の平均血中乳酸濃度とRPEはそれぞれ1.1±0.3 mmol・1-1-3.1±0.5mmol・1-1と12.1±2.2-15.1±1.1の範囲内であった。またその場基本の運動強度は閾値を下回ったが,移動基本,一人打ち込み,二人打ち込み,型の運動強度は閾値を上回った。
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