I.目的
女子柔道選手の競技力向上のための基礎体力に関しての研究は比較的少ない。そこで,今回は大学女子柔道選手の基礎体力の構造を明らかにし,大学男子柔道選手と比較して今後の女子柔道選手の基礎体力を評価する項目の選択および、評価に役立たせることを目的とした。
II。結果と考察
われわれの先行研究より,柔道選手の基礎体力として重要と思われる8要素((1)長育,(2)幅量育,(3)静的筋力,(4)敏捷性,(5)瞬発力,(6)瞬発的持久性,(7)柔軟性,(8)動的平衡性)を大学女子柔道選手37名について因子分析的手法を用いて,大学女子柔道選手の体力の構造の特性を推定した。
その結果,(1)幅量育因子,(2)長育および静的筋力因子,(3)瞬発的持久性および動的平衡性因子の3因子が抽出された。
また,大学男子柔道選手105名について女子と同じ方法で分析した結果,(1)幅量育および瞬発的持久性因子,(2)体格および静的筋力因子,(3)瞬発力因子の3因子が抽出された。
両群間について比較検討した結果,程度の差こそあれ,余りその差は認められなかった。
III.結論
大学女子柔道選手の因子構造は,第1因子は幅量育因子,第2因子は長育および静的筋力因子,第3因子は瞬発的持久性および動的平衡性因子が抽出された。
(1)大学女子柔道選手は長育・幅量育(体格)の貢献度が高く,共通性も体重は0.91を越えており個人差を説明する貴重な項目となっている。
(2)大学女子柔道選手は大学男子柔道と比較して,筋力においては貢献度が低く,また共通性も低いことから説明されていない部分が大きいことを示唆している。
(3)今後は,被検者をより多く測定し,女子柔道選手の競技力に必要な要素・項目についてさらに検討していきたいと思っている。
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