本研究は,大学柔道部員,その指導者,および警察柔道選手を合わせた318名を対象に,膝関節損傷についてのアンケート調査を行った。その目的は,柔道選手における膝関節靱帯損傷の実態と損傷後の影響,そして,その回復を目指した処置としてのリハビリテーションの効果について明らかにするためである。その結果,以下の点が明らかになった。
1)今回調査対象となった318名(女子7名を含む)のうち,膝の損傷は,全外傷数663例中154例あり,それは全体の23.2%を占めていた。膝関節靱帯損傷は,膝損傷全体の79.2%に認められた。整形外科医による診断の結果,膝関節靱帯損傷者全体の67.2%が重傷度II度もしくはそれ以上であった。
2)リハビリテーションを行った症例については,十分な効果が認められたが,それは全症例中の13.7%だけであった。残りのうち,77.1%にあたる者は,可動域や筋力等のトレーニングをある程度は行ったが,回復途中で専門競技に復帰してしまうことが多かった。そのため彼らの体調は,トレーニング不足のために,十分管理されなかった。このような不十分な管理状況の結果,後遺症も残した者は,55.8%にも及んだ。
3)本研究では,12人だけがリハビリテーション・プログラムを受けたが,彼らの筋力評価および機能評価は,筋力トレーニングを行った後に受けた体重支持指数に基づく診断によれば,十分に回復したと判断された。これらの結果から,適切な診断やI・C・E・S・R処理を含む,身体面と精神面の両方を考慮して作られるリハビリテーション・プログラムに厳格に従いながら,リハビリテーションを実行することは,膝関節靱帯損傷から回復するための一つの有効な方法であると推察された。
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