つくば市東部を流れる花室川中流域の河床からは,多数の大型哺乳類化石が産出している.その化石の中でも
Palaeoloxodon naumanni (Makiyama)(ナウマンゾウ)の臼歯と切歯が大多数を占める.花室川中流域を調査したところ,これらの哺乳類化石の含有層は,更新世末期の桜川段丘堆積物に相当する緩斜面堆積物であることがわかった.その中に含まれる材や泥炭を用いて
14C年代を測定したところ,化石含有層は最終氷期極相期より前の約3.5~2.5万年前の堆積物であることが明らかとなった.また同層から採取された植物化石を検討したところ,
Pinus koraiensis SieboldetZuccarini
,Picea属,
Larix属などの針葉樹と
Styrax japonicus Siebold et Zuccarini,
Betula属などの広葉樹の球果や種子が同定された.以上の年代,植物化石の検討により,哺乳類化石含有層堆積時は,冷温帯の気候下で広葉樹と針葉樹が混合した森林が分布していたことが推定された.
抄録全体を表示