飛騨帯の古期花崗岩類はチタン鉄鉱系に属し,その全岩酸素同位体比(δ
18OSMOW)は高く (平均10.5 ‰),中生代前期花崗岩類は磁鉄鉱系に属し,低いδ
18O値(平均7.9‰) を持つ.δ
18O 値は帯磁率やFe2O3/FeO 比と逆相関する点で,日本の白亜紀‐古第三紀花崗岩類と共通の性質を示す.古期花崗岩類は大きいアルミナ飽和度を持ち,その起源物質には,頁岩類の関与が考察される.一方,古期花崗岩類の多くは高いSr/Y比を示し,チタン鉄鉱系であるが,アダカイト質である点で特異であり,これは環太平洋地域における最初の発見である.アダカイト質岩の混在は中生代前期花崗岩類にも認められ,特に地殻物質の混入が考えられる早月川,打保,八尾,庄川などの内側深成岩体,及び能登半島の諸岩体で顕著である.これらの事実はアダカイトの成因の多様性を物語っている.
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