地質調査研究報告
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57 巻 , 11-12 号
地質調査研究報告
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巻頭言
  • 高田 亮, 中野 俊, 石塚 吉浩
    2007 年 57 巻 11-12 号 p. 327-328
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    富士火山は,その裾野を引く美しい姿故に多くの国民を魅了してきた.浮世絵にも,絵画にも,写真にも多く使われてきた.そのために富士火山の形に心を奪われてしまい,活火山の歴史を忘れがちになる.南東山腹をよく見ると直径 1 km の大きな火口があることに気づく.1707 年の宝永噴火で形成された火口である. 2007 年は,宝永噴火から 300 周年を迎える.このような目で山体をよく見ると,多くのスコリア丘やスコリア丘群としての火口や火口列が見つかる.これら火口群の噴火史を調査することにより,美しいベールに包まれた富士火山の,それとは似ても似つかぬ過去の火山活動を明らかにすることができる. 富士火山は,実は,噴火活動に盛衰の波がある火山である.つまり,噴火規模や噴火間隔が様々であること,噴火様式の多様性があることが指摘されている(例えば,高田,2003).この特徴は,1 万年間に噴出量 1 km3 前後の噴火が少なくとも数回起こっていることや,宝永噴火から現在まで続いている静穏期などに表れている.富士火山の将来予測を考える上では,このような不規則性をもつ,言葉を換えれば,変化が激しい進化している火山を定量的に評価するための指標を探ることが必要なのである.そのため,富士火山で,噴出量,噴火位置,噴火様式などの時系列データを整備することが第一段階の目標である. 富士火山は,先人達の調査により,地質図が作成され(津屋,1968),火山灰の層序が明らかにされてきた(町田,1977;上杉,1990).それ以後,宮地(1988)の研究により,山腹噴火の相対的層序が明らかにされた.しかし,溶岩流と火山灰の対比が十分なされていなかった.多くの山腹噴火の定量的な噴火履歴も十分明らかにされていなかった.産業技術総合研究所では,富士川河口周辺の活断層調査に始まる富士宮地域の地質図作成計画以来(高田ほか,2000),富士火山の地質図作成の調査を行ってきた.しかし,地表踏査では,上記の問題を解決するには至らなかった.山頂噴火に比べると,不足している山腹(側)噴火の諸情報を取得する必要があった. 2000 年~ 2001 年にかけて富士山の下で低周波地震が多く発生し,社会的に富士山の活動が注目を集めるようになり,科学技術振興調整費「富士火山の総合的な研究」(2001 ~ 2003 年)が始まった(藤井,2004). 産業技術総合研究所・地質調査総合センターでは,その中でトレンチ調査を分担した.本プロジェクトには,産学官から多くの研究者が参加した.2004 年以降も,トレンチ調査と火山灰分析が産総研の予算で続けられた.以上の一連のプロジェクトでは,これまでにない精度で,情報が不足していた富士山の山腹噴火に関する噴火位置,噴火時期の基礎情報が得られた.スコリア丘山頂のトレンチというはじめての試みも実行され成果を収めた.先人達の時代に比べると,炭素同位体を使った年代測定法の技術が格段に進歩した.航空機レーザー測量による画像解析技術のルネッサンスもあった.本特集の研究では,これらの最新の技術も利用された.一方で,重機がはいらない藪に被われたスコリア丘山頂で,地道な人力掘削が行われた.人力掘削を担当して頂いた山本義人ほかの方々には大変お世話になった.この場を借りて御礼申し上げます. 本特集は,2001 ~ 2005 年の期間に得られた基礎データを報告するものである.掘削露頭での貴重な情報や再現性のあるプロセスを残すため,加工される以前の基礎データが,カラー写真,柱状図や数値データとともに含まれている.既に一部のデータは,内閣府の富士火山のハザードマップに利用されている.また,一部の年代値データは,既に論文にも公表されている(山元ほか,2005;高田ほか,2007). 本特集では,できる限り用語の統一を試みたが,著者等のオリジナリティを優先したため論文ごとに使い方が異なる部分がある.また,降下スコリアの名称に関しては,従来使用されている名称を利用したが,対比できない降下スコリアは,論文ごとに,便宜的に名称を定義した. 本論の内容を以下に紹介する. 「富士火山南山腹のスコリア丘トレンチ調査による山腹噴火履歴」(高田 亮ほか)は,2002 年秋に,最初にトレンチ調査を試みた成果の報告である.「トレンチ調査から見た富士火山北‐西山腹におけるスコリア丘の噴火年代と全岩化学組成」(石塚吉浩ほか)は,西山腹を例にして,側噴火の層序と化学組成の時間変化の特徴をまとめた論文である.「富士火山北西山麓に分布するスコリア丘の噴火史の再検討」(鈴木雄介ほか)は,大室山-片蓋山同時噴火を明らかにしたことをはじめ北西山麓の新知見をまとめた論文である.「富士火山,北東麓の新期溶岩流及び旧期火砕丘の噴火年代」(中野 俊ほか)は,集落に近い,富士火山北東麓及び忍野村における,溶岩流と火砕丘の年代と層序を明らかにした論文である.「Eruptive history of Fuji Volcano from AD 700 to AD 1,000 using stratigraphic correlation of the Kozushima-Tenjosan Tephra」(Kobayashi et al.)は,神津島天上山838 年噴火の火山灰の層位を使って,絶対年代測定法では誤差が大きかった富士火山の噴出物の年代に高精度の時間軸を入れた論文である.
論文
  • 高田 亮, 小林 淳
    2007 年 57 巻 11-12 号 p. 329-356
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    富士火山南山腹で山腹噴火の活動履歴を明らかにするために,トレンチ調査を試みた.スコリア丘山頂でのトレンチ調査が,山腹噴火の活動履歴の高精度化に極めて有効であった.本トレンチ調査により,これまでテフラ層序の確立が困難であった富士火山南山腹の鍵テフラの層序が明らかとなった.この鍵層を使って,山腹噴火の活動履歴を復元した.Yu-2 に覆われない山腹噴火は須山胎内溶岩,南ガラン塚,大淵スコリア,小天狗溶岩である.大淵スコリアの給源は,従来考えられた高鉢山でなく,北高鉢付近にあることが明らかになった.Yu-2 と S-10 に挟まれる山腹噴火は,浅黄塚,高山,腰切塚である. S-10 と F3 に挟まれる山腹噴火は,白塚のみである.F2 と鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)降灰層準に挟まれる山腹噴火は,東臼塚と,それよりやや下位と思われる平塚である. K-Ah の降灰層準付近に, 活動したと思われる山腹噴火は,檜塚と西臼塚である.K-Ah の降灰層準より下に位置する山腹噴火は,北高鉢,高鉢山,北東高鉢,黒塚,アザミ塚である.
  • 石塚 吉浩, 高田 亮, 鈴木 雄介, 小林 淳, 中野 俊
    2007 年 57 巻 11-12 号 p. 357-376
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    富士火山北‐西山腹に位置する 18 個の噴火年代未詳スコリア丘でトレンチ調査を実施した.トレンチ断面で,テフラ層序と火山灰土壌の厚さから,スコリア丘の噴火年代を見積もると,1)8,300 B.C. から 6,000 B.C. にサワラ山,二ッ山,永山が,2)5,300 B.C. から2,600 B.C. に弓射塚,西剣,北西奥庭,丸山,塒塚が,3)2,300 B.C. から 1,800 B.C. に八軒山,西幸助丸,幸助丸,戸嶺,臼山が,4)1,600 B.C. から 1,300 B.C. に北西弓射塚,東剣,鹿の頭,片蓋山が形成されたことが明らかとなった.これらスコリア丘の噴出物は,同時期に流下した溶岩流の岩質,全岩化学組成の特徴と同様の時間変化傾向を示す.最近 1 万年間をみると,北‐西山腹の側噴火堆積物は 2,300 B.C. から 1,800 B.C. に K2O 量,FeO*/MgO が減少している.
  • 鈴木 雄介, 高田 亮, 石塚 吉浩, 小林 淳
    2007 年 57 巻 11-12 号 p. 377-385
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    富士火山北西山麓で行ったトレンチ調査及びそれに関連した露頭観察に基づき,北西側の先端部に分布するスコリア丘と周辺溶岩流の層序を再検討した.片蓋山,鹿の頭,栂尾山,弓射塚,北西弓射塚のトレンチでは,大室スコリアが大室山と片蓋山の両スコリア丘を給源とすると推定できた.天神山・伊賀殿山及び氷池・白大龍王のスコリア丘とそれらから流下した溶岩流は,層序関係,放射年代値,神津島起源の広域テフラから,それぞれ西暦838~864年,西暦410~770年の間に噴火した.
  • 中野 俊, 高田 亮, 石塚 吉浩, 鈴木 雄介, 千葉 達朗, 荒井 健一, 小林 淳, 田島 靖久
    2007 年 57 巻 11-12 号 p. 387-407
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    富士火山噴出物の噴火年代決定を目的として産総研が実施したトレンチ調査のうち,北東山麓で行ったトレンチ調査結果及びそれに関連した露頭観察の結果をまとめ,そこから得られた放射性炭素年代測定値を合わせて報告する.トレンチ調査の対象は,新富士旧期の大臼,小臼などの火砕丘群及び新富士新期の檜丸尾,鷹丸尾,中ノ茶屋,雁ノ穴丸尾,土丸尾などの溶岩流群である.
  • 小林 淳 , 高田 亮, 中野 俊
    2007 年 57 巻 11-12 号 p. 409-430
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    富士火山,伊豆半島周辺(箱根・東伊豆)及び伊豆諸島(三宅島・新島)で採取した,おおむね地表付近の風化火山灰土中に含まれる珪長質降下テフラ起源の火山ガラスを対象にして,電子・実体顕微鏡観察,発泡度解析及び屈折率測定等から給源テフラの同定を試みた.火山ガラスの粒径分布,特徴的に低い屈折率のほか,発泡度の特徴等から,これらの地域には神津島天上山テフラ(西暦838年)起源の火山ガラスが広く分布することが明らかとなった.神津島天上山テフラ起源の火山ガラスの特徴と,その火山ガラスが検出された層位との関係から,富士火山の側火山起源噴出物(スコリア・溶岩流)の噴出年代の整理を試みた.その結果,従来の炭素同位体年代測定では分離できなかった,9~10世紀頃に頻発した富士火山の多くの噴火に対して,噴出年代の制約条件としての高精度な時間軸を設定することができた. 本研究の結果,神津島天上山テフラ起源の火山ガラスの濃集層準(降灰層準)がより上位にあると判断した噴出物は,「大淵スコリア」,「鑵子山スコリア」及び「西二ツ塚スコリア」(以上,南及び南東斜面)と,「鷹丸尾・檜丸尾第2溶岩流」及び「御庭・奥庭第2噴火噴出物」(以上,北及び北東斜面)である.一方,神津島天上山テフラの降灰層準よりがより下位にあると判断した噴出物は,「不動沢溶岩流」,「大淵丸尾溶岩流」,「東臼塚南溶岩流」及び「水ヶ塚丸尾溶岩」(以上,南及び南東斜面)と,「剣丸尾第2溶岩流」,「貞観噴火噴出物(青木ヶ原溶岩流と長尾山 スコリア)」及び「天神・イガトノ噴火噴出物」(以上,北及び北東斜面)である.このほか,富士火山の東山腹周辺のテフラ層序についても,神津島天上山テフラの降灰層準との層位関係等に基づき新たに再検討し,「須走溶岩」が神津島天上山テフラよりも上位にあることが明らかになった.
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