地質調査研究報告
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57 巻 , 9-10 号
地質調査研究報告
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巻頭言
  • 木村 克己
    2007 年 57 巻 9-10 号 p. 259-260
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2014/06/18
    ジャーナル フリー
    産総研では,地質分野の重点課題として,平成 14 年度から大都市圏の平野の地下地質を対象とした都市地質研究プロジェクトを開始した.本プロジェクトは,大都市圏の地質災害軽減・環境保全・土地利用に資する総合的な地質情報を提供することを目的としている(木村,2004). 平成 14 年度に開始してから平成 17 年度までの 4 年間は,分野間融合的研究課題「大都市圏の平野地下地質・構造の総合的解析と地震動予測等の応用研究」(H14),分野重点課題「大都市圏の地質災害軽減・環境保全を目的とした地質学的総合研究」 (H15 ~ 17) として,東京都土木技術研究所(現 土木技術センター)及び埼玉県環境科学国際センターの協力を得て,プロジェクト研究を実施してきた.現在は,地質情報研究部門重点課題「関東平野の地震動特性と広域地下水流動系の解明に関する地質学的総合研究」(H18 ~ 20)を中心に調査・研究を実施している. 本特集号は,このプロジェクトのうち,首都圏東部の東京低地と中川低地に分布する沖積層に関する研究成果報告として,2004 年の特集号(地調研報,vol. 55,no. 7/8)に続く第二弾となる.本特集号には,ボーリングコアに関する地質学的研究成果 2 編(田辺ほか,2006a; 田辺ほか,2006b)と微動アレイ探査に関する論文 1 編(林ほか,2006)が掲載されている.その概要は以下のとおりである. 東京低地東縁における沖積層の模式層序の確立を目的として,平成 15 年度に東京都葛飾区の新宿地区と高砂地区にてボーリング調査を実施した.田辺ほか(2006a) は,これらの調査で得られたオールコア(GSKNJ-1 と GS-KTS-1)の堆積相,放射性炭素年代値,堆積物物性などの解析結果に加えて,これまでに収集・構築したボーリング柱状図データベースを併用することで,東京低地東縁における堆積相と堆積システムの時空間分布を明らかにしている. 荒川低地の足立区本木地区で沖積層の模式層序の確立を目的に,平成 16 年度にボーリング調査を実施した.田辺ほか(2006b)はその調査で得たオールコア堆積物(GS-AMG-1)について,堆積相,放射性炭素年代値,堆積物物性などの解析の結果を報告し,堆積環境の変遷を明らかにしている. 埼玉県の草加市・三郷市域は,平成 14 年度以降,沖積低地下の埋没谷地形と沖積層の堆積相・物性の解明, そして地震動特性を明らかにする模式フィールドとして,これまで,南北に延びる埋没谷を横断する断面に沿って,平成 14 年度:草加市柿木(GS-SK-1;石原ほか,2004a),平成 16 年度:三郷市彦成 (GS-MHI-1),平成 18 年度:三郷市釆女新田(GS-MUS-1)にてそれぞれボーリング調査と PS 検層を実施した.また,各ボーリング地点をつなぐ東西測線で,ランドストリーマ S 波反射法探査(Inazaki, 2005)を行っている.これら地点情報としてのボーリング調査,2 次元情報としての反射法探査結果に加えて,3 次元的地盤物性情報を直接得るために,都市地質研究プロジェクトでは小規模微動アレイ探査を行ってきた.本特集号の林ほか (2006) は,これまでの小規模微動アレイ探査で得られた測定結果と S 波速度構造モデルを報告し,地質学的に解明された地質モデルとの比較から同探査法が都市域で有用であることを実証している. 今後,今回盛り込まれなかったボーリング調査・コア解析の結果及び物理探査,地震動特性などの研究成果を随時報告していく予定である. なお,東京低地と中川低地の沖積層の研究成果として,他に,平成 16 年度出版の地調研報特集号第一弾(石原ほか,2004a; 石原ほか,2004b; 宮地ほか,2004;中島ほか,2004),平成 18 年出版の地質学論集「沖積層研究の新展開」(木村ほか,2006;中島ほか,2006;田辺ほか,2006;田中ほか,2006)にそれぞれ論文が掲載されているので併せて参照していただければ幸いである.また,コアの解析に関連して取得した堆積相の画像データ,密度・含水比・帯磁率・色調などの大量の測定データについては,公表論文ではその一部しか表現されていないが,産総研の研究情報公開データベース (RIO-DB) 「関東平野の地質・地盤データベース」(http://www.aist.go.jp/RIODB/riohomej.html)において,順次公開を予定しているので利用していただきたい. 最後に,本特集号では,産総研の斎藤文紀,田村 亨,牧野雅彦の 3 氏,埼玉県環境科学国際センターの八戸昭一氏に査読していただいた.ここに深く感謝いたします.
論文
  • 田辺  晋, 中島  礼, 中西 利典, 石原 与四郎, 宮地 良典, 木村 克己, 中山 俊雄, 柴田 康行
    2007 年 57 巻 9-10 号 p. 261-288
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2014/06/18
    ジャーナル フリー
    下総台地と接する東京低地の東縁には,標高 -40 ~ 0 m に N 値 20 ~ 50 の砂体が分布している.この砂体は中・上部更新統の下総層群や沖積層の中間砂層として解釈されてきた.しかし,その詳細な分布や成因については不明な点が多い.東京都葛飾区の新宿地区と高砂地区から採取した 2 本のボーリングコア堆積物の岩相と生物化石相の詳細な観察と放射性炭素年代測定の結果,この砂体は下総台地の南縁の市川砂州から北西方向に伸長する砂嘴堆積物であることが明らかになった.砂嘴は,完新世中期以降,奥東京湾口の千葉県市川市から葛飾区高砂地区にかけて幅 5 km にわたって発達した.砂嘴堆積物の本体は貝化石が点在する砂層から構成されるのに対し,その縁辺は再堆積した貝化石や中礫を多く含む砂泥互層から構成される.砂嘴堆積物は,東京低地の臨海部や中川低地に分布するデルタ性の内湾泥層と比べ,砂粒含有率と密度が大きな砂層から構成される.よって,その分布は地震動予測や都市計画を行うにあたって重要になると考えられる.
  • 田辺  晋, 中島  礼, 中西 利典, 木村 克己, 柴田 康行
    2007 年 57 巻 9-10 号 p. 289-307
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2014/06/18
    ジャーナル フリー
    荒川流系の末端の東京都足立区本木地区には,最終氷期最盛期までに形成された開析谷を充填する河成から海成の沖積層が分布している.そして,この地域の沖積層は中川や古東京川流域のものと比べ,厚層な河成の砂質堆積物から構成されることを特徴とする.荒川の開析谷軸部において掘削した GS-AMG-1 ボーリングコア堆積物の堆積相解析,放射性炭素年代と物性の測定の結果,T.P.-55.7 m 以浅に分布する沖積層は,下位より,(1) 礫層(網状河川チャネル堆積物),(2) 砂層と泥炭質なシルト層(蛇行河川氾濫原堆積物),(3) 砂層(潮流の影響した河川チャネル堆積物),(4) 貝化石を含む砂泥互層(潮汐の影響した上方深海化する浅海性堆積物),(5) 貝化石を含むシルト‐砂質シルト層(プロデルタ‐デルタフロント堆積物),(6) 生痕化石のみられる砂泥互層(干潟堆積物),(7) 泥炭質なシルト層(現世の 蛇行河川氾濫原堆積物),埋土から構成されることが明らかになった.(2)~(4) の上方深海化サクセション(12,940 ± 100 ~ 8,030 ± 110 cal BP) と (5)~(7)の上方浅海化サクセション (6,660 ± 180 ~ 2,245 ± 95 cal BP) は,それぞれ最終氷期最盛期以降の海水準上昇と完新世中期以降の海水準の安定もしくは緩やかな下降に伴ってコアサイトに堆積したと考えられる.既報の厚層な河成砂質堆積物は (3)と対比される.GS-AMG-1 の沖積層の密度と含水率,N 値は,砂泥含有率と相関する.
  • 林  宏一, 稲崎 富士, 鈴木 晴彦
    2007 年 57 巻 9-10 号 p. 309-325
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2014/06/18
    ジャーナル フリー
    埼玉県草加市及び三郷市周辺の中川低地において,小規模微動アレイ探査により沖積層が厚く堆積している埋没谷の形状を地表から非破壊で求めることを試みた.テストフィールドは約 6 km × 4 km の長方形であり,この範囲で 104 点の小規模微動アレイ探査を行った.公園などの開けた場所では正三角形のアレイを用いたが,多くの点では道路脇や交差点などを用いた L字型のアレイにより測定を行った.解析の結果,自動車などによる非定常な振動や,非等方なアレイにも関わらず,ほぼ全点において明瞭な分散曲線を求めることができた.得られた分散曲線から逆解析により,深度 70 m 程度までの S 波速度構造を求め埋没谷の形状を推定した.得られた S 波速度構造及び埋没谷の形状は,PS 検層結果や既存のボーリングデータなどから推定される地盤構造と調和的であり,本手法の有効性を立証することができた.
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