本論文は,中国東部,江蘇省東海県の水晶の年代を報告し,水晶を含有する石英脈の形成史と蘇魯超高圧変成帯の上昇侵食史との関係を議論したものである.年代測定に用いた黒雲母試料は石英脈に伴う変質帯から採取され,ArAr法を用いて年代測定を行った.黒雲母と石英脈との関係から得られた年代は水晶の形成年代を表すものと解釈される.分析により,Ar-Arプラトー年代,アイソクロン年代,逆アイソクロン年代として,それぞれ239.8±2.6 Ma,241.0 ± 2.6 Ma, 241.1±2.7 Ma の結果を得た.これらの年代は蘇魯超高圧変成帯における変成作用の頂点の年代(240~245 Ma)と近接しており,石英脈中の水晶は,蘇魯超高圧変成帯の上昇侵食初期に形成されたことを示す.
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