土壌及び堆積物中成分濃度に対する人為的附加を正しく評価してバックグラウンド (自然存在度) を明らかにするため,関東地域で採取された土壌 329 試料,河川堆積物 191 試料,東京湾堆積物 310 試料の主・微量成分の分析値を解析した.土壌や堆積物中の成分濃度を支配する要因としては,母岩や母材中の存在量,粒度組成,風化・続成作用に伴う移動と濃集,生物濃縮の影響等が重要である. 市街地から離れた自然林の土壌中成分濃度に対する人為的附加は無視できた.畑地や水田土壌では,施肥に起因する P2O5, Cd, U の附加が認められ,公園や宅地土壌中 Pb, Zn, Sb, Sn, Hg 等の高濃度も人為的附加と考えられた.旧鉱山地域の河川堆積 物では多くの成分濃度が高いが,人為的な鉱山開発が主原因であろう.超苦鉄質岩地域の堆積物は Mg, Cr,Ni 等に富むがこれは自然要因である.大都市周辺地域の河川堆積物中の Zn, Sn, Pb, P2O5, As, Hg, Cd, Bi, Cu,Sb 等濃度に人為的附加が認められた.東京湾の堆積物では,湾央‐湾奥部の柱状試料の上位層準では人為的附加により Pb, Zn, Sn, Cd, Bi, Sb, Cr 等が高濃度を示すが,湾口部の砂質堆積物ではこの影響は無視できる.関東地域の土壌,河川堆積物,東京湾堆積物における成分濃度のバックグラウンド値を比較すると,地質試料の風化・変質過程で残留物中に保持されやすい成分(Al2O3, TiO2, 重金属類等) は土壌中で,風化・変質に伴って移動・流失する成分 (アルカリ,アルカリ土類金属等) は東京湾堆積物中で最高濃度が得られた.
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