地質調査研究報告
Online ISSN : 2186-490X
Print ISSN : 1346-4272
ISSN-L : 1346-4272
59 巻 , 1-2 号
特集:放射性廃棄物地層処分における熱・熱水の影響評価に関する基礎研究 (その2)
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総説
  • 玉生 志郎, 阪口 圭一, 中尾 信典
    2008 年 59 巻 1-2 号 p. 1-6
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
     本報告は原子力発電環境整備機構の委託研究「熱・熱水の影響評価手法に関する検討」,「同(その2)」,「同(その3)」(原子力発電環境整備機構,2004,2005,2006)として実施した研究成果を,公表論文形式に書き改めたものである.初年度の成果については,既に地質調査研究報告(Vol.55,No.11/12, 2004)に特集:「放射性廃棄物地層処分における熱・熱水の影響評価に関する基礎研究」として公表しているので,ここでは 2~3年目の成果を主に報告する.本研究の目的は,高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究の一環として,わが国における高温地域の地球科学的特性と成因を把握し,概要調査地区選定及びそれ以降の調査段階における熱・熱水の影響評価を行うための調査・解析・評価手法について検討することである.その過程で,東北地方と中国・四国地方での高温地区を含む広域地域のタイプ分けを行い,それぞれの地域の概念図を作成した.また,サブテーマ毎に検討した研究概要は以下のとおりである.
    (1)高温地域の地球科学的特性の検討
     以下に示すテーマ毎の文献調査及びデータの収集・整理を行った.
     ①地球科学的特性に関する情報収集及び 2次元・3次元可視化
     ②紀伊半島の高温温泉の特性検討
     ③高温地区を含む広域地域のタイプ分け
    (2)高温地域の成因の検討 高温地域の成因を検討するために,以下の広域流動シミュレーションによる成因の検討を実施した.
    (3)調査・解析・評価手法の検討 熱・熱水の影響評価における最適な調査・解析・評価手法を確認するために,以下に示す検討を行った.
     ①温泉放熱量に基づく熱異常抽出・特性把握方法に関する検討
     ②地熱井変質データベースの構築と事例 6地域のモデル化による多様な変質環境の検討
     ③放射年代測定法を用いた地熱系の長期変動解析手法
     ④流体地化学に基づく熱・熱水の影響評価手法
    (4)熱・熱水の影響評価のための調査・解析・評価手法
     これまでの研究成果を踏まえて,概要調査計画の立案及び概要調査の実施における「熱・熱水の影響評価のための調査・解析・評価手法」を提案した.
1. 高温地域の地球科学的特性の検討
概報
  • -東北地方と中国・四国地方の例-
    玉生 志郎, 阪口 圭一, 佐藤 龍也, 加藤 雅士
    2008 年 59 巻 1-2 号 p. 7-26
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
     非火山性地域の地下での熱・熱水異常の存在状況や成因を明らかにするために,東北地方中北部,北部及び中国・四国地方をモデル地域に選定して,地形,地質,地温,震源,比抵抗,キュリー点深度,重力基盤,P 波速度などの分布データを収集した.それらの情報はデジタル化後,データベースシステム(G★Base)に登録し,同システムの可視化機能で様々な角度から各種情報を比較検討した.その結果,以下のようなことが明らかとなった.1)深部では,火山フロントより背弧側では高温となり,前弧側で低温となる.背弧側と前弧側では,概して山地域で高温となり低地域で低温となる傾向がある.このような深部の広域的な温度分布は地温勾配,重力基盤深度分布,地震波速度から推定される先第三系基盤岩深度分布,キュリー点深度等温面分布,浅部P波速度と整合的である.2)浅部では,第四紀火山地域で浅所貫入マグマの影響で相対的に高温となる.低地域でも帽岩の影響で多少高温となる.これらの浅部の温度分布は浅部の地温勾配,温泉分布,比抵抗分布,P 波速度構造と相関している.
論文
  • 村岡 洋文
    2008 年 59 巻 1-2 号 p. 27-43
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
     和歌山県本宮温泉の成因解明のため,その湧出を規制している石英斑岩貫入岩体のK-Ar年代や化学分析値等を検討した.本宮温泉の熱源は四国海盆拡大軸の沈み込みによる高い熱流量に求められる.K-Ar年代測定の結果は高山岩株が14.6 Ma,川湯岩床が14.4 Maを示す.化学成分のQ-Or-Ab系相図から,高山岩株や川湯岩床は深度約 20 km付近で発生したと推定される.高山岩株や川湯岩床の主成分や微量成分は典型的なSタイプ花崗岩で,音無川層群の砂岩に類似し,アナテクシスの融解度が限定された条件で,フリッシュ堆積物のうち,砂岩が選択的に融解した可能性を示す.本宮温泉の熱水貯留層は周辺のフリッシュ堆積物に比べて,冷却節理に富み浸透率の高い石英斑岩岩床や岩脈に求められる.地殻熱流量の高い地域に,深度20 km程度から地上まで透水体が存在すれば,広範な熱水対流が起こる.これが本宮温泉の成因といえよう.
概報
2. 高温地域の成因の検討
論文
  • 中尾 信典, 菊地 恒夫, 玉生 志郎
    2008 年 59 巻 1-2 号 p. 53-64
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
     北上低地を含む東北地方の東西 120 km にわたる地形を取り込んだ2次元断面について,地質データ等を参考にして精緻なモデルを作成し,地熱用の多成分多相流体流動シミュレータを用いた広域流動シミュレーションによる感度解析を実施した.その結果,山岳部地下の熱異常(高温部)を定性的に再現するためには,一様ではない熱源(熱流量)を与える必要があることが判明した.また,平野部(低地)では火山性熱源が直下になくても,地形効果による地下水の対流などにより,50 ℃程度の深層熱水が賦存する可能性があることがシミュレーションにより確認された.
3. 調査・解析・評価手法の検討
概報
  • 阪口 圭一
    2008 年 59 巻 1-2 号 p. 65-69
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
     青森地域,中国地域,四国地域を対象として,深度情報を持つ温泉データから,放熱量の情報を活用できるかどうかを検討した.3 地域間で,深度に対する温度・湧出量・放熱量の関係において違いが認められ,非常に広域を対象とした地域間比較ではあるが,地域の地下特性を捉える上での情報となり得る.温泉の湧出量と放熱量は,地層の透水性に大きく影響されていると考えられ,深度と湧出量・放熱量の関係は,その地域の地層の透水性を反映している可能性が指摘できた.このような地球科学的特性を検討するためには,温泉の温度・産出(ボーリング)深度・湧出量・産状が揃っていることが望ましい.
  • 茂野 博
    2008 年 59 巻 1-2 号 p. 71-107
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
     新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の地熱開発促進調査で掘削された調査坑井の変質データについて,(1) 幅広く高度な利用に資する電子データベース化を試みるとともに,(2) 事例 6 地域について各種の図表化処理を行い,概念的モデル化を通じて変質環境の多様性とその原因を検討した.
     (1)坑井変質データのデータベース化では,九州14地域,本州21地域の各報告書について,表計算ソフト(Microsoft社のExcel)を用いて坑井(合計271本)毎の深度-変質鉱物分布データを電子表に整理した.しかし,地熱開発促進調査では変質鉱物の分析・表示の方法・仕様が調査地域によって大きく異なっているためデータの総合的な整理が難しく,また北海道17地域などについては未作業のため,データベースの一般公開化には今後かなりの年月を要する.本報告では,環境特性の指示性が高い変質鉱物16種について,坑井毎の存在度を一覧表に整理するとともに,地域毎の存在度を広域地図上に比較表示して,変質の地域間比較検討を予察的に行った.
     (2)事例地域の変質環境の概念モデル化では,高温2地域として「阿蘇山西部」(熊本県),「八丈島」(東京都),また比較的低温の4地域として「菱刈」(鹿児島県),「本宮」(和歌山県),「王滝」(長野県),「最上赤倉」(山形県)を対象とした.地域毎に坑井検層(温度・地質・変質)データについて,代表的な坑井の個別柱状表示図,横並び柱状表示図,地図上柱状表示図を,地質調査総合センター(2007)の数値地質図GT-3の坑井検層データ処理用プログラム群を使用して作図した.これらの図に基づく6地域の概念モデル化の結果は,様々な原因(地域的な熱源や熱水系の分布・特性,地形・断裂系・岩質分布に規定された不均一な透水構造,気液分離現象に伴う化学的な分化過程など)によって,低温でも多様な変質帯が分布しており,変質調査が非火山性地域の地下環境の把握についても有力な手段となることを示している.
     上記の作業と検討は,放射性廃棄物地層処分に係わる「熱・熱水の影響評価手法に関する研究(2003-2005年度)」の一環として実施したものである.地層処分可能性地域の調査において,変質調査は過去-現在-未来の熱・熱水環境の解明・評価などの目的で重要であり,上記の検討結果は基礎的な情報としての有効利用が期待される.また,変質情報は様々な地圏分野(資源開発,環境保全,災害防止,地下空間利用など)で重要であり,基盤的な地球科学情報の一つとして,熱水変質のみならず,熱変質(変成),続成変質,風化変質などに関する総合的な電子データベースが今後整備されて,容易に幅広くまた高度に利用可能となることが望まれる.
総説
  • 水垣 桂子
    2008 年 59 巻 1-2 号 p. 109-116
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
     電子スピン共鳴(ESR)法を熱・熱水の影響評価に適用する目的で,低温熱水活動史解析への適用可能性,ESR信号の温度特性を利用した詳細な温度推定の可能性,熱の影響範囲評価の可能性について,これまでの研究例を総括し今後の課題を抽出した.ESR法では鉱物の結晶格子欠陥を利用するため,加熱時点だけでなく結晶晶出時も出発点となり,低温熱水活動にも適用できる.測定例としては温泉沈殿物や地下水温で晶出した鍾乳石がある.ESR信号の種類によっては熱水温度程度に加熱すると増大するものがあり,これを利用して考古遺物の加熱温度を詳細に推定した例がある.また熱水の通路が断裂であれば,断裂から離れる方向に見かけ年代値が古くなるはずであり,これを利用して熱の影響範囲や程度を推定することが可能である.しかし ESR信号の温度特性について系統的な長時間加熱や冷却過程の実験を行った例はなく,今後の研究が必要である.
概報
4. 熱・熱水の影響評価のための調査・解析・評価手法
総説
  • 玉生 志郎, 阪口 圭一
    2008 年 59 巻 1-2 号 p. 123-134
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2013/08/28
    ジャーナル フリー
     これまでの原子力発電環境整備機構の委託研究「熱・熱水の影響評価手法に関する検討」,「同(その 2)」,「同(その 3)」での研究成果を踏まえて,概要調査計画の立案及び概要調査の実施における「熱・熱水の影響評価のための調査・解析・評価手法」を検討した.適用可能な調査手法,解析手法,評価手法について,調査項目,調査段階,調査地域のタイプ区分に対応させて検討した.調査対象は大きく浅部と深部に区分される.浅部で考慮すべき要件は,広域表層イメージ,広域地質構造,坑井掘削,温度構造,流体流動,透水係数分布,岩石水反応で,一方,深部で考慮すべき要件は,地下深部温度推定,潜頭性熱源と深部熱源,深部断裂である.調査段階は地表調査段階,ボーリング調査段階,将来予測段階に分けられる.広域地域のタイプ分けでは前弧側低地,前弧側山地,第四紀火山地域,背弧側山地,背弧側低地に分けられる.最終的には,上記の考慮すべき要件に対応した調査手法,解析手法,評価手法を,一覧表として取りまとめた.
feedback
Top