地質調査研究報告
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60 巻 , 1-2 号
特集 : 黄河流域の地下水の収支・循環・利用に関するモデリングと将来予測に関する研究
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総説
  • 石井 武政
    2009 年 60 巻 1-2 号 p. 1-4
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     文部科学省「人・自然・地球共生プロジェクト(RR2002)」の1テーマとして実施された日中国際共同研究「黄河流域の地下水循環モデルの構築および地下水資源の将来予測に関する研究」の概要を報告する.このテーマには産総研,筑波大学,北海道大学,(株)地圏環境テクノロジー,国立環境研究所,中国地質調査局,中国地質環境監測院,中国水文地質環境地質研究所,黄河流域の各省・自治区の地質環境監測站が共同して取り組み,黄河流域の地下水の姿をシナリオに基づいて予測する研究を展開した.
  • Wen Dongguang
    2009 年 60 巻 1-2 号 p. 5-8
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     中国と日本との国際共同研究として実施された黄河流域地下水プロジェクトの経緯,組織,5年間の成果概要について述べる.本プロジェクトは,中国地質調査局と産業技術総合研究所とで結ばれたMOU(研究協力覚書)に基づき実施されたものである.中日双方は,中国第2の河川である黄河の広大な流域を対象に,地下水と表流水などに関する現地水文資料の収集,凍土分布に関するモニタリングと物理探査,地下水の水質分析や酸素・水素安定同位体分析,水文地質構造の解析などにより,地下水の収支・循環機構解明に資するデータの取得に努めた.また,これらのデータをフィードバックしつつ,黄河流域の地下水循環モデルを構築して,同流域の現在と過去20年間にわたる地下水頭の再現,シナリオに基づく2020年まで5年毎の地下水状態の予測を行った.
論文
  • Wen Dongguang, Zhang Fawang, Zhang Eryong, Gao Cunrong, Zhantao Han
    2008 年 60 巻 1-2 号 p. 9-18
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     本報告は,黄河流域の特徴を地形学的状況,気候,水路測量学,経済発展,水資源の需要の観点から,取り纏めている.黄河流域は地形的に西から東に向かって低下するが,大きな二つの段差によって上中下の三面に大別できる.ほとんどの地域は乾燥ないし半乾燥の大陸性モンスーン気候区に属し,相対的に乾燥している.黄河の本流は長さ5,464 kmで,上流,中流,下流に区分される.流域面積は,上流と中流でいずれも38.6×104 km 2 であるが,下流は2.24×104 km 2 と相対的に非常に狭い.また,上流と中流は水資源が豊富であるが,中流域は泥の供給源ともなっている.経済発展は上―中流域と中―下流域で大きな格差がある.これらのデータに基づいて,2010年と2020年の水需要量を予測した.
  • Zhang Eryong, Shi Yingchun, Gao Cunrong, Hou Xinwei, Han Zhantao, Zhao ...
    2009 年 60 巻 1-2 号 p. 19-32
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     地質層序と地質構造の観点から,黄河流域の地域地質を述べ,ついで地質学的特徴から区分した水文地質の概要を報告する.この地域の帯水層は,軟弱堆積層の孔隙性帯水層,砕屑岩の割れ目空隙性帯水層,石灰岩の帯水層,変成岩の帯水層,凍土の帯水層の5タイプに分けられる.また,黄河流域の地下水系は,水理地質条件と地下水涵養,流動,流出の特徴から12系統に分類される.本報告ではそれぞれの地下水系統について詳述し,それらの分布図ならびに黄河上流,中流,下流の代表例として3つの地質断面図を示した.
  • Zhang Eryong, Gao Cunrong, Han Zhantao, Ding Jianqing
    2008 年 60 巻 1-2 号 p. 33-38
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     黄河源流域には凍土地帯と非凍土地帯があり,凍土地帯は季節凍土の卓越する地域と中緯度高山帯永久凍土地域に分けられる.永久凍土地域の開発あるいは保全は,その地域の生態系バランスを左右するが,凍土を後退させる最も直接的な要因は気温の上昇である.1950年代以降,黄河源流域では明らかに気温の上昇傾向が認められ,過去20年間で10年当たり0.28℃上昇の割合となっている.その結果,凍土地帯の縁辺で凍土が縮小し,地下水位の低下と河川流量の減少を招いている.凍土の変化は地下水環境に影響するばかりでなく,草原の変化,野ネズミの異常発生,黄河流量の変化に関連している.
  • 松岡 憲知, 池田 敦, 末吉 哲雄, 石井 武政
    2009 年 60 巻 1-2 号 p. 39-57
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     チベット高原北東部に位置する黄河源流域において,永久凍土分布とその縮小を明らかにするために,2003年から2006年にかけて凍土環境の調査を行った.まず標高3250 ~4800 m間の18 ヵ所において,弾性波探査,電気探査と地温調査により永久凍土の有無を調べ,GISを用いて探査結果に最も合う永久凍土分布図を作成した.また,マドォ測候所(標高4273 m)にて2年間,気温,地温(0 ~8 m深),降水量,積雪深,土壌水分,地下水位の連続観測を行い,地中の熱および水文条件の季節変化について検討した.さらに,地温プロファイルの数値シミュレーションによって,観測されている気温変化(温暖化)によって,永久凍土がどの程度縮小しうるか検討した. 速いP波伝播速度(>2 km/s)と相対的に高い電気比抵抗値(650 ~1100 Ωm)が地下浅い位置に検出された標高4300 m以上の地点では,厚さ10 ~30 mの永久凍土層があると推定された.一方,標高4000 m以下では堆積物全体が遅いP波速度(<1 km/s)を示し,永久凍土は存在しないと考えられる.標高4200 ~4300 mにある広大な沖積低地では,永久凍土は存在しないか,かなり縮小していた.年平均地表面温度(MAST)が負値となるのも4300 m以上で,その標高以上にのみ永久凍土が広範に分布すると予想された.測候所では季節的な凍結が深さ2.6 mまで及んだ.冬季,積雪をほとんど欠くことが,厚い季節凍土層が形成される主因だろう.1980年代の文献には,測候所の地下に永久凍土が存在するとされていたが,深さ4 ~8 mの地温は2年間にわたり0°Cを上回っていた(<4 °C).MASTの年々変化が年平均気温の変化に従うとすると,標高4200 ~4300 mにある沖積低地で過去半世紀以内に,永久凍土が急激に縮小したと考えられる.数値シミュレーションからも,薄い(<15 m)永久凍土層であればその期間内に急激に縮小しうることが示された.近年の温暖化は,源流域において約3000 km2 に及ぶ沖積低地の永久凍土を縮小させていると推定された.
  • Han Zhantao, Zhang Eryong, Hou Xinwei, Gao Cunrong, Shi Yingchun, Zhao ...
    2009 年 60 巻 1-2 号 p. 59-86
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     黄河流域の主要な平野や盆地は中国の社会・経済開発にとって極めて重要な地域であるので,その地域の地下水の収支と循環を明らかにすることもまた重要である.本研究では,黄河源流域,銀川平野,呼和浩特・包頭平野,太原平野,関中平野および黄河下流域を地下水の収支と循環に関する研究対象地域として選定し,地下水の水素・酸素の安定同位体比,水質などの特徴を明らかにする.また,地下水の流動系や水収支について考察する.
  • 内田 洋平, 石井 武政, 田口 雄作
    2009 年 60 巻 1-2 号 p. 87-104
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     一般水質と安定同位体比から黄河上流域における地下水の起源と中・下流域の地下水流動系について考察した.現地調査は,2002年から2005年にかけて行い,黄河全領域に分布する観測井,揚水井,河川および湧水から水試料を採取し,一般水質および酸素・水素安定同位体比を分析した.その結果,以下の知見が得られた.1)黄河上流域における地下水は,モンスーンと偏西風の両者の影響を受けている.2)中流域と下流域における2,000 m深の地下水は,その滞留時間が非常に長く,ほぼ停滞状態にある.
  • 玉生 志郎, 村岡 洋文, 石井 武政
    2009 年 60 巻 1-2 号 p. 105-115
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     華北平野の地下水は過去数十年にわたり顕著な水位低下を起こしている.その原因は農地への大量の灌漑と都市部での多量の地下水汲み上げである.本報告では,帯水層の観点から地下水位低下を解釈するために,地下水位モニタリング記録と第四系岩相との比較対照を行った.この結果,地下水が豊富に含まれる箇所は,砂礫層がレンズ状に発達している地域に限定されることが判明した.一方,深層地下水の年代が10,000年以上古いと測定されている事から,地下水資源は化石資源と考えざるを得ないことが判明している.従って,現在と同じ速度で地下水の過剰生産を継続すると,地下水の消滅や顕著な水位低下による地盤沈下,水質悪化などの問題が生ずる.この問題を回避するためには,灌漑用水の効率的な使用と工業用水・家庭用水の浄化による再利用が不可欠である.
  • 村岡 洋文, 森 康二, 玉生 志郎, 石井 武政, 内田 洋平
    2009 年 60 巻 1-2 号 p. 117-130
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     黄河流域の全集水域における長期的地下水流動をシミュレートする目的で,水理地質学的モデルを構築した.このモデルは脆性-塑性境界によって定義される不透水性基盤,上部地殻の浸透率の深度依存性の定式化,主要断層分布,および第四系の等層厚線図を含む.黄河流域は次の5つの階段状標高分布域に特徴づけられる.すなわち,チベット高原,チベット高原北東斜面,オルドス高原北西部,オルドス高原南東斜面,および華北盆地である.その構造はテクトニクス,とくに剛体的なオルドスマイクロプレートのテクトニクスに支配されている.適切な浸透率と局地的な地下水消費を仮定すれば,シミュレーションの結果は1960年代以降の地下水位の劇的な低下の記録とよく対応し,過剰な地下水消費がこの低下の主要な要因であることを示している.このモデルは黄河流域における地下水の将来の枯渇を予測することに使えるだろう.
  • 森 康二 , 多田 和広, 西岡 哲
    2009 年 60 巻 1-2 号 p. 131-146
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
     黄河源流から河口に及ぶ2,200 km×1,100 km(約160万 km2)の領域について,地下水資源量評価のための三次元地下水循環モデルを構築した.構築モデルによる過去20年間の流況再現シミュレーションの結果は,多数の水位観測データや既存の文献データなどとの比較を通じて検証された.地下水資源量評価のための将来20年の流況予測は,中国側より提示された2010年及び2020年の水需要予測値をベースに幾つかのシナリオに対して実施した.
     その結果,河北省の被圧水位低下によって引き起こされる地盤沈下量は最大4.0 mに達すると推定された.1980年当時の被圧地下水状態へ回復させ,地盤沈下の進行を抑制することを考えた場合,直ちに揚水規制を行ったとして年間10.5億 m3,現状を放置し20年後になると年間21.4億 m3 以上の地下水資源を他の代替水源に頼らなければならない事態が予測される.この量はその年の地下水総利用量に対して,それぞれ6.4%,9.8%に相当するものである.
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