REE含有量が高いと予想される錫花崗岩がスカルン鉱床を形成時にREE成分を濃集する仮定のもとに,タイ南部,ピンヨー鉱山の錫スカルン鉱床の構成鉱物とREE含有量を光学的および化学的に調べた.鉱化関係花崗岩は三畳紀のチタン鉄鉱系黒雲母花崗岩で若干の二次的白雲母を含み,シリカ(75.0 % SiO
2)とカリウム(5.2 % K
2O)に富み,中程度の錫(12 ppm Sn)とREE+Y 含有量(232 ppm)を持つ.REE+Y に富む微量鉱物として,鏡下で褐簾石・モナズ石・ジルコン・アパタイトが観察される.
スカルン鉱石の主構成鉱物は単斜輝石(40~90 vol.%),グロシュラー柘榴石(2~20 vol.%),スティルプノメレン(2~20 vol.%),珪灰鉄鉱(~5 vol.%), 方解石(~10 vol.%),石英(~10 vol.%)である.硫化鉱物成分では,砒素が部分的に多く含まれ(4,490 ppm As),これは恐らく硫砒鉄鉱として含まれている.スカルン鉱石の錫含有量は7,070 ppm 以下で,多数の微細な錫石として認められる.マラヤ石は確認できなかった.スカルン鉱石のREE+Y 含有量は77110903-6 試料で327 ppm,77110309-5 試料で260 ppm とやや高く,これら試料には褐簾石が含まれる.その他のスカルン鉱石のREE+Y は非常に低く,REE+Y 鉱物も確認できなかった.
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