地質構造観察のための6K#1033と6K#1035の2潜航調査が北西太平洋十勝沖の釧路海底谷の側壁で,有人潜水調査船「しんかい6500」を用いて行われた.本論では,その地質構造,断層岩の変形組織と共にそれらの岩石の一軸圧縮強度を詳細に記載する.
6K#1033と6K#1035は,海底谷の中部で調査された.潜航地域の地質構造は,著しく変形した地層帯と非変形の水平層帯に区分される.著しく変形した地層は,正断層,スラスト,液状化と脈状構造によって特徴づけられる.その層の走向は,およそ北東- 南西で,南傾斜である.著しく変形した地層から採取した3試料の一軸圧縮強度の平均値は,1.12-1.30 MPaであった.水平層は,著しく変形した地層を不整合で覆う.その水平層の基底では,>1 m厚の円礫層が観察された.水平層の一軸圧縮強度は測定できなかったが,6K#1032 潜航(海底谷上流部にあたり,同様の水平層が露出している)によって非変形な地層から採取した2試料の一軸圧縮強度の平均値は,それぞれ0.46 MPaと0.58 MPaであった.これらの観察結果に基づくと,変形の停止が礫岩層の堆積に一致していると言える.
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