地質調査研究報告
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64 巻, 1-2 号
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論文
  • 石原 舜三, 星野 美保子
    2013 年 64 巻 1-2 号 p. 1-24
    発行日: 2013/04/22
    公開日: 2013/05/29
    ジャーナル フリー
     西南日本外帯の足摺岬火成岩体は露出面積12 km2 の小岩体であるが,その南部は斑レイ岩および狭義の閃長岩・石英閃長岩から閃長花崗岩に至る幅広いアルカリ花崗岩類,その北部は四万十帯に接する石英に富む黒雲母モンゾ花崗岩で構成される複合岩体である.化学分析値をハーカー図上で検討すると,黒雲母モンゾ花崗岩の3 個を除きA/CNK<1.0,即ちメタアルミナスの領域に,またK2O-SiO2 図上ではショショナイト-高カリウム系列上にプロットされる.Na2O やRb にも富んでいる.ガリウム量は斑れい岩を除き18 ppm Ga 以上と多く,A タイプ的な傾向を持つ.足摺岬花崗岩類の最大の特徴はHFSE (high-field strength elements)に富むことにある.Zrは最大で1,220 ppm含まれ,Hf (<25.6 ppm),Nb (<202 ppm),Ta (<14 ppm),LREE (<1,002 ppm), HREE (<50.5 ppm),Y (<74 ppm),Th (<74.2 ppm)にも富んでいる.またフッ素(<0.43 wt.% F) が多く含まれる.
     これらの微量成分は多数の副成分鉱物に含まれるが,一般的な鉱物はジルコン,チタン鉄鉱,褐廉石,チタン石などである.ジルコンはもっとも普遍的にみられ,まれに肉眼で識別できることもある.ジルコニウムの最大含有量を持つ58A142 試料中のジルコンは,2.4 wt.% 以下のHfO2,1.0 wt.% 以下のY2O3 を含む.58A142 試料のチタン鉄鉱は4.3-5.7 wt.% MnO を含むが,その他の石英閃長岩のチタン鉄鉱は低い値(1.7-1.8 wt.% MnO) を持つにすぎない.チタン鉄鉱中のニオブは3.8 wt.% Nb2O5 以下であり,チタン鉄鉱の縁に濃集するので,マグマ期最末期に熱水から添加されたものと考えられる.褐廉石は他形結晶として見られ,磁鉄鉱系花崗岩類に特徴的なマンガンに乏しい特徴 (0.44 wt.% MnO) を持つ.また,褐廉石は軽希土類元素に富み,24.6-25.8 wt.% LREE の範囲で比較的一定であるが,トリウム (0.05-3.7 wt.% ThO2) は変化に富む.
     足摺岬岩体の斑れい岩は最も苦鉄質な岩相で47.0 wt.% SiO2,12.5 wt.% MgO であり,上部マントルにその起源をもつものと思われる.閃長岩類は55-60 wt.% SiO2 で低いSr 初生値 (0.7035) を持つことから,大陸地殻下部の苦鉄質岩を出発物質としているが,マグマの発生量が小規模であった為に,結果的にアルカリやHFSE に富んだと考えられる.北部の黒雲母花崗岩はこのマグマが四万十層群の堆積岩類を深所で同化して生成したと考えられる.足摺岬岩体の石英閃長岩類と関連岩脈類は異常なZr, REE, Y を含むので,関連する熱水性鉱床を発見することは,REE 含有鉱床探査上のために重要である.
  • 中野 聰志, 大橋 義也, 石原 舜三, 河野 俊夫
    2013 年 64 巻 1-2 号 p. 25-49
    発行日: 2013/04/22
    公開日: 2013/05/29
    ジャーナル フリー
     琵琶湖周辺の優白質花崗岩体中には珍しい細粒暗色包有岩 (MME) の産出を,琵琶湖南方の田上花崗岩体を構成する中−粗粒黒雲母花崗岩と中粒斑状黒雲母花崗岩中で確認した.それらの大きさは1 cm程度から最大20 cm強であり,形はほぼ球状から楕円状であるがやや細長いものもある.有色鉱物として黒雲母のみ含む (最大約27 %).本地域のMMEは,アプライト・ペグマタイトとしばしば共存している.中粒斑状黒雲母花崗岩中のMME について,全岩化学分析 (主成分元素,REEを含む微量元素) を行うとともに,鉱物集合状態と鉱物組織の観察ならびに鉱物化学組成 (長石類,黒雲母,イルメナイト) の解析を行った.これらの結果は,産状や組織等のデータとともに,本MMEがよく知られているマグマ混合による産物であるとの考えではなくて,中粒斑状黒雲母花崗岩マグマからの早期晶出による産物であるとの考えにより整合的であるように思われる.MMEとアプライト・ペグマタイトとの共存は,MMEの成因における揮発性成分の重要な役割を示唆する.
  • 石原 舜三, XUAN Pham Tich
    2013 年 64 巻 1-2 号 p. 51-57
    発行日: 2013/04/22
    公開日: 2013/05/29
    ジャーナル フリー
     ベトナム最北部のMau Due 鉱床はデボン紀の不純なドロマイト質頁岩中の裂罅充填性の輝安鉱鉱床である.その地化学的な研究によると,その鉱化成分は主としてS 及びSb からなり,若干のAs・ベースメタル成分を伴う.土壌中のSb 含有量は変化が激しく,これは鉱石成分の混在によるものと考えられる.雨季 (5−9 月) と乾季 (10−4 月) に分けられた採取試料の分析結果,土壌のSb 平均含有量は雨季932 ppm,乾季342 ppm であって雨季で高く,一方河川堆積物では,雨季2,563 ppm ,乾季2,504 ppm であり,両者で著しく増加する.As はSb と同様な挙動をとり,その含有量は雨季/乾季の土壌において29/26 ppm と,絶対量が少ない.河川堆積物では68-67 ppm に増加するが,この事実はSb,As が微細な硫化物として存在することを示唆している.日本の地向斜帯の堆積岩と比べてベトナムの堆積岩類は,微量成分としてのSb に富んでいる可能性がある.
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