和歌山県北西部は西南日本外帯に位置し,変成度,地質時代及び岩相の特徴により,北から南へ三波川帯 (三波川帯プロパーと御荷鉾帯),秩父累帯及び四万十累帯に区分される.三波川帯プロパーは点紋帯と無点紋帯,御荷鉾帯は嵯峨層,沼田層,及び生石層に区分される.
今回,御荷鉾帯に属する生石層,沼田層及び嵯峨層から採取した23試料について,変成白雲母を使ってK‒Ar 年代を測定した.内訳は生石層14試料,沼田層6試料,嵯峨層3試料である.生石層の1試料が緑色片岩であり,その他はすべて泥質片岩である.
生石層の試料からは81.7‒98.2 Ma,沼田層からは96.7‒117.0 Ma,及び嵯峨層からは113‒118 Maの範囲のK‒Ar年代を得た.栗本 (1995) の結果を加味すると,沼田層は96.7‒125.1 Maになる.白雲母についてのK‒Ar 系の閉止温度からみて,これらのK‒Ar年代は変成作用の年代を示していると考えられる.
本地域の御荷鉾帯から得られたK‒Ar年代については,生石層と御荷鉾帯に所属すると考えられる毛原層 (89.3 Ma‒97.1 Ma;栗本,1993) を比較すると,生石層がやや広いK‒Ar年代幅を有するが,K‒Ar年代の範囲は重なる.一方,沼田層と嵯峨層のいずれの地層も生石層・毛原層と比較して優位に古いK‒Ar年代を示す.
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