地質調査研究報告
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66 巻 , 3-4 号
地質調査研究報告
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論文
  • 栗本 史雄, 木村 克己, 竹内 誠
    2015 年 66 巻 3-4 号 p. 41-79
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
    紀伊半島西部において,三波川帯,秩父帯及び四万十帯は東西に延びた帯状配列を示すが,紀伊半島中央部において秩父帯の地質体が欠如し,三波川帯と四万十帯の地質体が有田川構造線を介して接する.秩父帯の地質体が欠如する紀伊半島中央北西部の高野山地域には,四万十帯の上部白亜系花園層と南に隣接して湯川層及び美山層が分布する. 花園層は,北は有田川構造線を介し三波川変成岩類と,南は梁瀬(やなせ)断層を介して湯川層湯川スラストを介して美山層と接する.同層は岩相及び地質構造からみて,Hn1, Hn2, Hn3, Hn4, Hn5の5ユニットに区分される. Hn1ユニットは最も北に分布し,変形による面構造の発達が認められる.一方,南側のHn2~Hn5ユニット(花園層主部と呼ぶ)は,Hn1ユニットと比較して面構造の発達が弱い.Hn1ユニットと花困層主部は東北東~西南西性の神谷(かみや)断層で画される. 花園層は頁岩を主体とし,砂岩,砂岩頁岩互層,珪長質凝灰岩,チャート,赤色頁岩,石灰岩,玄武岩及び混在岩を伴う.頁岩を基質とし,砂岩,チャート,玄武岩などの岩塊を含む混在岩が特徴的である.また,複数のユニットが衝上断層による覆瓦構造を示し,基質の頁岩はチャートよりも若い時代の放散虫化石を産出する.湯川層は,岩相の特徴により構造的上位からYk1, Yk2, Yk3の3ユニットに区分され北側の花園層とは梁瀬断層で画される美山層はMy1, My2, My3, My4の4ユニットに区分されるが,本地域で、はMy1ユニットの北縁部が分布し,北側の湯川層とは湯川スラストによって画される. 花園層,湯川層及び美山層から得られた放散虫化石を 検討し,群集I: Holocryptocanium barbui群集,群集II: Dictyomitra formosa群集,群集III: Dictyomitra koslovae群集,群集IV: Amphipyndax tylotus群集の4群集を識別した既報告等との比較から,群集Iは後期アルビアン期 ~セノマニアン期,群集IIはチユーロニアン期~コニア シアン期,群集IIIはサントニアン期~前期カンパニアン期,群集IVは後期カンパニアン期を指示すると考えられる. 花園層は岩相や覆瓦構造などの特徴から付加体であり,放散虫化石に基づいてHnlユニットはチユーロニアン期~コニアシアン期,花園層主部のHn2ユニットはチユーロニアン期~後期カンパニアン期,Hn3~Hn4ユニットはチユーロニアン期~最末期カンパニアン期,Hn5ユニットは後期アルビアン期~最末期カンパニアン期に形成されたと考えられる.湯川層及び美山層から産出した放散虫化石が示す地質時代は従来の報告と矛盾しない.
  • 太田 充恒, 今井 登, 寺島 滋, 立花 好子, 池原 研, 片山 肇
    2015 年 66 巻 3-4 号 p. 81-101
    発行日: 2015/07/24
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
    全国陸域地球化学図に続く海域地球化学図プロジェクトにおいて, 日本海西部海域から460個の海洋堆積物が採取され, 53元素の分析がなされている. これら海洋堆積物の粒径や化学組成は堆積環境ごと(陸棚, 縁辺台地, 斜面, 海盆など)で大きく異なる. まず陸棚上砂質堆積物の特徴として, 主たる起源物質と考えられる(隣接地域の)河川堆積物の化学的特徴を反映していないことが挙げられる. 陸棚の堆積物の多くは, 鉄水酸化物で覆われた石英を多く含みかつヒ素に著しく富む特徴を有する. この特徴から, 陸棚試料の多くは海退期−海進期に形成された残留堆積物が主で, 現世の河川堆積物の寄与が小さいと考えられる. 縁辺台地の堆積物の特徴として, 現世のシルト質堆積物で広く覆われていることが挙げられる. これは, 対馬海流(表層水)と日本海固有水(深層水)の境界が縁辺台地上(水深200–500 m)に位置しており, 細粒なシルト質堆積物がこの水塊境界部で選択的に沈殿しているためである. 西部縁辺台地のシルト質堆積物は, ニオブ, 希土類元素, タンタル,ト リウムなどに富んでおり, 恐らく第四紀のアルカリ火山岩の削剥物の供給があったことを意味している. これらの堆積物は海流の影響を受けて200 kmほど東方へ運ばれていることが明らかとなった. 一方, 縁辺台地東方部においては, シルト質堆積物は銅, 亜鉛, 水銀などに富む特徴を有し, 恐らく堆積物中の残留生物源物質の影響(有機物と結合して存在している)を見ていると考えられる. 粘土質堆積物は隠岐トラフや海盆域に広く分布し, 日本海固有水の影響を受けて, 半遠洋性の非常に酸化的な環境下にある. 堆積物表層部(0–4 cm)には, 初期続成作用に伴う薄いマンガン酸化物層が認められ, バナジウム, コバルト, ニッケル, モリブデン, アンチモン, 鉛を多く含む. このように, 本調査海域の海洋堆積物の化学組成は, 堆積環境に強く影響を受けていることが明らかとなった.
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