地質調査研究報告
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68 巻 , 2 号
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巻頭言
  • 内野 隆之
    2017 年 68 巻 2 号 p. 23-24
    発行日: 2017/04/05
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    地質調査総合センターでは,志摩半島の東部域を区画とした5万分の1地質図幅「鳥羽」(以降,鳥羽図幅と呼ぶ)を作成中であり,現在,印刷に向けての作業を進めているところである.鳥羽図幅は三波川帯,秩父累帯(秩父帯北帯,秩父帯中帯(あるいは黒瀬川帯),秩父帯南帯),四万十帯の3帯にまたがっており(第1図),中古生界(基盤岩)を対象とした学術的観点からは,中古生代島弧–海溝系テクトニクスの解明に資するデータを提供できることや西南日本外帯における地質基準の確立に貢献できることが期待されている.また,本地域周辺では,5万分の1地質図幅を含め,詳細な地質図の整備が進んでおらず,防災的観点からも,東南海地震に備えた国・地方自治体による防災計画や都市計画などの基礎資料として, 利活用されることが期待されている. この鳥羽図幅の調査・研究の過程で,中古生界から堆積年代を決定する微化石や砕屑性ジルコンが見出された.本特集号では,その成果の一部について報告する.掲載された論文(概報)は,秩父累帯南帯の付加体及び整然層から得られた放散虫化石の年代(内野・石田,2017),秩父累帯北帯の砂岩及び三波川帯の砂質片岩から得られた砕屑性ジルコンのU–Pb年代(内野,2017),四万十帯の付加体から得られた放散虫化石の年代(Nakae and Kurihara,2017)を内容とした3本である.以下にその概要について紹介する. つい地じ 内野・石田論文は,秩父累帯南帯の築地層群(付加体)と今浦層群(浅海層)から放散虫化石を見出し,前者は中期ジュラ紀後半の年代を,後者は中期ジュラ紀後半,後期ジュラ紀前半,後期ジュラ紀後半の3つの年代を示すことを明らかにした.既存研究では泥岩から得られた微化石の標本がほとんど図示されていなかったこともあり,本論文では既存研究の結果を検証できただけでなく,堆積年代に対し制約を与えることができた点で意義がある.また,今浦層群について,浅海層にも関わらずかなり遅い堆積速度を示し得ることに対し,今後その妥当性を評価する必要があるとしている. 内野論文は,秩父累帯北帯の逢坂峠コンプレックスと河内コンプレックス,及び三波川帯の宮川層に産する砂岩または砂質片岩の砕屑性ジルコンのU–Pb年代(最若粒子集団の加重平均値)を報告した.逢坂峠コンプレックスと河内コンプレックスから得られたジルコンはそれぞれ,204 Ma(三畳紀末~ジュラ紀初頭),183 Ma(前期ジュラ紀中頃~後半)を示す.一方,宮川層には177 Ma(前期ジュラ紀後半)と95 Ma(後期白亜紀前半)といった異なる最若年代を示す試料が認められた.逢坂峠・河内コンプレックスは,標本化石写真のない学会講演要旨(都築・八尾,2006)を基に,それぞれ前期ジュラ紀,中期ジュラ紀に形成されたと考えられていたが,今回のジルコン年代値によってそれらの化石年代が妥当であることが明らかにされた.宮川層から得られた95 Maの年代については,近隣地域で得られたフェンジャイトK–Ar年代の既存研究結果(99–83 Ma:Tomiyoshi and Takasu, 2010)と調和的であることが判明した.しかし,177 Maを示す試料におけるデータの妥当性に関しては,更なる検討が望まれている. Nakae and Kurihara 論文は,四万十帯の的矢層群から 放散虫化石を見出し,的矢層群が後期白亜紀の前期コニアシアン期,前期カンパニアン期ないし中期サントニアン期~中期カンパニアン期,中期~後期カンパニアン期の3つの年代を示すことを明らかにした.これまで本地域から年代決定に至る標本写真を示した放散虫化石は報告されていなかったが,本論文で初めて詳細な化石データを図示したことは意義がある.また,本論文は的矢層群が化石年代からも細分できる可能性を示し,鳥羽図幅における的矢層群の層序区分に貢献している. なお,これまで黒瀬川帯の下部白亜系とされていた浅海層の一部から後期ペルム紀放散虫化石が見出され,志摩半島に後期ペルム紀の整然層が分布することが,内野・鈴木(2016)によって明らかにされている.また,秩父累帯北帯の南部ユニットである白木層群からも放散虫化石が初めて見出されており(内野・鈴木,未公表),本地域における年代データが蓄積しつつある. このように,地質図幅の作成過程で得られた年代などの基礎データを,「地質調査研究報告」であらかじめ報告・議論することは,地質図幅では記述しきれない詳細かつ大量の生データやそのデータがもたらす意義などを示せる点で極めて有効である.

概報
  • 内野 隆之, 石田 直人
    2017 年 68 巻 2 号 p. 25-39
    発行日: 2017/04/05
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    三重県志摩半島の秩父累帯南帯には,中期~後期ジュラ紀付加体からなる築地層群と中期ジュラ紀~前期白亜紀浅海層からなる今浦層群が分布する.5万分の1地質図幅「鳥羽」を作成する過程で,両層群の泥岩から中期及び後期ジュラ紀の放散虫化石を見出し,多くの化石種を基に,より精度の高い堆積年代を示すことができた.築地層群の泥岩はカロビアン期前半~中頃を,そして今浦層群の泥岩はバトニアン期中頃~カロビアン期後半,カロビアン期後半~オックスフォーディアン期中頃,チトニアン期前半という3つの時代を示すことが明らかになった.これらの時代はこれまで報告されていた年代データの範囲に収まる.

  • 内野 隆之
    2017 年 68 巻 2 号 p. 41-56
    発行日: 2017/04/05
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    地質調査総合センターでは現在,5万分の1地質図幅「鳥羽」の作成を行っている.その研究過程で,志摩半島に分布する秩父累帯北帯及び三波川帯の付加体の付加年代を決定することを目的に,砂岩及び砂質片岩中の砕屑性ジルコンのU–Pb年代を測定した. 秩父累帯北帯逢坂峠コンプレックスの砂岩中ジルコンの最若粒子集団は204.4±4.0 Ma(三畳紀末~ジュラ紀初頭)を示し,また同帯河内コンプレックスの砂岩中のジルコンの最若粒子集団は183.4±2.9 Ma(前期ジュラ紀中頃~前期ジュラ紀後半)を示すことが明らかになった.これらは放散虫化石から想定されている陸源性砕屑岩の時代(付加年代)と矛盾しない.また,三波川帯宮川層の砂質片岩中のジルコンの最若粒子集団は177.1±1.6 Ma と95.5±2.5 Ma(後期白亜紀前半)を示すことが判明した.後者は,伊勢地域(図幅西隣)から得られている99–83 MaのフェンジャイトK–Ar年代(変成・冷却年代)と調和的である.しかし,前者は後者よりも有意に古い年代を示す結果となった.前者の妥当性を検証するため,今後更なる砕屑性ジルコンU–Pb年代やフェンジャイトK–Ar年代などのデータ追加が必要である.

  • 中江 訓, 栗原 敏之
    2017 年 68 巻 2 号 p. 57-86
    発行日: 2017/04/05
    公開日: 2017/04/12
    ジャーナル フリー

    紀伊半島東部に位置する鳥羽地域における野外地質調査と放散虫化石に基づく時代決定により,的矢層群の泥岩がコニアシアン期–カンパニアン期を示すことが明らかにされた.この層群は四万十帯(北帯)に属し,古アジア大陸下にクラプレートが沈み込むプレート境界に沿って形成されたものである.放散虫化石を産する51地点のうち7地点の露頭から比較的保存の良い放散虫化石群集が得られ,これらは3つの地質時代(前期コニアシアン期,前期カンパニアン期ないし中期サントニアン期–中期カンパニアン期,中期–後期カンパニアン期)に分類される.このことは,的矢層群がさらに細分できる可能性があることを示している.

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