地質調査研究報告
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68 巻 , 3 号
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論文
  • 太田 充恒, 今井 登, 立花 好子, 池原 研, 片山 肇, 中嶋 健
    2017 年 68 巻 3 号 p. 87-110
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

    著者らは東北地方の陸海域包括地球化学図を作成し,海域の堆積環境が広域元素濃度分布にどのような影響を与えるかについて調べた.日本海の堆積物はカリウム,バリウム,希土類元素など珪長質火成岩に多く含まれる元素に富み,特に海底地形の高まりで採取された堆積物に著しく濃集する傾向が認められた.この堆積物は,デイサイト質火山灰やバライト団塊などを伴う新第三紀堆積岩の削剥生成物と考えられる.深海盆に分布するシルトや粘土は,マンガン,カドミウム,鉛などに富んでおり,初期続成作用がこれらの元素の濃集の原因と考えられる.大陸棚のシルト質堆積物は大規模河川から供給されたにもかかわらず,その化学組成は隣接する陸域物質の影響よりは,粒径効果の影響が強く現れていた.太平洋側に広く分布する砂質堆積物は主に,波浪限界深度よりも深い海域で採取された.これらの化学組成は均質であり,苦鉄質火山岩の影響を受けた河川堆積物の化学組成と類似していた.この結果から,これらの堆積物は第四紀の苦鉄質火山活動の影響下で形成された残存堆積物であり,陸棚から深海へ重力流によって移動していったと考えられる.陸域の土砂生産量の内,81%は日本海側へ供給されるが,必ずしも陸と海との間で元素濃度の空間分布に連続性が認められる訳ではない.同様の結果は太平洋側にも認められる.例外的に,釜石沖の粗粒砂は,隣接する陸域に露出する付加帯堆積岩や花崗岩に多く含まれる元素に富む特徴を示す.この地域の河川は皆小規模であることから土砂生産量は少ないことを考慮すると,これらの粗粒砂は海進・海退期に母岩の海岸浸食・削剥などによって形成されたと考えられる.

  • 清水 徹
    2017 年 68 巻 3 号 p. 111-117
    発行日: 2017/06/05
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

    菱刈浅熱水性金銀鉱床の輝安鉱産状の特徴と硫黄の起源を理解するため,輝安鉱の産状と硫黄同位体比(δ34S)を精査した.輝安鉱は角柱状または針状結晶を示して石英晶洞中に放射状の塊をなしており,輝安鉱が一連の鉱化作用最末期に形成したことを意味する. 輝安鉱試料は,ボナンザ(金に富む)ゾーン内の複数鉱脈の40若しくは10 ML(坑内深度レベル)にて採取した.輝安鉱の硫黄同位体比は,狭い範囲:-0.2から +0.7‰(測定数: 7)を示し,輝安鉱の硫黄同位体比は過去のδ34S値:+0.4 から +0.6‰(銀黒),及び-1.1 から +1.8‰(脈内の黄鉄鉱,及び四万十層群からなる熱水変質母岩)に類似している. 輝安鉱の鉱化作用がボナンザゾーン内に見られることは,同一深度で輝安鉱の鉱化作用が金銀鉱化作用に重複していたことを意味する.輝安鉱が一般的に浅熱水環境の縁辺部,例えば金銀鉱脈鉱床の地表に近い上部に形成することを考慮すると,菱刈鉱床では深部(40及び10 ML)で輝安鉱と金銀鉱物が重複形成したことは,鉱化作用としては特異な環境であったかもしれない.狭い範囲を示す輝安鉱のδ34S値から,輝安鉱硫黄の起源は空間的に均質であったと考えられる.輝安鉱と銀黒の間のδ34S値の類似性は,鉱脈形成時,硫化物硫黄の起源は時間的にも均質であったことを意味するかもしれない.また,輝安鉱と他の全ての硫化鉱物のδ34S値の類似性から,輝安鉱硫黄の起源は,従来研究における他の硫化鉱物の起源に関する考察と同様に,マグマが主体であったと思われる.

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