地質調査研究報告
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最新号
特集:足尾山地南西部,「桐生及足利」地域の地質と化石
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巻頭言
論文
  • 伊藤 剛
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 72 巻 4 号 p. 201-285
    発行日: 2021/10/13
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    足尾山地には足尾帯に属するジュラ紀付加体が分布する.5万分の1地質図幅「桐生及足利」の調査結果及び周辺地域の先行研究に基づき,足尾帯ジュラ紀付加体の岩相・層序・化石年代・地質構造を総括する.足尾山地のジュラ紀付加体は,黒保根– 桐生コンプレックス・大間々コンプレックス・葛生コンプレックス・行道山コンプレックス(新称)の4つのコンプレックスに区分される.黒保根– 桐生コンプレックスは破断相から整然相を示し,泥岩とチャートを主体とし,珪質粘土岩を含む.また,玄武岩類・炭酸塩岩類・珪質泥岩・砂岩・泥質混在岩を伴う.泥岩に劈開が発達することで特徴づけられる.本コンプレックスは上部と下部に区分される.大間々コンプレックスは破断相から混在相を示し,玄武岩類・チャート・泥岩を主体とし,炭酸塩岩類・珪質泥岩・砂岩・泥質混在岩を伴う.本コンプレックスは上部と下部に区分され,泥質混在岩は上部で卓越する.葛生コンプレックスはユニット1・ユニット2・ユニット3に区分され,ユニット1及びユニット3はチャート・珪質泥岩・泥岩・砂岩泥岩互層・砂岩が順に累重するチャート– 砕屑岩シーケンスの整然相を主体とする.ユニット2は,玄武岩類と炭酸塩岩類からなり,礫岩・珪質泥岩・泥岩を伴う.行道山コンプレックスは混在相を示し,泥質混在岩及びチャートを主体として,珪質泥岩・泥岩・砂岩を伴う.コンプレックス境界として3条の断層を認めた:桐生川断層(黒保根– 桐生コンプレックスと大間々コンプレックスの境界)・閑馬断層(新称:黒保根– 桐生コンプレックスと葛生コンプレックスの境界)・大岩断層(新称:葛生コンプレックスと行道山コンプレックスの境界).地質構造としては,北東– 南西に伸びる軸跡を持つ複数の褶曲(梅田向斜・飛駒背斜・葛生向斜など)によって特徴づけられる.泥岩の放散虫年代に基づくそれぞれのコンプレックスの付加年代については,大間々コンプレックス及び行道山コンプレックスが中期ジュラ紀の中期以降,黒保根– 桐生コンプレックス及び葛生コンプレックスのユニット2が中期ジュラ紀の後期以降,葛生コンプレックスのユニット1及びユニット3が後期ジュラ紀の前期以降である.美濃帯ジュラ紀付加体の地質体と比較すると,黒保根– 桐生コンプレックスは那比コンプレックスや島々コンプレックスに対比可能である.大間々コンプレックスと葛生コンプレックスは,それぞれ舟伏山コンプレックス・白骨コンプレックスと上麻生コンプレックス・沢渡コンプレックスに対比できる.行道山コンプレックスについては,ペルム系チャートを含む点などでは久瀬コンプレックスと類似する.しかし久瀬コンプレックスが玄武岩類や炭酸塩岩類を含むのに対し,行道山コンプレックスはこれらを欠く.

概報
  • 伊藤 剛
    原稿種別: 概報
    2021 年 72 巻 4 号 p. 287-324
    発行日: 2021/10/13
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    足尾山地には足尾帯ジュラ紀付加体が分布する.このジュラ紀付加体は,黒保根–桐生コンプレックス・大間々コンプレックス・葛生コンプレックス・行道山コンプレックスの4コンプレックスからなる.本論では,5万分の1地質図幅「桐生及足利」地域の足尾帯ジュラ紀付加体の42試料から新たに産出した放散虫について報告する.ペルム紀放散虫は,行道山コンプレックスのチャート9試料から産出した.三畳紀放散虫は,葛生コンプレックスのチャート4試料から産出した.また,ジュラ紀放散虫は,黒保根– 桐生コンプレックスの珪質泥岩1 試料,葛生コンプレックスのチャート2試料,葛生コンプレックスの珪質泥岩4試料,葛生コンプレックスの泥岩2試料及び行道山コンプレックスの泥岩1 試料から産出した.加えて,足尾山地ジュラ紀付加体におけるこれまでの化石産出とその年代についてとりまとめた.これらを踏まえ,各コンプレックスの海洋プレート層序を復元した.

概報
  • 武藤 俊, 伊藤 剛
    原稿種別: 概報
    2021 年 72 巻 4 号 p. 325-344
    発行日: 2021/10/13
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

     これまで足尾山地からは多くのコノドント化石の産出が報告されているが,多くの研究は古い分類や生層序の知見に基づいている.本研究では,5万分の1地質図幅「桐生及足利」地域内から報告されているコノドント化石を現在の分類と生層序に基づき再検討した.図示されている標本については必要に応じて同定の修正を試み,図示されていないものについては現在の分類体系に基づいて分類群名を読み替えた.また,本研究で独自に得た前期三畳紀のコノドントも併せて報告する.特筆すべきは,石炭紀のコノドントとして報告されていた標本の多くがペルム紀または三畳紀のものであり,石炭紀のものだと断定できる標本が無いことである.その結果,同地域で確認できる最も古い岩石の年代はシスウラリアン世(前期ペルム紀)となり,同地域から報告されている最も古い放散虫の年代とほぼ一致した.

資料・解説
  • 伊藤 剛, 中村 和也, 日野原 達哉, 栗原 敏之
    原稿種別: 資料・解説
    2021 年 72 巻 4 号 p. 345-358
    発行日: 2021/10/13
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

     本論では,足尾山地鳴神山東方に分布する足尾帯ジュラ紀付加体の大間々コンプレックス及び黒保根–桐生コンプレックスから産出した放散虫を報告する.三畳紀放散虫及びコノドント片が大間々コンプレックスのチャートから産出した.中期ジュラ紀のバッジョシアン期及びバトニアン前期の放散虫が大間々コンプレックスと黒保根–桐生コンプレックスの泥岩から得られた.先行研究で両コンプレックスから報告された中では,泥岩に含まれるバッジョシアン期の放散虫が最も若い記録であった.従って,本研究で報告したバトニアン階下部の泥岩は,より若い記録となる.

資料・解説
概報
  • 伊藤 剛, 草野 有紀
    原稿種別: 概報
    2021 年 72 巻 4 号 p. 371-381
    発行日: 2021/10/13
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    足尾山地西部に分布する足尾帯ジュラ紀付加体の大間々コンプレックスは,玄武岩類とチャートを多く含むことにより特徴づけられる.本研究では,この玄武岩類の全岩主要元素及び微量元素組成を検討した.化学分析結果からはEタイプ中央海嶺玄武岩(E-MORB)と海洋島玄武岩(OIB)の2種類の異なる地球化学的特徴を示す玄武岩類が示唆された.これらの玄武岩類は,丹波帯の灰屋コンプレックスあるいは雲ケ畑コンプレックスの玄武岩類と類似した地球化学的特徴を示している.先行研究において,海洋プレート層序の復元に基づいて大間々コンプレックスと丹波帯の灰屋コンプレックスや雲ケ畑コンプレックスが対比されており,玄武岩類の地球化学的特徴もこれらの見解を支持する.一方,足尾帯では,大間々コンプレックスが足尾山地東部の葛生コンプレックスのユニット2に対比される見解を示す先行研究もある.しかし,これまでに報告されている葛生コンプレックスの玄武岩類の特徴はOIBに類似しており,大間々コンプレックスとは異なる特徴を示す.

資料・解説
  • 伊藤 剛, 中村 佳博
    原稿種別: 資料・解説
    2021 年 72 巻 4 号 p. 383-396
    発行日: 2021/10/13
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    栃木県足利市名草には,足利岩体と呼ばれる黒雲母花崗閃緑岩が分布する.本論では,この黒雲母花崗閃緑岩とその周辺のジュラ紀付加体足尾テレーン構成岩類の記載を行う.黒雲母花崗閃緑岩は,等粒状組織を示す.主要構成鉱物は石英,斜長石,カリ長石,黒雲母である.周辺の足尾テレーンの構成岩類である泥岩やチャートは,黒雲母花崗閃緑岩の貫入によって明瞭な接触変成作用を被り変成泥岩や変成チャートとなっている.また,足利岩体から1.5 km以上離れた地点のチャートから,放散虫化石が得られた.1試料からはPseudoristola sp.やArchaeospongoprunum sp.が得られており,その年代は前期ジュラ紀のプリンスバッキアン期~トアルシアン期前期を示す.また,別の1試料からは,主にジュラ紀から白亜紀に産出する放散虫である閉球状ナッセラリアが得られた.炭質物を多く含む泥質岩を対象に炭質物温度計を利用した変成温度推定を試みたところ,岩体の北縁部と南縁部の2試料からそれぞれ385 °C及び513 °Cの変成温度が得られた.足利岩体の南北で変成温度が大きく異なっており,岩体の貫入角度の違いによる影響が考えられる.また,足利岩体から南西に約1 km離れた試料から291 ± 15 °Cの変成温度が得られたのに対し,足利岩体から北西に1.3 km以上離れた試料からは,より高温の362 ± 16 °Cの変成温度が得られた.地下に伏在する岩体や既に削剥されて現存しない岩体の存在が示唆される.

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