トカラ列島周辺海域から採取した海底表層堆積物90試料について,主成分元素および微量元素24元素を定量した結果を示し,化学組成の特徴や分布特性について検討を行った.本調査海域の海底堆積物は, CaO, Srに富む生物遺骸粒子,T-Fe2O3やMgOなどに富む苦鉄質火山岩類由来の砕屑性粒子,K2Oなどに富む珪長質火山岩類由来の砕屑性粒子の3つの起源物質に由来するものと考えられ,それらの寄与率には地域性がある.各元素濃度間の相関関係から,特に諏訪之瀬島の東方沖(トカラ列島中部海域)では苦鉄質火山岩由来の砕屑性粒子の寄与が大きいことが示唆された.また,Cuを高濃度含む試料がトカラ列島中部海域に認められるが,T-Fe2O3やTiO2濃度は必ずしも高くない.一方で,トカラ列島南部海域のCu高濃度試料はMnO濃度が高いことから,Cu濃集の原因としては初期続成作用の影響が考えられた.
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