目 的
生活習慣病予防のための運動普及のポピュレーションアプローチ事業における,地域の文化に即した展開方法を明らかにする。
方 法
首都近郊3市で,2年度に渡り,生活習慣病予防のポピュレーションアプローチとしての運動普及事業へ参加観察及び,保健師5名と住民45名に聞き取り調査した。分析は,まず年度計画・実施・成果に関する保健師の地域の文化を含む思考・行為と,住民評価に見られる地域の文化を含む思考を,質的帰納的に分析し,各々カテゴリ化した。次に,年度計画・実施・成果に関する保健師の地域の文化を含む思考・行為のカテゴリを,調査初年度・次年度を通して事業計画・実施・評価の展開過程に沿って配置し,各カテゴリのコードの関連から展開方法を読み取った。さらに各カテゴリに含まれる地域の文化を抽出した。
結 果
33カテゴリの関連から読み取った展開方法は,暗黙の了解事に合わせ馴染ませていく運動普及,地元愛へのケアの価値付けと融合,地域の文化的感受性の活用と醸成,住民と行政の共生意識の活用と醸成,安心感に配慮した変容の舵取りと推進,の5つだった。住民評価のカテゴリは,生活全般への健康観の拡大等の10だった。地域の文化は暗黙の了解事等だった。
考 察
地域の文化に即した生活習慣病予防のための運動普及のポピュレーションアプローチでは,地域を文化看護の対象として捉え,地域の暗黙の了解事に合わせて合理性を図りながら,運動普及を契機として地元愛にケアを浸透させ,地域の文化的感受性や住民と行政の共生意識を活用・醸成し,包摂的な文化へと発展を促すことが求められると考える。その過程では安心感に配慮し,文化に謙虚な姿勢で関わることが基盤となると思われる。
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