文化看護学会誌
Online ISSN : 2433-4308
Print ISSN : 1883-8774
5 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 宇野澤 輝美枝
    2013 年 5 巻 1 号 p. 1_1-1_11
    発行日: 2013/03/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,重度身体障害を持ちながら生活している人の体験を,当事者の語りから示し,障害をもつ当事者の地域生活を支える看護への示唆を得ることである。先天性脳性麻痺をもつ1名の女性の語りをライフストーリーの手法を用いて分析した。
     分析の結果,重度身体障害を持ちながら生活する体験として,①周囲の人に守られて,②初めて味わう障害の身のつらさ,③愛する人を助けられない無力感,④社会参加への闘い,⑤身体の老いに向き合いながら明日を思う,が析出された。
     「初めて味わう障害の身のつらさ」「愛する人を助けられない無力感」は障害による負の側面を示す体験である一方,「社会参加への闘い」と「身体の老いに向き合いながら明日を思う」という体験は,障害者ゆえの恵みの側面を示す体験であることが示された。
     重度身体障害者の地域生活を支える看護上の示唆として,障害による負の体験を助長するような社会文化的・物理的環境要因を取り除いていくとともに,障害があるゆえにもつ力や恵みの側面に目を向け,対象者の力を引き出すような支援が示唆された。

  • 西田 伸枝, 田所 良之, 谷本 真理子, 正木 治恵
    2013 年 5 巻 1 号 p. 1_12-1_19
    発行日: 2013/03/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,在日コリアン高齢者1世にとって,文化を尊重したデイサービスとはどのような場所であるのか,その意味を明らかにすることである。在日コリアン高齢者の文化を尊重したサービスの提供を目的としているデイサービスに定期的に通う在日コリアン高齢者1世の3名を対象に,のべ31日間デイサービスでの活動を共にしながら,参加観察とインタビューを実施し,Spradleyの9つの意味関係を用いて質的分析を行った。
     在日コリアン高齢者1世における文化を尊重したデイサービスの意味とは,【在日の仲間とここにいる】,【不条理を生き抜いた誇りを確かめ合い,語り継ぐ】,【ネエサン達も一緒になって今ここを楽しむ】であった。それらから『生きてきた証を,今ここにいるみんなと味わい,楽しむ』というテーマが導き出された。朝鮮半島から海峡を渡って日本にやってきて,苦労しながらもここで生きてきたという人生を語り合い,後世に語り継ぎ,よくぞ生き抜いてきたという実感を味わう場所であった。そして,老いた今,同じような歴史をたどってきた在日の仲間,さらにスタッフらと共にこの場を楽しむことであった。
     高齢者にとって,文化を尊重したデイサービスとは,高齢者が人生で身につけてきたつながりを感じているものを共有できる他者がいて,ありのままの自分としてこれまでの道のりや大事にしているものを表出できる場であると示唆された。

  • 櫻井 智穂子, 眞嶋 朋子
    2013 年 5 巻 1 号 p. 1_20-1_27
    発行日: 2013/03/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     【目的】治癒が不可能であり余命が6ヶ月以内であると診断された終末期がん患者の家族が緩和を目的とした療養方法への移行を決断した後の,決断への翻意や撤回に強く影響する家族の意思の“ゆれ”を明らかにし,文化的な影響要因について考察する。尚,“ゆれ”とは,終末期のがん患者と家族が緩和を目的とした療養への移行を決断し実行する過程で生じる,不安,迷い,葛藤,混乱,決断したことへの翻意や撤回を表す言動とする。
     【方法】入院中に終末期の緩和を目的とした療養へ移行することを決断したがん患者の家族を対象にした。終末期の症状緩和を目的とした療養およびその療養への移行を決断したことに対する考えや感情、移行の過程での思いや行動の変化と周囲で起きた出来事について,参加観察法と半構造的面接法によってデータ収集し,質的帰納的分析を行った。
     【結果と考察】対象者は6名の家族(男性2名,女性4名)で,年齢は30~70歳代であった。終末期の緩和を目的とした療養へ移行する決断をした後の家族の“ゆれ”のうち,決断に対する翻意や迷いに強く関連していたものは,(1)周囲から提供される情報が患者にベストな療養を提供するための助力となる-情報量の多さとインパクトに圧倒され翻弄される,(2)覚悟を決め介護者として全力を注ぐ-患者の悪化した病状に介護者としての自信が減弱する,(3)患者の希望や心情を理解しようと努める-患者の意思を理解しようと配慮し続けることに困難を感じる,の3カテゴリーであった。家族がもつ文化に基づいた意思決定と介護に対する姿勢が明らかとなり,家族の価値観に配慮した看護師の支援の重要性が示唆された。

資料
  • 藤田 水穂
    2013 年 5 巻 1 号 p. 1_28-1_34
    発行日: 2013/03/30
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル フリー

     本調査は,「慢性疾患予防に資した子どもの健康教育プログラム開発に関する研究」の一環として行ったものである。本研究の最終目標は,慢性疾患予防のために,小学校低学年など早くから実施できる効果的な健康教育プログラムを開発することである。体と健康のしくみに関する正しい知識とライフスキルを身につけることは,健康な成長と人生の基盤になるものと考えられるためである。
     今回,学校教育の実態調査として,日本とフィンランドの小学校教育における人体と健康の学習に関する教科書の内容比較を行った。その結果,フィンランドよりも日本の教育内容は少なく,また教育開始も遅いことが分かった。学校教育や,大学のような教育研究機関,医療機関も,日本とは異なる他国の教育を学び,今後の子どもの健康教育について,その必要性を改めて理解し,積極的に取り組んでいくことが望ましいと考えられる。

随想
特別寄稿
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